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再び戦場へ

昨日と同じくらいの文量です



計画通り正門から一旦離れることができた。


やった事といえば単純で正門へ向かっている50体の魔物から10体だけ裏門の付近に転移した。


そして今、Sランクの魔物が10体確認された裏門へと向かっている。転移でいかないのは少しでも時間を稼ぐためだ。すぐに倒して正門に戻って後々タイムラグがあった事がわかったら不自然だからな。裏門に着いたらとりあえずいい感じの戦況になるまで魔物と遊んでいよう。


っと、着いたな。だいぶパニクっているようだな。兵士とギルド職員が住民を何とか抑えてるといった感じで避難はままならない。


裏門は閉じられていてここからでは魔物は見えない。魔物らしき唸り声も聞こえない、それなのにパニックになっているということは誰かが安易に住民へ情報を言ったんだな。無能な奴だ、まあ俺にとっては都合が良いんだがな。


ゴッホン

「静まれ!そんな事じゃ全員が死ぬことになるぞ!」


鼓膜が破れるんではないかというほどの大声を出しこちらへ注目を集める。おかげで少しは静かになったな。


「だ、誰だ」

「救援?」

「いや、でも一人だぞ」

口々に俺に対しての疑問の言葉が出てくる。


まあそれは無視して、

「ここの責任者は申し出ろ。ギルド長からの指示で魔物の討伐に来た!」


そう言うと一人の獣人の男がでてきた。格好からするに兵士か。


「私がこの場の責任者、ルサルファ王女護衛隊第三部隊隊長のマクウェルと言う」


「そうか、俺は冒険者のアキハという。早速魔物の討伐に行くがいいか?」


「少し待ってくれ、もう少しでここにいる戦闘員の準備が整う」


「いや、必要ない。魔物とは俺だけで戦う。俺以外は全員ここで大人しくしててくれ、それと後で住民にこの情報を流した奴にしっかり罰を与えておけよ。無駄な騒ぎを起こすなってな」


そう言って俺は裏門を押し開く。


ギギイィィ


「な!あれを人の腕力だけで開けるなんて…」


「まあ安心しろって、もしお前が無理そうだと判断したらこれを使え、ほれ」


そう言って魔道具を投げ渡す。


ガチッ

「これは?」


「転移の魔道具だ。使えばここにいる全員をここから一番近い町に転移する、それがあれば安心だろ」


「わ、わかった。だが無茶はするなよ」


「ああ、わかってる」


俺は魔物の方へ体を向ける。今のやり取りの間にすぐそこまで近づいてきたようだ。

それじゃあ行くか。



ーーーそして、結果はご想像通り余裕で皆殺しにできた。まあ自分で仕組んだことで殺られるとか恥ずかしすぎるけどな、ただ途中からちょっと楽しくなってしまってまあまあ遊んじゃったな。


だいたい正門の方がいい頃合いだろうというところで魔物とのお遊びも終わりにしたが少し時間が経ちすぎたか…あっちが全滅だったら計画が潰れちゃうからな、早く向かうか。というか戦ってみてわかったが魔物たちはSランクの時と比べて結構な強さになっていた。これはあいつらでも結構厳しいだろうな。

それにここにはいないがとりわけ強い魔物を五体ほど用意したし正門ではさぞ苦しい戦いが繰り広げられてることだろう。


「本当に一人で倒してしまうとは」


「それじゃあ俺は正門へ戻る。あっちの戦力も厳しいからな、あと魔物の死骸は適当に処理しといてくれ、まあ肉片しかないんだけどな」


「わかった。貴方がいれば正門の方も安心だ。それではご武運を」


「ああ」

こうしてうまく時間を稼げた俺は再び正門にいるギルド長の元へと転移した。





秋が裏門へ向かってすぐに正門では戦いが始まった。そして悪夢は始まりと共に訪れた。



ーー本来、Sランク冒険者並みの実力者が二人いるチームが一体のSランクの魔物と戦うという個別での戦闘に持ち込むはずでした。…それが今はチームなど何処にもありません。全員が入り乱れ魔物と戦い、やられていってしまっている。現状なんとか魔物の侵攻を防げているのはあの四人のおかげです。やはりあの四人は強い、それにルサルファ王女も部下と協力してなんとか戦い続けています。ただそれでもじわりじわりと押され始めてしまっている。あの四人も既に結構なダメージを受けているようです。


