勝負の結果
時間が…
すみませんm(_ _)m
さてさて、今回はどれくらいの力加減でやろうかな。
ディルと夜、両者とも俺がこの世界であった奴らの中では圧倒的に強い力を持っている。魔王と比べてもこの二人の方が強いだろうしな。まだ魔王には二人しか会ったことはないけど…まあたぶんこの間の魔王戦の時の力加減でちょうどいい感じかな。あとは眼の色だけど…眼の色は実際なんでもいいんだよな…よし、今回は翡翠色にしておこう。使い勝手がいいし。
『それでは…試合、開始!』
その合図とともに動き出す。まずはディルに仕掛けるか。今思ったがこのスピードで動いたら実況がいる意味がなくなるな。
ドゴォン!
横から俺を覆い尽くす程の大きな炎の波が押し寄せる。夜から放たれた魔法だな、やっぱり魔法が使えたか夜。
即座に炎の波を魔法で凍らせてそのままディルへと駆ける。
「やっぱり、凄いよ君達!」
今の一瞬の魔法の攻防を見たディルはそう言いながら俺を迎え撃つ態勢に入った。この間の試験の時使っていた剣は最初から装備している。この試合はディルでも最初から本気でやらなければすぐに負けてしまうからな。
「こんなもんじゃないぞ俺も夜も」
俺は走ってきた勢いをそのままにディルを殴りつける。
カキィン、ドゴォンッ!
「くっ!重いね、やっぱり」
剣と拳がぶつかり合う。
「その剣なかなかの代物のようだな。今の攻撃を耐えるとは」
普通だったら粉々だったんだが、ヒビ1つ入ってないようだ。一体どんな代物なのか興味があるが。
「まあね、これは精霊王から貰ったものだから!」
タンッ
俺の拳を力では押し返せなかったディルは自ら後ろへと飛ぶ。
精霊王ってまさか俺がアークとしてこの世界にいた時と同じやつか?もしそうなら是非会いに行きたいな。前と同じやつならこの世界で以前の俺を知ってる唯一の存在なんじゃないか?それなら聞きたいこともいろいろあるし、今度詳しくディルに聞こう。
『こ、これは一体何が起こったというのでしょうか…。今の一瞬の攻防、SSSランク冒険者と張り合う冒険者アキハ!そしてあれほどの魔法を無詠唱そして魔法陣無しで放つヨルハ!この二人は一体何者なのか!』
お、実況がしっかりと仕事してるな。まあ試合内容に関して詳しい事はほとんど喋ってないけど…。
「今度はこっちから行くよ!」
ディルが俺に向かって駆けてくる。
とりあえず夜は無視してディルを迎え撃つ。
カキィン
正面にいるディルが俺に到達する前に俺の後ろから俺に向け剣撃が放たれる。それを拳に纏った闘気で打ち消す。
『ディル・クレインが二人!これは一体どういうことだ!』
「スキルか」
「完全に気配を消して放ったんだけどまさか反応するとはね」
「まあな。それよりも、なかなか面白いスキルだな。わざと本当の使い方はしてないようだが…それだけじゃ俺に攻撃は入れられないぞ、それにちゃんとしたスキルの使い方をする前に負けたらしょうもないぞ」
「やっぱりばれてたか」
ドゴォン
回し蹴りで後ろにいるディルを蹴り飛ばす。今度はしっかりと攻撃が入ったようだな。
それにしても感触からして普通の人と変わりないように思えた。蹴り飛ばされて吹っ飛んでる途中に突然消えたがまだディルの能力の全貌がわからないしなんとも言えないな。この試合中に見れるといいんだがな。この身体でスキルを体感出来なさそうなら記憶を見てしまおうかな。
「まだまだ!」
ディルが再び俺へ駆け出そうとするが…。
「豪炎の化身よ、抗う者を食らいつくせ。炎蛇」
夜が詠唱を終えると同時に闘技台の上に燃えたぎる炎を身に纏った巨大な蛇が出現した。
蛇の出現と同時にディルは後ろへ飛ぶ。
「うわ、これも使えんのか夜のやつ」
俺も一旦後ろへさがる。
はは、面白い。夜が炎なら俺は氷でいかせてもらうぞ!
「幾たびの死を見届けた氷の化身、いでよ雹瘴の巨神兵」
上空に出現した魔法陣から炎を纏う大蛇の上に巨大な塊が落ちてくる。
トゴォゥン!!
グ、グォーー!!
