事後処理
扇風機よ、君は一体どこへ行ってしまったんだい
ギルド長に今回の被害、どれだけの死者が出たか聞いた俺はまず死体の山へと案内してもらった。夜たちとはテントで別れた。夜達には魔物の死骸の後片付けをしに行って貰っている。先程周辺の町からも兵士が到着し、そいつらも今は作業を手伝っている。現状この街の兵士はほとんど全滅だからな。住民に作業を手伝わせるわけにもいかないだろうし、周辺の町から人手を呼ぶしかなかったんだろう。ルサルファ王女もこれからいろいろと大変そうだな、まあほとんど俺が原因なんだけど…。
まあ、それはいいとして、俺が死体の山へ向かっているということは分かると思うが今回も死者蘇生を行うつもりだ。今回の作戦前、この戦場にいる者のすべての魂を保護しておいた。つまり今、死んだ者の魂は俺が持っているということだ。後は死者の身体を修復すれば蘇生の準備は整うんだが…。
死体の山へと来てみてわかったんだが思っていたより死体の損壊が激しくアルティメットスキル
【万物操作】とユニークスキル【記憶操作】を使わなければ修復は不可能だろう、まあそれを使えば全員生き返らせれるんだけど。
「じゃあ、ちょっとここから離れててくれるかリサ。それとこっちは絶対に見るなよ」
死体の修復は俺自身は目を閉じ【記憶操作】によって読み取った元の姿を頭の中で想像し【万物操作】によって身体を繋ぎ合わせていく。つまり端から見たら肉片が飛び交っているように見えるんだろう。それはあまり見ないほうがいいだろうからな。
「え?はい、わかりましたがいったい何をするんでしょうか?」
「死者の蘇生だ」
「……え?」
「死者の蘇生だよ。さっき死んだこいつらを生き返らせる」
「そ、そんなこと出来るわけ……」
「そう思うのも無理はないが、まあ結果は後で見ればわかる。今はとりあえずここから離れててくれ」
「は、はい」
さて、始めるか…。
…先程言った工程を辿り、無事全ての死体を修復することができた。ここからは前回と同様に【生命創造】によって魂を修復した身体に戻すだけだ。
そして一気に魂を身体へと戻していく。蘇生直後はすぐには目覚めず、目覚めてもしばらくは身体が重いだろうが、それも暫くすれば元に戻るだろう。
…と、これで終わりだな。だだ…俺は今回全ての死体を蘇生しなかった。正確に言うと男女二人だけ蘇生しなかった。理由は…こいつらが魔族だからだ、まさか魔族が紛れ込んでるとは思わなかったが、先程記憶を見た限りではスパイとしてこの街に潜入していたらしいんだが、潜入した街を守る為に死ぬってどんだけバカなんだろうか。少し興味があるな、二人の死体をアイテムボックスにしまい、後で蘇生させていろいろ話を聞くとしよう。
「リサ!終わったぞ」
言われた通りこちらを見ていなかった様子のリサは恐る恐るといった感じでこちらに近づいてくる。
「嘘…死体の山がなくなって…それにあんなに損壊が酷かったのに…全て…」
「触ってみればわかるぞ、全員しっかり生きてるからな」
そう言われリサは地面に横たわる死体だった者へゆっくりと触れる。
「暖かい…それに息をしてる!ほ、本当に生き返らせれるなんて…」
「まあ、いろいろ条件はあるんだけどな」
「こんなことが…何か代償はなかったのでしょうか。…それなら貴方は…」
なるほど確かに、大概大きな力には代償が伴うものだからな、だが残念なことに特にこれといった代償はない。まあしいて言うならこれは結構疲れるってことかな。体力的よりは精神的な方で疲れが溜まるんだよな、なんでかわからないけど。
「いや、大丈夫だ。リサが心配するようなことはないよ」
「そうですか…それなら良いのですが」
「それとリサ、今回の死者蘇生は魔道具によって限定的にやったことにしておいてくれ」
「え、はい。それは良いのですが…そんな魔道具があるのでしょうか?」
「それなら未知に頼ればいい」
「未知?」
「この世界には過去の遺物、ダンジョンと呼ばれる未知があるだろう。今回の事はそのダンジョンで入手した魔道具によって起こったことにすれば大丈夫だろ」
「そうですか…わかりました。しかし死者蘇生が行われたという情報が広まるのは止めることはできないと思います。この人数の口止めは流石にできそうにありません」
まあ、それはいいんだが…俺はやろうと思えば完全に死者蘇生が行われた事実を消すことは出来るんだ。ただそれをやらずこういった不完全な事実隠蔽をするのはこの事もまた面白い事に繋がると思っているからこそだ。
「それは別にいいよ。ただ今回この魔道具を使用し死者蘇生を行ったのは俺じゃなく、別の誰か、そうだな通りすがりのローブを着た爺さんが行ったことにしておいてくれればいい」
「そんなあやふやな事で良いのでしょうか?」
「良いんだよ。実際に死者蘇生の事実を知っているものはこの事を素直に信じるだろう。そして噂で聞いた奴は死者蘇生の事実とその爺さんの正体を疑う。それなら俺に注目が集まることはないだろう。俺が死者蘇生を行ったと気づくのは本当にごく一部だろうからな」
「流れ的には突如現れたローブのお爺さんが死者蘇生を魔道具で行い、その魔道具は何だと聞いたところダンジョンで手に入れと物だと言っていた、という感じでしょうか」
改めて聞くとめちゃくちゃな嘘だがまあ面倒くさいし別にいいか。
「ああ、それでいい」
「そうですか、わかりました。周囲への死者蘇生の説明は今のを話しますね」
「ああ、よろしくな。それじゃあ俺は少し行くところがあるからそこに寝転がってる元死体達の事は任せる、体の傷は全て直しておいたけどしばらくは目覚めないと思うからどっかに運んだほうがいいだろうな」
「わかりました。後はこちらでやっておきます。ありがとうござました」
「じゃあよろしく」
そして俺は街の宿へと転移した。
宿の自分の部屋に転移した俺はまず先程アイテムボックスにしまっておいた2つの死体を放り出す。
「さてと生き返らせるか」
早速魂を身体に定着させる。そしてすぐに話しを聞くため今回に限り強制的に意識を目覚めさせる。そのため身体はほとんど動かず動かせるのは顔の筋肉ぐらいだろう。
壁に寄っ掛からせ、話しを聴きやすくする。
そして…
さあ、起きろ!
ドンッ!
「ん…」
「うう…」
「お、目覚めたな。どうだ?気分は最悪か?」
最悪のはずだ。強制的な目覚めはだいぶ負担がかかっているはずだからな。
「ん…、こ、ここはどこだ!?」
「ちょっ!身体が動かないわ!」
「お前、一体俺たちに何したんだ!」
「私達が魔王の部下ってわかっててやってるのかしら!」
うお、よくもまあここまで元気でいられるな、というかうるさい。
スパンッ、スパンッ
頭を引っ叩く
「少し黙れ、お前達は今俺の慈悲で生かされてるんだ、それを理解しろ」
言葉に殺気を乗せ二人にぶつける。
「ひ、ひぃ!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい………」
少し、やりすぎたか。
「あー、大人しく俺が聞くことに答えれば生かしたまま返してやるから、正直に答えろ」
「ほ、本当ですか!」
「あ、ありがとうございます」
敬語って…今のやりとりでだいたいわかった。こいつら相当なおバカさんだろう、記憶を見たから大体の事はわかっているが直接こいつらから話しを聞くのも面白そうだな。
さてさて、何から聞いていこうかな。
おバカさん、2人組…
二人はどういった関係なんでしょうか?




