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これから

少し長いです…



笑いが収まった後、二人に指示を出してから俺は夜達のところへ転移した。

二人に出した指示はこの街で今まで通り過ごしていろというものだ。


つまりは今まで通り魔王の指示を受け、それをこなしていろということだな。ただ今までと違うのはその内容を俺に報告するというところだろう。街に送り込まれた魔族は二人を含め人間に化けられるので今までもそうやって身を潜めていたようだ。俺が見ても化けた二人は人間と変わりなくそれは完璧と言っていいものだった。ただその代わり化けている時は魔族の時と比べ戦闘力は落ちてしまうようだが。


それからどうやって国民を洗脳するのか、だったんだが魔王からつい先日洗脳用の魔道具を渡され、それを使えということだ。


それを使い少しづつ反乱分子を増やし、街を占領する、という筋書きだ。

街に潜入した魔族達は定期的に情報交換を行っているので、それも俺に報告するように言っておいた。

そして今聞いたところ他の街では既に反乱分子による組織が小規模ながらも出来上がっているようで街を占領せよ、という命令が下るのも時間の問題らしい。まあすべての街の準備が整ってからだからこの街の準備が整わなければ作戦実行は出来ないが…。


だから俺はすぐに街の反乱分子を増やすように二人に指示した。再び魔王の命令を聞かなければいけない二人はあまりいい顔をしなかったが、俺が「魔王に一泡吹かせてやりたいならその魔王を騙しているんだ、と思って頑張ってやれ」と言ったらすぐに乗り気になってくれた。扱いやすくて助かる。


そしてこういったやり取りを経て俺は夜達の元へ転移したわけなんだが、


「お前らルサルファの屋敷に来てたのか」

俺は今回夜の顔をイメージして転移した。つまり夜が正門から移動していればそこへ行くわけで、どうやら作業を終えて辺境伯邸に来ていたようだ。理由はわからんが。


「アキハ様!?リサから、用事があると言ってどこかに行ってしまったと聞いていたのですが…」


「いや、それはもう終わった」

周囲を見るとルサルファ王女、リサ、夜、ノーメン、フェレサ、ディルがいた、一体何を話していたんだ。


「アキハさん、突然転移してきたので驚きましたよ」

リサが言うがまあ多分リサだけじゃなく全員が少なからず驚いていたと思うが。


「それで、みんなで一体何を話してたんだ?」


「それぞれの作業がひと段落ついたので先程起こった不可解なことについて話してたんだ」

少し疲れた表情をしたルサルファ王女が答えた。

ん?…そう思ったが先程別れた時より表情が明るいような…。


いや、それよりも、

「不可解なことってなんだよ?」


「いや、それがーー」


「アキハさんもその場にいましたので当事者です」


その場にいた?………あ、死者蘇生のことか、じゃあリサはしっかりとあのことを喋ってくれたんだな。


「ああ、あの事な。確かに俺もその場にいた。いや〜あれは凄かったな、あの爺さんは一体何者だったんだろうか」


「そうなんだ、あの場を見ていたのは二人だけ、その二人も詳しく分からないと、まるで情報がないんだ。まあこれで今回の戦いの死者はゼロ、それは本当に良かったのだけど」

そういうルサルファ王女の顔は本当に嬉しそうだ。


「蘇生された人や今回戦った者たちにはこの死者蘇生についてありのままのことを話したがどうやらそれよりも仲間の無事を喜んでいるようであまり話を聞いていなかった。本当にいい奴らばかりだよこの街にいる者達は」


「私もこの街のギルド長で本当に良かったと思います」


そういえば今思ったが、

「二人は仲直りしたのか?なんか仲が良く見えるんだが」


「実はそうなんだ!あの戦場でリサが私を友達といってくれてな!それもずっとだってずっと、本当に嬉しかったんだから」


「まだ友達です。その友達の事になると性格がおかしくなるのを治してくれたら親友に昇格してあげます」


「親友…、わかった!頑張って治すから今の言葉忘れないでくれ、約束だぞ」


「はいはい」


どうやらリサはルサルファ王女との上手い付き合い方を学んだようだな、まあそれは何よりだ。


「というかその脚、どうだったんだ?」

ルサルファ王女の脚は包帯によってグルグル巻きにされている。


「先程見てもらったんだが、やっぱりダメだな。後日切断することを勧められたよ、どうやら潰された時に少し毒をもらったようでその毒が厄介でな、完全に脚は使い物にならなくなってしまったようだ」


