襲撃の報告
昨日は試験が終わった後宿へと戻り、まず治癒魔法でノーメンの身体的回復を行った。まあ宿に着く頃には自己回復能力で大体の怪我が治ってしまっていたけど。回復が終わった後は各自部屋に戻って一人の時間を過ごした。夕食の時間、食堂に行くと既にディルが夕食の準備を終わらせて待っていた。ディルもまあまあ怪我をしていたがSSSランクだけのことはありやはりもう完全に治っているようだ。
そして全員が席につき夕食を食べ始めたんだが途中からディルが純度の高い酒があると言ってそれを持ち出して飲みはじめた。俺、夜、ノーメンはなんともなかったんだがその酒を持ち出したディル自身とフェレサは酔っ払って完全にテンションがおかしくなっていた。
途中からなんか妙な踊りをやり始めるなどめちゃくちゃだった…。
結局最後は二人を気絶させそれぞれの部屋へと放り込んでおいたんだが。
そして今日は四人でギルドにノーメンの冒険者カードを受け取りに行く。まあ登録には細かい書類なんかもあると思うが今日は特に急いでやらなければいけないこともない。それに当初の目的のここの領主、つまりルサルファ王女の信頼と信用を得るための策はしっかりと準備を進めている。まあ成功するかは別として…。
しかし…。
「フェレサ、お前大丈夫か?」
「う、うん。もう少しすれば治るよ」
フェレサは今二日酔いだ。宿で待ってろと言ったのについてきた。一人は淋しいんだとさ。
「フェレサ、近寄らないでくださいね。酒臭いです」
「ひどい〜、ウプッ」
「うわ、今吐きそうだったじゃねえか」
はあ、仕方ない。俺はフェレサに状態異常を直す治癒魔法をかける。これは身体的損傷を直す場合にかける治癒魔法より高度な魔法だ。理由は単純で状態異常の方が体に与える影響が複雑だからだ。そのため魔法陣も結構複雑になってくる。だからフェレサは使えないんだろう、使えたら自身にかけてるだろうしな、それに状態異常は普通薬草などを使って治すしな。
そしてもちろん魔法陣は視認できないように細工をしてある、街中で魔法陣は目立つだろうし。
魔法をかけ終えるとフェレサの顔色が良くなりはじめた。
「ん!?あれ!なんか治ったみたい!さすが私、回復が早い」
バカだなやっぱり。
「治ったんだったらさっさとリサルムのところに行くぞ。もう冒険者ギルドは目の前だ」
「あ、本当だ。結構早かったね」
この扉を開けるのも二度目だな。
ギィィ…
ギルドの扉を開け中へと入る、もうすでに一度来ているので受付の位置はわかっているしな、俺は『ギルド長』と書かれた受付へと向かう。
受付に名前を言えば通れるようにしておくと言っていたが、
「ちょっといいか、ギルド長と会う約束をしているんだが」
「名前をお願いします」
「アキハだ」
「アキハ様ですね、ギルド長から承っております。それではご案内させていただきます」
そして前回同様ギルド長の部屋へと案内される。
コンコン
「失礼します。お客様をお連れしました」
反応がない、というか中から話し声が聞こえるな。ちょうど取り込み中だったのか。
ガチャ
扉が開き、ギルド職員らしき人が部屋から出てきた。
「あ、すみません。もう終わりましたので」
そう言ってギルド職員は下に降りていった。
開けられた扉から中へと入る。ここまで案内してくれた職員は俺たちが中に入ったのを確認し部屋の外に出ていき扉を閉めた。
そしてギルド長は山積みされた書類が置かれる机の上でなにやら書いている。やっぱり仕事中だったか。
「仕事中だったか?」
「いえ、ちょうど休憩に入ろうと思っていたところです」
そう言ってソファに移るギルド長、俺たちもソファへと座る。
「それで、さっきのはなんだったんだ。結構緊急な報告だったのか?」
「はいまあ、先程の職員はこのギルドの情報部の職員でして、他大陸の情報などを管理させ、報告するという部署なんです」
「それでその職員が何を報告しに来たんだ?」
リサルムの表情が一瞬強張る。
「…トロスト王国は知っていますか?」
「知ってるぞ、ていうかこの大陸に来るにはあそこの港町を利用しなきゃいけないだろ」
「そうでしたね、それではソーラスという街の名前は…」
「知ってるけど、というか俺達そこに行ったことあるし」
「そういえば言っていたね、ギルド長のシルベルさんとも会ったんだよね」
「ああ、そういえばフェレサも知ってんだったな、それでそのソーラスの街がどうしたんだ?」
「私も先程報告を受けたばかりですので、詳しくはわかっていないのですが、…どうやら三日前に魔族の襲撃を受けたようなんです」
まじか!…しかしなんでソーラスの街を狙ったんだ。街単位で狙ったとすれば、その街に何か目的があったと考えるのが普通だが…。
「それでリサさん、街の被害はどうだったんだい?街は無事なのかい」
フェレサもソーラスの街にはシルさんの他にも知り合いがいると言っていた。やはり心配になるか。
「すみません、まだ詳しい事はわかっていないんです。ただかなりの被害が出たと、今は破壊された街の修繕作業に取り掛かっているようです」
「そうなのかい、それじゃあ詳しい事は分かり次第教えてもらってもいいかい」
「はい、すぐに知らせます」
ソーラスの街が魔族の襲撃にあったか…ただこの場合は戦争には発展しないんだよな。しかしどうやって魔族達がソーラスの街に現れたのか気になるな、ソーラスはまあまあ海から離れているし、やはり能力か、それとも魔道具か。
「というか、今日はノーメンの冒険者登録に来たんだったな。それじゃリサルム、よろしくな」
「はいそうですね、それではこれが冒険者カードです。そしてこちらに必要事項の記入をよろしくお願いします」…
…その後は大して時間もかからず登録は完了した。ギルド長もかなり忙しそうだったのですぐにギルド長室を後にした。
冒険者ギルドを出た後、フェレサの表情は優れない、やはり心配か、今すぐソーラスへ行きたそうだな。
そういう俺もソーラスに今すぐ行きたい。理由?それはもちろん心配だからではなく、こんな面白そうなことがなぜ俺の滞在中に起こらなかった!俺の知らないところでこんなに面白そうなことが起こっていたとは…。
俺が戦った魔族ってあの白衣野郎だけだし、まあその親玉の魔王とは戦ったんだが。
しかし、どうしよう、行っちゃう?行っちゃいますか?よし行こう。
「フェレサ、そんなに心配か?」
「うん、やっぱり…ね。結構お世話になったからさ」
「それじゃあ行くか?」
「どこに…」
「もちろんソーラスにさ」
「でも今から行くとかなり時間がかかってしまうんじゃないかい」
「いや、すぐだ」
「え?…」
俺は眼の色を緋色に変える。そして能力を使い俺含む四人をソーラスの街に転移させた。




