出発
機械が故障につき熱地獄
勇者達がエレスタ王国を出発した日。
秋達はというと…
「誠にすみませんでした!こ、これはお詫びの品です」
今、俺の目の前には数人の男女の土下座が横一列に綺麗に並んでおりその人達からお詫びの品と言われ果物なんかを渡された。
「あのな…」
「どうか、お仕置きだけはお許しいただけないでしょうか!」
昨日俺とルサルファを祭りの間、つまりは俺が祭りの途中でルサルファのために用意した特等席に転移するまでずっとつけてた五人。俺にお仕置きをされたくなくてそこまでするか、こいつら…。というかするつもりなかったし。
で、今代表で喋ってるのがフェレサなんだが、
「なんで昨日は宿に帰ってこなかったんだ?」
昨日ルサルファと別れて宿に戻ったら宿には誰もおらず待っててもなかなか帰って来ないため先に寝てしまった。そして今朝、宿の一階に降りてくるとこの五人が土下座をして待機していたわけだ。
「それは…」
フェレサが言葉に詰まる。
「私が答えます」
「ちょっ!」
「いいぞノーメン、教えてくれ」
「はい。昨日は私達が主様を見失ってからフェレサさんとディルさんが冒険者達と酒を飲み始めその後、酔った二人が主様から逃れる為逃走し、今朝まで二人の捜索をしており宿に帰るのが遅れてしまいました」
「報告ご苦労。夜、ノーメン、リサは解散してよし、フェレサとディルは残れ」
「御寛大な処置感謝いたします」
「それではこれで失礼いたします」
「フェレサ、ディル、さようなら」
そうして三人を解放し残ったのはこの二人。
「さて、せっかくだ、二人にはお仕置きの種類を選ばせてあげよう。途中放棄や逃走はより厳しいお仕置きとなるから覚悟しておくように」
「「い、嫌だあああああぁーーーーーー!!」」
宿に二人の悲痛な叫び声が木霊した…。
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先程のおふざけを終わらした俺達は今はルサルファの屋敷に向かっている。昨日の祭りの時、伝えたい事があるから明日もう一度全員で屋敷に来てくれと言われていたのをついさっき思い出し、向かっているところだ。
「アキハ様、結局二人にはどういったお仕置きを?」
「ん?ああ、魔物の死体の胃袋に数分間入ってもらった。他にも色々あったんだが二人はそれが良かったらしい」
「それはまた…」
「一番マシなのでそれですか…二人が少しかわいそうに思えてきましたよ。まあ私がやる羽目にならなくて良かったんですがね」
リサもなかなかいい性格をしている。
三人が裏切ったおかげで魔物の胃袋に入った二人は未だに後ろで落ち込んでいるがな、あれは臭かっただろうな……。
…で、ルサルファの屋敷についたわけなんだが、いつも通りルサルファの部屋へと案内された。屋敷をうろつく騎士達も最初の時と比べ俺たちに対してはかなり警戒心がなくなった…。
…「再び呼び出して申し訳ないな」
部屋につき先日と同じようにソファへと座った俺たちは早速ルサルファに話を伺っている。
「いや、それはいいんだが今日は何の用だ?」
今回の魔物の襲撃はかなりの大事であり幾つかの不可解な疑問を残して幕を閉じた。だが実質街の被害はゼロといえ、もうすでにこの街は日常を取り戻している。そんな中の呼び出し、内容はなんだろうか?