「そうか」

俺がルサルファ王女の足が潰されていたのに気づいたのは戦いが終わってからだった。テントで俺と話している時はずっと魔法によって補助を受けていた。


「まあ、いいんだ。これは街を守れた代償だと思うよ。それに魔法で浮いて移動するのもなかなか面白いからね、普段は足をつかった方が速かったからあんまりしなかったけど…」


ルサルファ王女は笑顔だ。ただしこの場にいる全員がわかっているだろう、その笑顔が無理に作っているものだと。まあいきなり足を失えばそれはショックだろうな。まあ同然治しますけど。


…え?いや、当然俺が治してあげるよ。だってその方が絶対俺に対しての信頼度が上がるもん。


「はい、では今回はサービスとして俺が治してあげましょう」


「え?」

ルサルファ王女は何を言っているのか理解できないといった顔をしている。


「だから、俺が治してあげるって」


「いやいやいや、この足はもう治せないって言われたんだ。どんな方法をもってしても無理だって」


「何を言ってるんだか…死者蘇生が行われたこの世の中でなんでその足が絶対に治せないって思えるんだ」


「いや、死者蘇生はおそらく神具と呼ばれる過去の遺物が使われたんだ。ダンジョンで入手したと言われたとリサが言っていたし」


「神具?なんだそれ」


「知らないのか?」


「ああ、聞いたこともないな」


「神具とは過去の遺物であるダンジョンで見つかる強大な力を持った魔道具。それらは様々な種類があるらしくまだダンジョンには数多く眠っていると言われているんだ。ただ公に発表されているダンジョンから入手した神具はたったの2つ、1つはエルフ族が暮らすエンシャント大陸に、そしてもう1つはこのキャッタナ大陸の王都にある。ただこの王都にある神具は強力故にまだ誰も扱えた者がいないんだ」


「へえ、そんなのがあるのか。まあ確かにその神具とやらなら不可能を可能にしてくれそうだな」


「そう、だからこの足ももう無理なんだよ」


「まあいいじゃないか、その神具とやらは持ってないけど試すだけでも試してみろって」


「確かに少しでも治る可能性があるならそれに頼りたいが…」


「じゃあ決まりな。少し痛いかもしれないけど我慢してくれよ、あと見ててもあまり良いもんじゃないから目を瞑ることをお勧めする」


「そ、そうか」

そう言ってルサルファ王女は目を瞑る。


よし、それじゃあやるか。

眼の色を翡翠色に変える。

チクッ


…今少し眼に痛みが走ったか?まあ最近眼の色変え過ぎたしその疲れがでたのかもな。まあ今それはいいとして、俺は包帯が巻かれているルサルファ王女の両脚にそれぞれ手で触れ、アルティメットスキル【万物操作フラワルド】を発動する。


手順はこうだ、まず潰された両脚を視認できないほどの粒子へと霧散させる、それと同時に無事な脚にできた断面をなるべく痛みがないよう塞ぎ、その次は粒子に霧散させた脚に俺の魔力を通し、毒によって死んでいる細胞を復活させる。これには少し多めの魔力が必要だ。そして復活した細胞を再び繋ぎ合わせていき……はい、これで元通りです!


今の工程を俺は眼を閉じて行っている。この能力の便利なところは頭で想像した通りに全て動いてくれるところだ、それも一瞬で。


「さあ、できたぞルサルファ王女。もう眼を開けて大丈夫だ」


そう言われ、ルサルファ王女は恐る恐る眼を開けていく。


「……ん、え…あ、脚が戻ってる!な、なんで、どうやって!?今何も痛みなんて…」


混乱、か、まあ仕方ないな。

「俺の能力だよ。どうだ不備はないか?」


「え、あ、ああ大丈夫なようだ。というより前より脚が軽いような気がするよ」


座っていた身体を起こして飛び跳ねている。脚が軽いか…まあ俺の魔力を流したしその所為かもな。


「どうだったリサ、見てたんだろ。結構衝撃的な絵面だったろう」


さっきやった死者蘇生よりはマシだと思ってリサ達には眼を閉じているよう言わなかったが、全部見ていたようだ。


「うそ…あんな事が出来るなんて…アキハさんはどれほどの力を…それにあの戦闘能力に、あの魔法を………」


どうやら能力の方に驚いているようだ。それに今までの事を思い出して、完全に自分の世界に入り込んでしまっている。俺が死者蘇生をやったって知ってるのにな、今の方が凄かったのか?まあ今のは実際に見たし印象は強烈だけれど。


