夜さんの性格
「主様起きてください、朝ですよ」
「ん、ああもう朝か…」
体痛え、さすがに二日間野宿は体に効くなー。
「おはようごさいます主様、朝食の準備はできておりますのでどうぞ」
「ああ、おはよう夜。それじゃあ食べようかな」
昨日の俺のサンドウィッチが見る影もないほどの豪華な食事が並べられていた。
「それじゃあいただくか、ーいただきますー」
朝食を食べ始めても夜は「後で食べますので」と言って食べている俺を見ているだけだったので、これからは一緒に食べるよう言ったら最初は遠慮気味だったものの今は嬉しそうに朝食を食べているのでよかった…しかしこれ美味いな。
そう言えば、
「夜は、いつ頃起きたんだ?」
「起きたのは主様の少し前です、朝食も作りたかったので」
「そうか、美味いぞこれ。ありがとな」
「いいえ、とんでもありません//不安でしたけど上手くいって良かったです(ニコッ )」
うわっ!なんだ今の笑顔、眩しくてよく見えなかったぞ、まさかお前にそんな隠れ技があったとは。
でも、なんで俺が作れない料理を夜が作れんだろ?まあ、別にいっか、
どうでも。
こうして、夜の作った美味しい料理をたらふく食べ満足した俺はその後、夜と今後の予定を話し合い早速出発の準備に入った。
「夜、準備はいいか」
「はい、主様万全です」
街に行ったら売るために適当にこの近辺の魔物を狩ってたら、結局昼過ぎになってしまった。せっかく朝早く起きたのに…
「じゃあ夜、近うよれ近う…ほれほれ早く」
「近う.…ですか?一体何をなさるのでっひゃあ!
ぬ、主様!い、いったい何を!」
俺は近くに来た夜の身体ををお姫様抱っこする。
「まあ、いいから掴まってろ、すぐ終わっから」
そう言いながら俺は両足に魔力を集中させる。
「し、しかし私はもう既に限界が、う、嬉しすぎて限界がそこまで」
何言ってんだこいつ、何だ限界って。
俺は両足の魔力を闘気へ変換し脚力強化を施す、
そしてっ!
ドガォーン!!
先程まで俺がいた森林が衝撃で揺れる
そして、盛大なジャンプをした俺は上空300メートルぐらいのところに立ちながら下を見下ろしている…。今上空に立つのに使用しているのはエクストラスキル【空歩】だ。
「夜、もう降りていいぞ」
「しかし私は…」
「あー大丈夫大丈夫、夜にもちゃんとスキルあげたから」
「私にスキルを、…ありがとうございます!」
まあ、エクストラスキルぐらい他の世界のスキルでカバーできるし。
【生命創造】で創った生命体は俺とは深い関わりをもつ、そして自分の能力を割譲することも出来るようになる。
でもまだ、夜にあげたスキルって【空歩】だけなんだけどね。
そうして、夜は慣れない足つきながらも嬉しそうに空の上を歩いている。
初めてのスキルがだいぶ嬉しかったみたいだな、
よかったよかった。
一方、夜の方は、
(や、やったー!主様からスキルを貰っちゃうなんて)
なぜ嬉しそうなのか察せない秋くんであった。
夜がだいぶ落ち着いてきた頃、
「主様、あちらの方角に街らしきものが見えますよ」
300メートルも跳んだのにはもちろん訳がある、それは周囲に街がないか調べるためだ。
いや、300メートルは飛びすぎでしょと思う方、はいはいそうです正論ですよ。実際俺は150メートル程度でイイかな、と思ってたのに二倍も跳んじゃうんだからびっくりですよ。
力加減がうまくいかなかったみたいで…
「ああそうだな、街も見つかったことだし一旦地上に降りるぞ」
そうして街があった方角をしっかりと確認し、俺たちは地上へと降りた。
上から見ている時、森を抜けてすぐに草原があるのを見つけたので、そこへ降りることにした。
「主様、ここからは歩いていくのでしょうか?」
「ああ、もちろんさ、せっかくの旅なんだ。その道中も大いに楽しもうじゃないか」
まあ、いろいろと面倒くさくなったらその考えも放棄するけど。
