作戦の為に
汗の次は鼻水が垂れてきました( ;´Д`)
「ふぅ、大体準備は整ったけど、予想より結構時間がかかったな」
作業に取り掛かって数時間、あたりはすっかり暗くなってしまい、今は魔法で灯りを作って作業をしている状態だ。
「ディルが作ってくれる夕食の時間はもう過ぎちゃったし…飯はどうしようか」
今日の作業はここまでだ。明日もう一度ここに来て最終確認を行い、2日後の昼に作戦決行だ。
おそらく夜たちは俺が何か企んでる事はわかってるだろう。フェレサはどうだかわからんが…だからこの作戦を決行すれば高確率で俺の仕業とばれてしまうと思うが、まあ、夜たちにばれる分には別に構わない。作戦の目的はあの王女の信頼と信用を得る事だからな、まあそれも完全に上手くいくかはわからないんだが、全ては終わってみないとわからんし今考えても無駄だな。
今はとりあえず街に戻って夕食を食べるところを探さないといけない、腹減ったし。
そして俺は街へと転移した。
◆
「主様遅いですね。すでに夕食を食べ終わってしまいましたが」
「そうですね、まあアキハ様に心配は不要だと思いますが」
「なんだい、アキハさんがいないと寂しいの…ちょっ、ちょっと!その振り上げた手を下ろしてくれないかい、ヨルハさんのは本当に痛いんだって!」
「貴女が変な事を口走るからですよ、フェレサ」
「や、やめて、本当に!」
…「あの二人は仲が悪いのかな」
「どうなんでしょう、私にもわかりません」
夜とフェレサを離れたところから見ているディルとノーメン。理由は主にあの争いに巻き込まれたくないからだ。
「ところで、なんで今日はアキハさんだけ別行動だったの?」
「何か用事があると仰っていましたが、その用事の内容は伺っておりません」
「ふ〜ん、そうかい…。それで三人は今日何をしていたのかな?」
「今日は主に冒険者ギルドの修練場で訓練をしていました」
「そうだったの!それなら僕も誘ってくれれば良かったのに〜」
「…そうですね、今度機会があればお誘いします」
「うん、よろしくね」
ガチャ
食堂の扉が開けられる。
「ただいま」
「お帰りなさいませ、主様」
「なんだ、またフェレサと夜はけんかしてんのか」
「違うよ!一方的な暴力だグフェ…」
「違いますアキハ様、これはちょっとばかしフェレサに手ほどきを…」
いや、今完全に殴ってただろうに。
「まあ、ほどほどにな」
「はい」
「それでアキハさん、今日はどこへ行っていたのかな?三人を街に残して」
ディルが聞いてくる。
「ん?ああ、街近辺の散策だよ。もう暫くここにいるからこの近辺がどうなってるのか知りたくてな。それに俺の場合移動とかも一人の方が何かと都合がいいし」
「ふ〜ん、そうだったの。…あ、夕食はどうしたの」
「食べてきた、時間も遅くなって言われてた夕食の時間は過ぎてたからな。…それじゃあ俺は部屋に戻るな、今日はもう寝たいし」
「うん、わかった」
「あ、それと明日からは各自自由に行動していいから、常に四人で行動するのも面倒くさいしな。この街を出発するときは俺がみんなに言うからそれまでは自由行動で、じゃあおやすみ」
ガチャ
「「「……」」」
「…あっという間に行っちゃったね」
「フェレサにかまってて全然話せなかったじゃないですか」
「かまっててじゃなくて殴っててでしょ!」
スパンッ
「何か言いましたか?フェレサ」
「そんな理不尽な〜!」
「明日から自由行動ですか…暫くは鍛錬に集中出来そうです」
「なんなら僕が相手してあげようか?」
「そうですか、それなら早速明日からよろしくお願いします」
「うん、りょうか〜い」…
ーーー翌日、俺は再び森へとやって来た。昨日暫くは自由行動と言ってあるし何も言わずに宿を出てきた。
そして作戦の最終確認なんだが、完全に仕上がっている。ただそれは俺の方は、というだけだ。この作戦には周囲の状況もかなり関わってくる、そのため俺は再び街に戻り作戦の準備をより完璧にするために動がなければならない。
ーーそして、転移して戻って来たわけなんだが、先ずはギルド長に会いに行く。
冒険者ギルドに行くとギルド長にはすぐに会うことができた。
「それで、聞きたいこととは何ですか?」
先程まで忙しかったらしいが、わざわざ時間を作ってくれた。
「いや、ルサルファ王女について聞きたくてな、それとこの街の戦力なんかも聞けると助かるな」
「ルサルファですか…」
露骨に嫌な顔をしたな。
「また、あそこの兵士が迎えに来たのか?」
「はい、1時間ほど前に…今日は忙しいと言って帰って貰いましたが」
それはまた、大変そうだな。
「ところでその質問の理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
理由か…まあ確かに一介の冒険者が聞く内容にしては少し不自然か。