「アキハさん…君は一体どれほどの力を持っているんだよ。こんなのもうおかしすぎる。今のはアルティメットスキルだよね、もしかしてアキハさんは複数所持しているのか…まさかそんな事が」


ディルが聞いてきた。聞くというよりは独り言に近いが。


「ディル、それはあんまり深く考えないほうが良いんじゃないか?俺は確かに複数アルティメットスキルを所持している。でもディルもアルティメットスキルを持ってるだろ」


「それはそうだけど…」


「それに、この世界は広いんだ。俺のような者がいるようにまだその上が存在している可能性だってある。ディル以外のSSSランク冒険者だって相当強いんだろ」


「確かに…僕はSSSランクの中では一番弱いし、他の人の本当の実力もわからない、ただ言えるのは僕より強いって事だけだし…うん!そうだね、僕もまだまだ修行が足りていなかったみたいだよ、これからももっと強くなれるよう頑張らないとね」


「そうか、頑張れよ」


夜、ノーメン、フェレサはしっかりと受け入れているようだな。夜とノーメンはわかるがフェレサが驚いていないのは意外だったな。


「フェレサはあんまり驚かないんだな」


「え?いやまあ、アキハさんが凄いのはなんとなくわかってたしね…」


それはまた、フェレサにしてはまともな返しだな。俺はてっきりバカすぎて理解できないのかと。


「ん?何か今バカって言われたような」


「気のせいだフェレサ。…多分自分のことをバカと思ってるからそう思っただけだ」

こいつなかなか勘が鋭い。


「む、私は自分のことをバカだと思ったことなんて一度もないよ!」


「あー、はいはいそうですね。それよりだ、いったん席に座れよ。特にルサルファ王女、脚が治ってはしゃぐのはわかるが一旦落ち着け」


「す、すまない」


そして全員が落ち着いたのを確認し、話し始める。


「どうやら落ち着いたようだな、それでこれからどうするんだお前達は?とりあえず死者蘇生のことを考えても仕方ないだろし、今はこの街の無事を祝えばいいだろ」


「祝い…あ、そうだ!アキハさん、言っていなかったんだが明日の午後6時からこの街全体でお祭りをやる事になったんだ、街の無事を祝って」


「祭りって、死んでた者達は元気になったと思うが普通に負傷者は大丈夫なのかよ」


「それなら大丈夫だ、全員私が買ったポーションで全快している、兵士の方は今はすでに元気に街の見回りや周辺の見回りに駆り出されているし冒険者の方はリサが配ったポーションで全員回復したそうだ」


「そうか、それなら良いんだけどな」


「それでだ、明日の祭りアキハさんも参加しないか…?実質祭りの主役なようなものだし」


「なんだよ主役って。しかし祭りか、ルサルファ王女はどうするんだ?」


「明日は部下たちに何故か休んでくれと言われてな祭りを見てまわろうと思ってるんだ。だからアキハさんも一緒に見てまわらないか、と思って…」


ガタッ

「な!…」


「どうしたんだ夜?」


「い、いえ、なんでもありません」


「そうか?…で、一緒にか…」


「やっぱり嫌か?」


これはさらに信頼度を高める絶好の機会じゃないか。


「もちろん行く」


「そうか、良かった。じゃあ明日の6時にこの屋敷に来てくれ」


「わかった、明日の6時な」


「ルサルファ、貴女まさか…」


「ち、違う!違うから!……たぶん…まだ…違うから!」


「わたしは応援します。頑張って下さいね」


「だ、だから違うって〜!」


「はいはい、違うのね。まだ」


なんかリサとルサルファ王女がイチャイチャしてる、本当に仲良くなったんだな。


「それじゃあ俺たちは宿に戻るな」


「あ、はい、さようなら」


「ま、また明日」


「ああ、また明日な」


こうして俺は他の四人を連れて宿へと転移した。







デート、ですか…

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