どうやらSランクの魔物という認識が間違っていたよです。ここにいるすべての魔物がSランクの魔物を上回っています。ただそれだけならあの四人もここまでダメージを受けはしません、あの四人が追い込まれている要因はある五体の魔物とここにいる全ての魔物を操っているであろう、仮面の男です。


あの仮面の男は戦いが始まったと同時に上空に現れ、最初はただ見ているだけだったが魔物がダメージを受けると同時に回復を施してきました。そしてそれが実に厄介で魔物を一撃で倒さなければすぐに復活してしまう。こちらも後衛によって戦っている者を回復はさせています。ですがそれだけじゃあ間に合わないほどに魔物から受けるダメージが大きいのです。


「負傷者はこちらのテントに!ポーションで回復出来たのならすぐに戦場へ!」

下では救護テントに次々と負傷者が運ばれてくる。

そして戦場では次々に負傷者がうまれる。


グハァ!ゴォハ!


た、助け…グハァ!



「こんな事になるなんて…これは救援が来ても対処できるかどうか…最悪、街を放棄するしか」


「指揮を出すリサがそんな顔をしてどうするだ。戦場をしっかり見るんだ」


後ろを振り向くとルサルファが部下の肩を借りながら脚を引きずってこちらに向かってきていた。


「ルサルファ!脚が…」


ルサルファの両脚は完全に潰れていた。


「失敗してしまった。倒れている部下に気を取られて攻撃をまともに受けてしまったんだ。これ程の怪我はここにあるポーションじゃ治せないから、魔法で後衛にまわろうと思って」


「そんな、すぐにでも治療しなければ歩けなくなってーーーー」


「リサ!…今力にならなければ手遅れになるんだ。後のことなんて後で考えれば良いんだよ。今は目の前のことに集中しなければいけない時なんだ」


…ルサルファは自らの身を顧みずに街のために身体をはった。私は後衛専門で身体をはってみんなの為にやれる事はない。それならせめて誰よりも冷静に戦況を把握して最善の手を打たなければ。


「ちょっとセリフがくさいです」


「そんなー」


「でもありがと、ルサルファ」


「うん」


再び私は戦場を見据えた……。

それでも悪夢は止まない。


「危ない!」

ルサルファが叫ぶ。


「え!?」

ルサルファが見ている方向、そこには態勢を崩して今にも魔物の攻撃を受けそうになっているフェレサさんがいた。あれはあの中でも特に強い五体の魔物の一体…あんな攻撃をまともに受けたら!!


「フェレサさん!!」


ドゴォン!!


……「大丈夫ですか、フェレサ」


「ヨルハ…さん?ど、どうしてヨルハさんが…ヨルハさん!う、腕が」


「どうやら当たった場所が悪かったようです。両腕の骨は粉々ですね。まさか、私がこれほどダメージを受けるとは…本当に屈辱です」


「は、早く回復しないと…」


「そんな暇はありません。しっかり周りを見なさい。もう既に大半がやられてしまっている。そして私達ですらこのざまです。休んでる暇はありません」


「で、でも…」

周りはほとんど全滅と言っても良いほどだ。かろうじてまだ戦っているのは私とヨルハさん、ノーメンさん、ディルさん、そしてルサルファ王女の部下である部隊長さん達、もうほとんど限界に近いんだ。





グオオォ!!