「それじゃあ早速行こうか」
「はい、主様」
そうして俺たちの旅が始まった。
◆
歩き始めてから数分後、100メートルほど先に2台の馬車が止まっているのが見えた。
「主様、このまま行くとあの馬車のすぐ近くを通りますが、この近辺の情報などをお聞きしますか?」
「よく見るのだ夜くん、あの馬車は現在進行形で盗賊らしきもの達に襲われているのだよ」
「そ、そうでしたか。では襲われている人たちを助けるのですか?」
「いや、助けないけど」
「そうですか、ではこのまま進みましょう」
…え?いや…本当に助けないのですか?とか聞かないの、聞くよね普通。
いいの?俺本当に無視しちゃいますよ。
そんな俺の考えはつゆ知らず、夜はどんどん先を歩いていく。
俺が生み出しておいてなんだけどさ、もう僕君のことがよくわからなくなってきたよ…だって最初と性格変わってんじゃん、なんかもっと可愛らしかったような気がしなくもないんだけど。
「主様、どうかなさいましたか」
「いや、なんでもない」
まあ、仕方ないことなんだけど、【生命創造】の能力では最初の自我はどうしても不安定で安定してくるまで時間がかかってしまう、そして夜はこの状態で安定してしまったのだろう。
いやはや、あの頃の夜は可愛い性格をしていたもんだ…まだ1日ほどしか経ってないけど。
まあ、結局俺も馬車のことは無視して先へ進むんだけどね。
馬車の横を通り過ぎた後、背後から悲鳴らしきものが聞こえるが無視しよう。
そして俺たちは街を目指して草原を歩いていくのだった。
そうしてしばらく歩くとやっと街の外壁がすぐそこまで見えてきた。
しかしあの馬車に会ってからここまで特に何事もなく来れたな。
「やっとつきましたね主様」
「ああ、そうだな、取り敢えずこの街の正門へ行ってみようか」
正門へ行くと既に何十人か並んで順番待ちをしている
順番待ちをしている人の中には商人が多いみたいだし、そこら辺の産業が盛んな街なのかな。
そして順番がきたので検問所のようなところへいくと兵士が紙を出してきた。
「その紙に必要事項をご記入の上で、身分の証明となるものを提示していただきます。身分証明をできるものがない場合は仮身分証明書をこちらで発行いたしますが、どうなさいますか?」
「じゃあ、仮身分証明書発行でお願いします。あ、こっちの連れの分もお願いしますね」
「わかりました。では仮身分証の注意点などを説明させていただきます、まず仮身分証の有効期限は七日間です。これを過ぎると罰金が発生しますのでご注意ください」
「そして、街の中で身分証をおつくりになられた場合、もう一度この検問所まで来ていただき提示していただければ、滞在期間は無期限になるのでよろしくおねがします。…以上で説明を終わらせていただきますが、質問等はございますか」
「いや、特にないかな、夜もないか?」
「はい、ありません」
「では、仮身分証を発行していますので少々お待ち下さい」
こうして、俺たちは無事街に入ることができた
ちなみに仮身分証発行は無料だった。
有料だった場合、もちろん金なんか持ってないので、そこはほら…ね、俺の能力でちょちょいーっとやらせて頂こうと思っておりました
現在、午後3時ごろ、俺と夜はこの街の冒険者ギルドへと向かうのだった。
◆
同刻、魔族が暮らすサターナ大陸のとある王城にて。
「グレイリン、人間族側に勇者が召喚されたといのは本当のことなのだろうな?」
「ははっ、確かな情報筋から仕入れた情報なので確かかと」
「ははっはははは!!そうか、そうか、これは良い退屈しのぎになりそうではないか!ハッハハハハハハハハハ!!」
高笑いを続けるこの魔族ーー妖艶な容姿をし
その瞳は真紅の眼差しをもち、その髪は紅蓮の炎を思わせる。
その魔族、名を ギニィシルヴィア。
サターナ大陸を治める王の一人にして、二夜を司る魔王だ…。
魔王、初登場!