試験の結果
ズゴォン!!
…ノーメンに今回の試験についての説明を終えたギルド長のリサルムは俺たちがいる闘技台の上へ来ていた。ここからノーメンを見るようだ。
そして、リサルムの開始の合図で両者の戦闘は始まった。
現在、ノーメンは素手でディルは剣を使って闘っている。先程からノーメンとディルの攻防が繰り広げられているが今は両者ともに様子見を含んでいるようだ。
「それでリサルム、今回のこの試験の内容は?」
「特にこれといった細かいルールがあるわけじゃありません。ディルを気絶、もしくは闘技台外に出した場合は無条件でSランクに合格と告げてきました。もし勝てなくても強さを見てそれに見合ったランクの合格にするとも。まあとにかく細かいことは気にせずディルと闘って下さいと言ってきましたよ」
「リサルムはノーメンがディルに勝てると思うか?」
「ディルは強いです。私も彼の強さの全てを知っているわけではないのでなんとも言えませんがSSSランク冒険者はギルド総長に選ばれた者、その実力は人智を超えています。まあ私はディルが闘っているのを何度かまじかで見たことがありますので結構目は慣れていますが」
やはりギルド総長ってのも気になるが、それよりもこれだけの実力者がいながら勇者を召喚する必要があるのか?
「なあ、冒険者は戦争に加わったりしないのか?」
「冒険者ギルドと各国は対等な関係です。冒険者達に国から命令を出すことは出来ません。冒険者が国の為に動くことはないと思います」
「なら出身国ならどうなんだ?冒険者である前に国民だろう」
「それもありません、戦争に参加するのはその国に所属する兵士など志願した者たちだけなので国民が強制的に戦争に駆り出されることはないんです、これはどの国も同じです。四種族間で定めた協定の内容にも含まれているので」
「へえ、そうなのか」
「そもそも、冒険者が国家間の戦争に参加、そして国が冒険者に参加させることは禁止されています。もし冒険者が国家間の戦争に参加した場合、登録から除名されます」
「じゃあ魔族との戦争はどうなんだ?」
SSSランク冒険者が戦争に参加するなら勇者がいなくともなんとかなるんじゃないか。
「魔族との戦争は例外です。魔族との戦争は4種族と魔族の戦いですので志願さえすれば戦争には参加することが出来ます。それに戦争ではなくとも自ら魔族が暮らすサターナ大陸に乗り込み魔王に挑むのは別に構わないんですよ、それで戦争に発展することはありませんから」
「何故ですか」
俺とリサの話を聞いていた夜が聞いてきた。
「魔王達も分かっているんです、一人で挑んでも4種族全てを敵に回した場合勝てないことは。起こりうる戦争は幾つかのパターンがあるんです。まず1つは複数の国家と魔王の戦争、1種族と魔王の戦争、全種族と七夜の魔王の戦争、最後に言った戦争、つまり大戦が起こったのはもう何百年も前ですけど」
「その結果は?」
「4種族の惨敗でした。たくさんの犠牲を出したにも関わらず七夜の魔王は一人しか倒せませんでした」
なんだそれ力の差が大きすぎないか、それなら勇者を召喚したくもなるが、その頃はSSSランク並の実力者がいなかったのか、それとも魔王達のレベルが高かったのか、しかしこれならいつでも魔王達は4種族を滅せたと思うんだが。
いや、そもそもなんで4種族と魔王達は争っている、その原因はなんだったんだ?かつては良好な関係を築くことが出来ていたんだろう。
「なあ、そもそもなんで4種族と魔王及び魔族は対立してんだ?なんか原因があったのか」
「詳しいことは分かりません。ただ魔王と4種族が良好な関係を保っていた時代に何かがあったとしか、それが原因で関係は壊れ戦争に発展しました」
「詳しい原因がわからないのによく戦えるな、戦う理由なんてないだろうに」
「戦争をしすぎたんですよ、殺し殺され、そしてその結果憎しみを増やし、それが現代に至るまで受け継がれてしまったんです。本当に悲しいことですよね」
確かにな、それはどの世界でも同じことだ。今まで見てきた世界でもそれは変わらなかった、どこにいっても争いは止まなかった、何をしても望んだ平和は訪れなかった。
まあ正直どうでもいいですよね、この世界の国が、種族がどんなことになろうが、どんな結末を迎えようが俺が楽しければなんでもいいんです!
というわけでノーメンの試験を見ましょう、つい話を聞き入ってしまったが…。
ドゴォン!!