「今日呼んだのは…冒険者としてのアキハさんに依頼があったからなんだ」
「依頼?」
冒険者として、か。だからギルド長であるリサも呼んだってわけだ。ディルもいるが、ディルは呼んでなかったが勝手についてきた。
「今回のこの騒動についてより詳しく報告書にまとめたものをお父上に届けなければならないんだ。それで明日私の部下に王都へ向かってもらうのだが、それに護衛としてアキハさん達を雇いたいのだ」
護衛依頼か、…まあもともと王都には行くつもりだったし、
「それは別に構わない。しかし依頼をする冒険者が俺たちである理由は?」
「それは、私が冒険者として一番信頼しているのがアキハさんだからだ。それにな、今回のは建前みたいなものが大きくてだな、実際はアキハさんとお父上を合わせる為のようなものだ」
国王に合わせる為?何故だ…。
「大雑把な報告を父上に話したらその報告の中に名前が上がったアキハさんにぜひ会いたいと言われてな、それでなんだが私の父に会いに行ってはくれないだろうか」
うわまじか!きたこれ。こうも都合よくこの大陸の統治者に会えるとは、運が良過ぎるぞ。
それにあっちからの招待とは。
「それは光栄なことだ。ありがたくその依頼引き受けさせていただくよ」
「そうか、良かった。それでだ出発日が予定では明日なんだがアキハさん達はそれで大丈夫だろうか」
「余裕で大丈夫だな。というか今日でも大丈夫だ」
「そ、そうか。なら明日の朝8時に裏門へ来てくれ。こちらも明日出発ということで準備を進めておく」
「そうか、よろしく頼む」
こうして早速俺達の王都行きが決まった。これは本当に都合がいい。さてさて、それならば魔王とはどうやって遊んでやろうかな。
国王と会えるのならば色々と面白い作戦が思いつく、ふふ、楽しみだ…。
◆
用件を済ませた秋達は宿へと戻った。一方ルサルファの屋敷にはリサが話があると一人だけ残った。
「ルサルファ、あなたいつもより身軽な服装をしていますね。いつもはドレスが多かったのに」
「あ、ああ、こっちの方が動きやすいからな!」
「そうですか(照れてる…なるほどこれは、昨日アキハさんに何か言われたんでしょうかね。例えば昨日の服装を褒められて今日はそれに近い服装にしたとか)」
勘が鋭い女、リサである。
「まあそれはいいとしてルサルファ、ガルマリア王がアキハさんに会いたいって…理由は何なんでしょうか?」
「…わからない。私は今回起こった事をありのままにお父上に報告した。…ただまああの人はかなり変わった人だからな、というか変人だ。私が想像つかないことを考えていてもおかしくはないな」
「(…貴女も十分変人の部類に入りますよ、ルサルファ)」
「まあ悪いようにはしないはずだ、何せ娘の命を救ってくれた恩人なのだから。それでももしお父上がアキハさんに何かしたならば私が絶対に許さない」
「一応貴女の親なんですがね…あ、ルサルファ、ちなみに先程言っていた大雑把な報告とはどのような内容で報告したのですか?」
「えっと…報告の中心は大体アキハさんだったかな、どれだけ私が彼に助けられたのかをきっちり報告しておいた」
「そうですか…(これは…ガルマリア王はおそらくルサルファがアキハさんに惚れていることに気づき、娘が惚れた男がどのようなものか見定めるためにアキハさんに会いたいと言ってきたのでは…)」
「どうしたんだ、リサ?」
「いえ。しかしルサルファ、貴女は当然アキハさんがいつまでもこの国にいるとは思っていませんよね」
「っ…それは、確かにそうだけど、急にどうしたんだ?」
「いえ、ルサルファのその気持ちをアキハさんに伝えるならば早めにと思っただけです」
「そ、それは…」
「今回は貴女の部下の護衛が一応アキハさんに対しての依頼として受理されていますからもう一度アキハさんはこの街に戻ってきます。けれどその後はすぐにここを旅立つかもしれません。今アキハさん達は旅をしていると仰っていました。会えるのさえその時が最後になるかもしれないのですから、気持ちの整理と覚悟はしておいたほうがいいですよ」
「…うん、わかっているよ」
「(友達の恋路です、私も陰ながら応援していますよ。頑張ってねルサルファ)」
◆
そして次の日
時間通りに正門へやって来ると何人かの騎士や兵士がおり既に馬車なんかも用意されていた。
ヒヒーン!