塊は地面に着くと同時にその体を広げ炎の大蛇を抑えつける。巨神兵から発せられる冷気は暴れている炎の大蛇を侵食していく。
「そんな…」
「まだまだだな、夜」
「私だってこれだけではありーーー」
ドガォン!
「ぐっ、一体何が!」
夜を襲った衝撃、正体は大蛇の尾が夜を攻撃したものだ
「な、何故!」
「乗っ取ったんだよ、お前の魔法を」
巨神兵の冷気が蛇を包み終わると同時にその魔法を俺の支配下へと強制的に書き換えた。そして今や炎ではなく氷の大蛇へと変貌している。
「さあ、この二体を倒さなければ俺へは到底辿り着けないぞ!」
「くっ、いきます!」
「僕だって!」
ディルは大蛇、夜は巨神兵へと駆けていく
まあ、正直言えばこの二体ではあの二人は止められないだろう。さっきの蛇の攻撃も夜はしっかりと受け止めていたしな。
だがそれでも俺に攻撃する隙は与えない、俺に攻撃しようものなら隙をつかれあの二体から攻撃を受ける事になるだろう。
そう思っていると何のことはなく二人が二体を攻撃している。これならば倒すのも時間の問題だろうな。
ドコォン!
ブォーン!
その轟音と共に二体は消滅した。二人は多少のダメージを受けているもののそれもすぐに回復した。
それを確認しながら俺は二人の後ろへ回りこみアルティメットスキル【万物操作】を発動して闘技台下、100メートルを消滅させる。
消滅させたんだが…。
「あ〜、やっぱりこれではおとなしく落ちてくれないか」
夜は【空歩】が使えたんだったな。まあ今ならあの時とは違って魔法で浮けるとは思うけど、ディルの方は魔法で浮いているようだし。
「今更だけど、本当に無茶苦茶じゃないか。なんなんだ君のその力は!」
「(確かに無茶苦茶と言っていいほどの力です。ですがアキハ様はおそらくこれでもかなりの手加減をしてくださっている。本当に先程の私の考えがどれほど無謀で不可能なことか思い知らされます)」
…そろそろ作戦の時間も迫ってきたし終わらせようかな。
「それじゃあ行くぞ、二人とも」
まず俺は二人に向け魔法で高速の風の刃を放つ。それと同じスピードで刃の後ろについてディルへと駆ける。
二人が魔法に対処した瞬間、【記憶操作】によって一瞬だけ記憶を消失させる。
それによって出来た隙をつき二人を俺が開けた穴へと叩き落とす。ただ下についた頃にはすでに意識がはっきりしてくるだろう。
まあその頃には遅いんだがな。
下に響く衝撃音を確認した俺は先程消失させた闘技台をもとどおりにする。もちろん100メートルの穴も完全に元どおりに塞がっている。
その結果俺は闘技台の中央に一人だけだ。二人は俺の100メートル下に閉じ込められている。これで完全勝利だな。闘技台の上に俺一人しかいないし。
俺は上に拳を掲げる。
『……』
《《《うおおおおーーーー!!!》》》
掲げた拳と同時に歓声が轟く。
結構気分がいいな、これ。
若干下から衝撃が伝わってくるが夜とディルは上には上がってこれないだろう。
100メートルの穴をふさいだ物質は【万物操作】によって完全に俺の支配下に置かれている。その粒子1つ1つに俺の魔力を乗せることにより強度は相当上がっている。そしてこの重量だ。身体能力の高い夜でも脱出は不可能だろう。
『こ、これは…今の一瞬に何が起こったというのでしょうか。闘技台に突如として底が見えないほどの巨大な穴が出現したと思ったら次の瞬間にはその穴は消失し闘技台の上にはアキハ一人…し、しかし、闘技台にアキハ一人ということはつまり、この試合、勝者は…アキハだあ!!』
《《《うおおおおおおおお!!!!!》》》
「…何なんだい、今のは!?私と戦った時は全然力を出していなかったのかい」
「(今もたいして力はお出ししてらっしゃらないと思いますが、それでも)本当に…私達など遠く及びませんね。負けた夜先生とディルさんにも」
「これから私はあんな凄い人と一緒に旅をするのかい」
「怖気付きましたか、フェレサ」
「いや、むしろやる気しか起きないよ!私だってこれからもっと強くなる予定なんだから!」
「私もそのつもりです」
三人の試合はこの二人だけではなく多くの冒険者に様々な影響を与えることになった。
次回はやっと作戦決行!!きっと!