今の音からもわかるが結構激しい闘いだ、両者とも魔法を使い始めている。今はいい勝負をしているように見える、がしかしやはり経験がものをいうのかディルの剣技や闘い方にノーメンが徐々に押されている、そろそろスキルを使うんじゃないか。
「ノーメンさんかなりやりますね、これならSランクでいいと思います、というか強すぎます」
「お?それじゃあ合格ということか」
「はい、正式に上に申請しようと思います」
「それじゃああの試験は終わりか?」
「いえ、ここまで闘っているので最後まで闘わせてあげたほうがいいですかね」
「そうか」
まあノーメンの合格に対しては心配していなかったが、流石SSSランクと言うべきだな、これは夜ともいい勝負ができるんじゃないか、…いや無理か、夜はまだ全力で闘ったことはないだろうがその身体能力はたとえSSSランクとは言え敵わないだろう。
その瞬間、ディルの剣がノーメンを捉えた。
「終わりましたか…」
リサが闘技台へ向かおうとする。
「いや、まだだな」
「え?!」
ディルの剣によって斬られたノーメンは蜃気楼のように搔き消えディルの後ろへ現れる
どうやらスキルを使ったようだな。
ノーメンはかなり魔力を乗せた蹴りをディルへと放つ
あ、ノーメンの敗けだな
ノーメンの渾身の蹴りがディルを捉えようとした瞬間、ディルが流れるように後ろに振り向きながら剣撃を放つ、その剣撃は空間に十字を刻みノーメンの身体を切り裂く。
「ぐはあ」
ノーメンはその場に倒れてしまう。
剣撃を放ったディルはノーメンの後ろにいる。
すれ違いざまの剣撃、今までで最速の動きだった。それは剣速も同じだ、その一連の動きが洗練された美しい剣技だった。
「終わったな」
「そのようですね」
「ノーメンさんは勝てなかったか〜」
先程までずっと試合に見入っていたフェレサが口を開く。
「まだまだですね」
手厳しいですね、夜先生。
「まあ負けたけど、合格は合格なんだろ」
「はい、十分に実力は備わっています。というか十分過ぎますね、あなた達もあのレベルなのですよね?」
「まあ、そうだな」
実際のところは違うが。
「それじゃあ闘技台に行きましょうか」
「そうだな」
そうして俺たちは二人がいる闘技台へと向かった
闘技台の上に着き二人を見る、ディルも結構ダメージを受けている。ただ見ていた限りディルはスキルを使っていなかった。
そしてノーメンだが、俺たちが闘技台へと登ると跳ね起き謝罪をしてきた。「無様な姿を晒してしまい申し訳ありません」だと、まあノーメンの伸びもしっかりと感じられたし俺的には十分だ。それにノーメンは何か能力を隠している、今回使わなかったスキルがあるはずだ、信用しきれないものに自身の手の内を晒すのは嫌だったんだろう、それ以外は手を抜かずに闘っていたし、まあどっちにしろ悔しいだろうな。
「結構戦えていたじゃないか、それに合格らしいから別にいいんじゃないか」
さっきから謝りっぱなしのノーメンに言う。
「それでディル、あなたは異論はありませんね」
「ないない、正直ここまでやるとは思わなかったよ。君強すぎない?それに完全な全力じゃなかったでしょ」
どうやら直接闘っていたディルにもそれはわかってしまったらしい。
「私は勝つつもりで闘いました。それに最初から全力で闘うつもりのなかった貴方に言われたくはありません」
「まあ、試験だからさ、全力では闘わないよ」
「まあいいじゃないですか、とりあえず試験は合格したんですから」
「そうだな。それでリサルム、ノーメンの冒険者カードはいつ貰いに来ればいいんだ?」
「明日来て下さればお渡しすることができますので」
「そうかわかった。それじゃあ俺たちは宿に戻るな、ノーメンの治療もするから」
「わかりました、それではまた明日」
こうして俺たちは二人と別れ四人で宿へと戻った。
ーーー「お疲れ様でした、ディル」
「うん、結構疲れたよ。まさかここまでやるなんて思ってなかった」
「あの四人は全員あのレベルで強いのでしょうか」
「いや、どうだろう…ノーメンさんとフェレサさんの実力は近い感じを受けるけど、ヨルハさんは桁が違うと思う。正直僕でも勝てるかわからない」
「SSSランクにも及ぶ実力なのですか!?」
「うん、おそらくね」
「それではアキハさんは…」
「彼は…よくわからない。彼を見ても全く何も感じなかった」
「何も感じない?」
「うん、全く警戒が出来ないんだ。僕だって結構な強敵と闘ってきている、そこで身につけたものだけど、どんな人間に対しても警戒することは出来るんだ、それは意図的にもね、それにそれなりの強さを持っている者に対しては意図せず自然と警戒してしまうものなんだ、だけど彼は違った」
「何がですか?」
「警戒しようとしても全く警戒できない、それはとても恐ろしいことだよ」
「何者なんですかね、あの人達は」
「そうだね、フェレサさんはともかく、他の3人が纏う空気は異質だ」
今回のSランク試験はノーメンの敗北と合格で幕を閉じた。