「久しぶりだな、馬」
この街にきてからずっと馬車庫に預けていた馬が俺たちを見つけこちらにかけてくる。
俺に駆け寄ると寂しかったのか頰ずりをしてきた。
「またよろしくな」
ヒヒーン
「ありがとな馬車までわざわざこっちに持ってきてくれて」
「いや、アキハさん達が馬車でこの街に来ていたことは知っていたからな、初日に会っているわけだし」
そういえばルサルファとは街に来た初日に会っていたんだったな。
馬に頬ずりをやめさせ馬車の準備を夜達に頼んで俺はルサルファと話を続ける。
「それで、俺達が護衛するのは誰だ?」
「ああ、そうだった。彼らだ」
ルサルファの後ろから三人の男女がでてきた。男、女、女、か。男は格好から騎士とわかるが気が弱そうだ、で女の方は一人は元気発剌と言った感じの少し身軽な格好をした娘でもう一人の方はいかにもっていう感じの女騎士、後ろで1つに纏められた長い金髪に少々つり目で顔は整っている。確実に美人の部類に入るだろう。それだけならば特に言うことはないんだが、…ただ、こいつやけに俺に対して敵意を向けてくる。理由はわからんが、殺意と言っていいものを俺に対して放っている。…なに、俺は顔を見ただけで嫌われちゃったの、僕傷ついちゃう!
「えっと、僕は第三部隊所属、コンクルです。よろしくお願いします」
まずは気弱君が自己紹介をする。
「私もだけど第三部隊所属のキュルムだよ。よろしくね!」
次は元気ちゃん。
「第三部隊、副隊長のスクロワだ。よろしく頼む」
最後はつり目ちゃんだ。
スクロワっていうのか。さっきからずっと俺を睨んできてるんだけどね。
「俺はSランク冒険者のアキハだ。こちらこそよろしく」
「先頭をこの三人が乗る馬車が走るのでアキハさん達はその後ろについていく形でよろしく頼む」
相互の紹介が終わったのを見てルサルファが話し出す。
「わかった」
「それじゃあ三人は馬車に行って出発の準備を整えておいてくれ」
「「「はい!」」」
…「アキハさん、すまないな」
「ん?何がだ」
「先程の、スクロワだ。ずっとアキハさんを睨んでいた。…あいつは冒険者を嫌っていてな、できればアキハさんと触れ合ってそれを治して欲しいと思っていたんだが」
「そうだったのか。まあ俺は気にしてないから別にいいよ、三人とも面白そうだったし仲良くやっていくさ」
「そ、そうか。そう言ってもらえると助かる」
「アキハ様、準備が整いましたのでどうぞ!」
馬車から夜が呼ぶ。
「お、もう出発するみたいだな。それじゃあお別れだ、ルサルファ。次に会うのは護衛依頼を完了してこの街に戻って来た時だ。それまでしっかりとこの街を守ってみせろよ、次期国王!」
俺の作戦によってはこの街ももしかしたらな…。
「っ…ああ!あの約束は絶対に果たしてみせるからな!」
そうして俺たちはルイーナの街を出発した。
…秋達が出発した後の裏門前。
「行ってしまいましたね。…ルサルファはまだ思いを伝えなかったのですね。良かったのですか?次に会えるのは依頼完了の時、それに、その時に伝えなければ彼らとはもうずっと会えなくなるかもしれない」
「いいんだよ…それにこの思いを伝えるのはまだ当分先になりそうなんだ。私は彼と約束した、私は立派な王になると、彼はそれまで私を見守ってくれていると。私のすぐ側に彼がいなくとも見守ってくれていると信じてさえいれば私はきっと頑張れる。だから私は約束を果たすまでこの思いを彼に告げることはできないし、したくない」
「そうですか。…それならそんな泣きそうな顔はしないでください」
「だ、だって好きな人にまだ告白できないと思うとやっぱり悲しいものは悲しいんだも〜ん」
「(とうとうはっきり好きな人と言いましたね)はあ…自分で決めたことでしょうに、仕方ないですね。それじゃあこの後飲みにでも行きますか?まだ朝ですが1日付き合ってあげます。それにそんな顔をしていては次期国王なんて夢物語ですよ」
涙を拭うルサルファ。
「わかっている!…でも今日だけはリサに甘えさせてもらう」
「それじゃあ行きましょうか」
「うん!」
こちらも出発です




