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揺れる感情

忙しい〜…

投稿遅くてすみませんm(_ _)m



俺達がソファに座ったのを確認し、カイさんは話し始めた。


「この街は3日前の午前、突如として魔族の襲撃を受けました。魔族の襲撃と言っても実際街の被害のほとんどは魔物達によるものです」


「魔物?」


「はい、死の森から魔族達によっておびき出されてきたSランクの魔物達です。ですが魔物の襲来はつい先日起こったばかり、住民達の避難は速やかに行うことが出来ました。そして幸運なことにこの街には先日の魔物襲来の時、増援に駆けつけてくれた高ランク冒険者が多数いましてなんとか対処することが出来たんです」


「それで、その間魔族達は何をしてたんだ?」


「魔族の多くは上空から魔物の攻撃をサポートする形で魔法を放つなどをしてました。それでもなんとか持ち堪えることが出来ていたんですが、その間に…」


「シルさんの眼を取られたと」


「はい、シルベルはその時はまだ冒険者ギルドにいたらしいのですが、そこに魔族が現れたらしく…」


「カイバルト、その時の話しは私がしよう」

そう言ってシルさん自らが話し始める。


「私は魔族襲撃の報せを受けて自室で周辺のギルドへ通達を行っていたのですがその途中に部屋に突然魔族が現れたのです」


転移をしてきたのか、しかしなんでシルさんの居場所がわかった?いや魔眼が狙いだったなら、そのくらい把握しておくのか、それとも別の方法があったのか。


「部屋に現れたのは三人の魔族でした。私が見る限り結構な力を持っているようでしたので、おそらく魔王に近しい存在の魔族だと思います」


「それで、眼を持って行かれたのか」


「はいそうなのですが、この眼は代償です」


「代償?」


「街の被害をこれ以上大きくしたくなければおとなしく眼をよこせと言ってきたのです」


ん?おかしくないか、なんで魔族達が街の被害を気にしてる、街の被害を気にしなければ魔族達はシルさんの眼を無理矢理にでも奪えたのになぜわざわざそんな話しを持ちかけた。

…この街を滅ぼしたくなかった?

そこまで大事にせずに眼を奪いたかったとしたらどうだろうか、もしギルド長が反抗したならば、街の被害はさらに大きかっただろうし。

ただ、そうなると何のために…どんなに被害を抑えようと、敵対する魔族の襲撃なんだし4種族間での情報はすぐに広まるはず、まあ一般市民なんかには報らせはいかないだろうが…しかしそうなると残るは自分達魔族に情報を渡らせたくなかったと考えるしかないな、これが魔王による命令ならば、他の魔王に知らせたくなかったとも考えられる…はあ、そういうことか、まあ魔王もいろいろと面倒くさいってことだな。


少し考え込んでしまったが、シルさんの話に戻ろう、えっと…


「それでシルさんはその話しを受け入れたってわけか」


「はい、自身の眼と街を天秤にかけた結果です。この判断に関しては後悔はないんです、ですがその後に…」


その後?まだなんかあったのか。


「その後がどうしたんだ」


「ここから話すことがアキハさんが最初に言っていた質問に繋がります」


最初の質問って

「なんでサラとその祖父がいるのか、か?」


「はい」


あーうん、さすがにここまで来れば話の内容も察することが出来た。つまりは、


「その時ギルドにいたリイナを含むギルド職員が数名魔族に連れ攫われました。必死に止めようとしたのですが、眼を奪われた後では全く歯が立たずギルド職員は戦利品として、と言っていました…」


まあだろうな、しかしシルさんも眼を奪ったあとに約束を破るとは思わなかったのか?所詮口約束だろうに


「主様、リイナとは誰でしょうか」

ノーメンが聞いてくる。そういえば知らないんだったな。


「サラの双子の姉だよ、ギルドの職員だ」


「……そうですか」


「「「………」」」


ノーメンの質問で少し場の空気が気まずくなりました。ノーメンさん空気はちゃんと読みましょう!



「まあだいたいわかったが、魔族達は言っていた通りそれで手を引いたのか?」


「はい…ギルドの職員を連れて、転移してしまいました。その後魔物達の攻撃が突如止み、森へと帰って行ったのが確認されています」


魔物を操っていたのか?そうだとしたら興味深い能力だ。


しかし、これからどうしょうかな。さっき話している途中に眼の色を変えてシルさんの記憶を見たから話した内容以上に今回のことは把握できた。そして考える、これからどう動けば楽しくなるだろうか、と。


第一案は俺がその魔族達の親玉の魔王のところに乗り込んで攫われたギルド職員達を助けに行く、まあ無事かは別として。


第二案は魔王のところへ乗り込むのは同じで、そこで魔王を生かすか生かさないか、これは重大なところだ。俺はすでに一人の魔王に眼をつけられているが今回の魔王が以前と同じ魔王だった場合、殺してしまってもいいんじゃないだろうかと思う。こういった襲撃は俺の趣味に合わない、いや俺が策を弄して自ら起こすんだったらいいんだけど、知らない所で勝手にやられるのは非常に嫌だ、という理由から殺す。そして違う魔王だった場合、生かす、さっきの話と矛盾しているんじゃないか、と思うかもしれないが、もし違う魔王なら殺す前に十分遊んでから殺したいからな、まあこれが第二案ってところから。