「ルサルファ王女の方は単純な興味さ、性格破綻者が治める街にしてはしっかりしているなと思ってね。戦力の方は人間国と比べて獣人国の戦力はどれほどのものなのかと思ってね。魔族だっているわけだし知っておいて損はないかなと」
とっさに思いついたものだがこれで通用するかな。
「そうですか、それにしてもルサルファを性格破綻者とはルサルファの部下が聞いたら暴れだしそうですね」
「そんなに慕われてるのかあの王女は」
「はい、前にも言いましたがあの異常な性格を周囲は知りません。表向きには品行方正、完璧超人、武術、戦闘にも長けて、文武両道です。それゆえ頭もかなりきれます。他の王族の方々も一目置くほどですよ。まあ完璧すぎるが故に親しい関係を築ける者がいなかったのかもしれませんがね」
「凄いな、表向きは」
「はい、表向きは。…ですがどんなに性格がおかしくてもその実力は本物ですからね、それでもあんなに頭のきれるルサルファが私を城に連れていくことも出来ないのはこと友達関係となると奥手になってしまうからなんだと思いますが」
「ちなみにどれくらい強いんだ?」
「どうなんでしょう、私も話に聞いているだけですからね、まあそれでも冒険者ランクで言うとSSランクは確実だと思います」
SSランクか、まあそのくらいなら作戦に支障はないな。
「それでこの街の戦力はどうなんだ。そのルサルファ王女がトップなんだし部下もそれなりに鍛えられてるんじゃないか」
「はい、その通りです。この街にいるルサルファ王女に仕える兵士は約200名、それぞれ細かく専門の部隊に別れていますが、それぞれの部隊長は皆Sランクに匹敵します。人間国の国と戦争を起こしても人数差をひっくり返せる程の戦力と知略を持っていますから。まああとこの街で大きな戦力といえばやはりSSSランク冒険者のディルでしょうか。確実にこの街で一番強いですからね、貴方達はともかく」
「いやいや、さすがにSSSランクには敵わないよ」
「ご謙遜を、ディルが言っていましたよ。ノーメンさん、ヨルハさん、アキハさん、この三人は異質だと」
異質ってなんだよ、てかそんなこと言ってたのかディル。なかなか見る目があるじゃないか!
「そしてその中でも貴方はさらに異質だとも」
「それは光栄だね。SSSランク冒険者にそこまで言われるとは。まあその異質の捉え方にもよるが」
「いつか貴方の本当の力をこの眼で見てみたいものです」
え、いいの、本気出しちゃって。この世界滅ぼしちゃうよ。
なんちゃって、そんなこと面白くないからしないけど。
「まあ質問の答えはだいたい分かったかな、ありがとう。あ、それとさ前々から気になってたんだけどちょっといいかな」
「はい、何でしょうか」
「Sランクの魔物一体とSSランクの冒険者ってどっちが強いのかな?確か前にSSランク冒険者一人でSランクの魔物を追い払えるぐらいって聞いたけどそれって実力がSSランク冒険者の方が少しばかり上って事でいいのかな」
さっきまでの冒険者のランクの強さはだいたいフェレサを基準にして考えてたが実際のところをしっかり知っておいたほうがいいだろう。
「そうですね、魔物と冒険者、相互の相性にもよりますが、平均的に言えばSSランク冒険者なら一人でSランクの魔物を倒すことができると思います。あくまで平均ですが」
「その倒すはギリギリか、それとも余裕を持ってか?」
「ギリギリです。そのためおそらくSランクの魔物一体とさらにAランクの魔物が一体いれば、戦っても勝負がつかないか敗北しかないでしょうね」
「そうか…それじゃあSSSランクはどうなんだ?」
「SSSランクは全員ギルド総長が独断で選んでいますからはっきりとは分かりませんがSSランク冒険者とは別格でしょうね。Sランクの魔物が複数体いても余裕でしょう。まあこれも人から聞いた話なんですがね」
「そうか、まあこれで聞きたいことは聞けた。今日はありがとな」
「はい、お役に立てたのなら良かったです」
こうして俺はギルドを後にし宿へと戻った。
…宿には誰もおらずそれぞれ自由行動を満喫していることがうかがえる。
そして俺は一人、部屋へと戻る。
ドサッ
ベットへと座り考え込む。もちろん今回の作戦のことについてだ。
ギルド長の話を聞く限り今回の作戦の一番の懸念事項はSSSランク冒険者のディルだけだ。作戦が失敗するのは嫌だし、念には念を入れておくべきだろう。ディルの対策はちょっと力を入れておこうかな。
その後、宿へと戻って来た四人を出迎えて今日何をやっていたかをそれぞれ話して夕食の時間は終わった。
部屋へ戻った俺はすぐに寝る準備へと入る。
明日は作戦決行日、早朝から作戦の確認をしておいたほうが良さそうだからな、早めに寝てしまう。
明日、この街に起こることを思うと自然と笑みが溢れる。明日が楽しみだな…。
次回はやっと作戦決行ですね