急に魔物たちが引き始め仮面の男の元へ集まっている。


……「一体何が…どういうことでしょうルサルファ」」


「わからないけど、今の内に下にいる彼らを正門付近に戻して体制を立て直したほうがいい、リサ」


「そうですね、…総員!正門正面に戻りなさい。今すぐに!」


ギルド長の言葉は戦場の隅々にまで響き渡り戦場に立つ者は全員正門近くまで後退した。


「しかし、未だ危機的状況なのは変わりません。これから一体どうすれば…」


「リサ…魔物達を見るんだ…」


「え?…」

魔物達の方を見ると特に強いあの五体が他の魔物より一歩前に出ている。


キュイーン


魔物の口に魔力が集まっている。それも今までと比べ物にならないほどの高エネルギー。


「まずい!咆哮ブレスを放つ気です。あれほどの高エネルギー波を受けたら街が吹き飛びます!!」


「どうするだ、リサ!」


「くっ!全員、下に降りてください!後衛もです。これは一刻を争う事態です。直ちに下に降りるんです!」


ギルド長の指示に従い、この戦場にいる全員が下に集まった。だいぶ数は減ってしまったがそれでも先程の時間で回復できた者は多いようだ。


「全員、聞いてください!今魔物達はこの街に向かって咆哮ブレスを放とうとしています。現状この咆哮ブレスを防ぐ手段は1つ、ただそれでも良くて街は無事だけどここにいるほとんどの人達は死ぬ事になります。最悪な場合は私達と街ごと吹き飛ばされます。

…作戦は先ず防御結界を張れる者達が前列に立ちその者達に防御結界が使えない者達が後ろから魔力を送ります。これにより防御結界の強度は数十倍にも上がり良くて互角まで持っていけます。

ただこの魔力を送るというのは受け取る方も送る方にも大きな負担があり、とても危険な行為です。ですが、今思いつく最善の手はおそらくこれだと思います。ここで逃げ出しても咎めはしません。自身の命がかかっています。仕方のないことだと思います。ですが、ですがどうかこの街のためにルサルファが愛し守り抜きたいと誓ったこの街のために力を貸してください!」


「リサ…」


スタッ

兵士たちが前に出てきた。

「我らはもとよりルサルファ様に仕える身、その我らがルサルファ様の愛する、我々の愛する街を見捨てるはずがありません」


「ギルド長、それは俺たちもだぜ。俺たちはこの街が結構好きなんだ、その街の為に戦えるなら願ったり叶ったりだ。それになここにはそんな腰抜けはいないぜ、なあ、お前ら!!」


〈〈〈〈うおおおおおーーーー!!!!〉〉〉


「本当に…ありがとうございます」


「感謝する…」


ギルド長と王女が頭を下げる。


「おいおい、そんなことするんじゃないぜ。顔上げて早速指示をくれ」


「はい、そうですね」……


こうしてギルド長の指揮のもと最終手段の防御形態がとられた。これを防げたとしてもおそらく生き残っていられるのはあの四人ぐらいだ。結局魔物から街を守ることは出来ない。裏門にはすでに伝令を走らせ、すぐにこの街から離脱するようにと伝えられるだろう。なんとか住民の命は助かるはずだ、この咆哮ブレスを防ぎきれば。


「皆さんそろそろ咆哮ブレスが来ます。わたしが合図したら防御結界を発動、後列は魔力を送ってください!」


「「「「了解」」」」ーー




ーーー「今です!」


「「「防御結界、発動!!」」」


バゴォオン!!!

結界発動の直後に魔物による咆哮ブレスが放たれた。


トゴォングググーー

ブレスと結界の一瞬の均衡。


ピキッ、バキバキーー

そんな音とともに幾重にも張られた防御結界は次々と破壊されていく。


(やはり…ダメだった。私達は街も守ることも住民を守ることも出来なかった)…


「アキハさん…」


ドッゴォォン!!


最後の結界が破壊される直前、目の前から物凄い衝撃が体に押し寄せる、…でもこれは咆哮ブレスの衝撃じゃない!?


「一体何が!?」



「おいおい、俺がいない間に随分と追い込まれてるじゃないか。(理想的と言えば理想的な状況だが)」


「ア、アキハさん!」


「あとは俺に任せてくれ」



作戦は上手くいきそうですね…たぶん

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