それで第三案なんだが…このまま帰る、というのはどうだろうか。いやというのもさ、俺、キャッタナ大陸でいろいろ準備している途中だからこのまま帰ってもいいかなーと、思うわけですよ。


さてどうしたものか。


俺の言葉を待っているのか、誰も口を開こうとしない。


「えーと、それじゃあいろいろと頑張ってくれ、俺も結構忙しいのでそれではさよなら」


というわけで結論は、帰ることにしました。


「え!?」

「ちょっ!」

「アキハさん!?」

「そんな!」


ソファから立ち上がり扉へ向かうために背を向けたところで後ろからいろいろな反応が帰ってくる。


まあ、普通はここで「ひどい奴等だ許せない!連れて行かれた職員は必ず助け出してみせます!」…とか言うんだろうな、普通の勇者様は。…しかし俺がそんなこと言うと思ったか、バカめ!


俺の後ろには夜とノーメンも遅れることなく立ち上がりついてきている。反応仕切れなかったのはフェレサだけのようだな、さすが夜とノーメン。


「フェレサ帰らないのか?置いていくぞ」

フェレサは依然としてソファに座ったままだ。


「そんな!このまま放っておくなんて私には出来ないよ!」

まあ、そう言うとは思ったが。


「それではどうするのですか、フェレサ?貴女一人に何が出来るのです」

俺が言葉を発する前に夜が口を開いた。


「それは…」


「何も出来ないのに、どうするつもりだったのですか。もしかしてアキハ様のお力に頼ろうとでも思っていたのでしょうか」


「違う!私は四人で協力して…」


「はあ…そもそも、協力というのが間違っているのです。私達三人とアキハ様では釣り合いません、もし、貴女がこの街の為に何かしたいのでしたらここに一人で残りなさい、私達はキャッタナ大陸に戻ります」


うわお!夜さんとんでもなく辛口っす、今のでフェレサ黙っちゃったな。まあしかし、夜の言葉も正論だと言えば正論なんだが。


「それでフェレサ、どうするだ?お前はここに残るのか」


「私は…」


ガタンッ


今までずっと黙って俯いていたサラがいきなり席を立った。

なんだ?どうしたんだ。


席を立ちそのまま俺の方へ向かってくる。…そして俺の前まできて立ち止まった。


「なんだ、どうしたんだサラ」


ガシッ


「「「ッ!?」」」


「な!?」


「サラ!?」


えっと、現在、俺はサラに抱きつかれております。いや、もちろん避けることもできましたよ、そうしなかったのは俺が男だからです。嘘です。そういうわけではなく、この行動の真意を知りたかったからです。


「なんだいきなり、どうしたんだ?」


「っ、す、すみません…」


弱々しい声で謝罪を述べ俺から離れた、と思ったらそのまま俺の前で膝をつき頭を下げてきた。いわゆる土下座をしていますねこの子、なに、どうしたの一体。


しかし土下座か、久しぶりに見たな。前に見たのは少しだけ一緒に旅をした冒険者パーティのシッタがやっていたのだっけな。いや、あいつも結構面白い奴だった〜。いや、フェレサの土下座は記憶にございませんよ。…と、また思考がずれたな、今は目の前のことに対処しないと。


頭を下げたままサラが言う。


「つい先日も…救ってくださったのに、図々しいお願いだとは…わかっています。ですが、ですがどうか、私の姉を…ギルドの同僚達をお助け下さい、お願い致します」


顔は下を向いていて見えないがサラは泣いているようだった…。



ーーーー俺の目の前には頭を下げるかつての仲間、ユフィ…


「どうか、私の家族を救ってください…お願いします勇者様!ご恩には報います。だから、どうか……」



ーーー「アキハ様、どうかなさいましたか?」


「いや…なんでもない…」

俺は今、幻覚を見ていたのか…。本当に何なんだよ一体、この世界に戻って来てからあいつらの事を思い出してばかりだ。


「夜、ノーメン、行くぞ。キャッタナ大陸に戻る」


そう言って扉を開ける。


「そんな…」


「アキハさん、見損なったよ!」


俺に向かってフェレサが叫ぶ。


見損なった…か。

「俺に失望したか、フェレサ。なら最初の約束通り、ここでお前との旅も終わりだな、じゃあなフェレサ」


ガチャ、バタンッ!



辺境伯の屋敷をでた後、俺たちは街を適当に歩いている。


「主様、あれで良かったのでしょうか?」


「ノーメン、少し黙りなさい。貴方は空気を読むというのを知らないのですか」


「す、すみません」


俺の後ろで二人がなんか話しているがよく頭に入ってこない。ちっ、面白くない。なんなんだよ全く、全然面白くないぞ。思い出したくない記憶を思い出すし、どうなってんだよ、はあ、なんなんだよこの感情は。


…思考が感情が、本当の俺がどれなのかわからなくなってくる。


「夜、ノーメン、お前ら少しこの街にいろ。俺は用事が出来た」


「え!?」


「はい、お気をつけて」


眼の色を緋色にし、能力を使い転移する。


転移する場所?もちろん、あの魔族がいる魔王城だ。

魔族の顔はシルさんの記憶で確認した、多分行けんだろ。


そして俺は夜とノーメンを残し、魔王城へと転移した。





秋くんが転移した後、空気が読めないノーメンさんは夜さんにみっちりお説教をいただきましたとさ…

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