不穏な動き
今回はちょっと短いかもです…
俺たちは今、広場の壁際に設置されているベンチに腰掛けている。
俺たち以外の冒険者はほとんど出て行ってしまった。それというのもおそらくもうすぐここがギルドの貸切状態になるからだろう。ここの広場に入る前の通路にその事が書かれた紙が貼ってあった。ただ貸切はこの広場だけのようでドーム席にはまだ結構人が残っている。試験があるのを知って見るつもりでいるんだろう。
時間は現在1時55分あと五分でギルド長との約束の時間だ。
「ノーメンは大丈夫そうか?」
先程の夜との闘いで受けたダメージは既に回復しているようだ。
「はい、主様の前で無様な真似は晒せません。相手には気の毒ですが、全力でやらせていただきます」
気の毒って、自信満々だな。
「そうか、まあ油断はするなよ。多分相手は結構強いと思うからお前でも厳しいと思うし」
なんせ相手は… 。
「すみません、お待たせしました」
「やあやあ、さっきぶり!」
声がした方、広場の出入り口の方を向くとそこには二人の男女、ギルド長とSSSランク冒険者のディル・クレインがいた。
「え!?なんでディルさんが…まさか!」
フェレサが驚いている。俺はまあ昨日の時点で大体予想はしていたが。
「僕が試験相手の冒険者さ、よろしくね」
「よろしくお願いします」
ノーメンが普通に挨拶をする。
「昨日のギルド長からの連絡の時に知らされてね」
「私からは試験の相手は自分だと言ってもいいですよ、と言っていたのですがね」
「何言ってるんだい。僕がそういうの教えない性格なの知ってて言っているんだから君も最初から教えるつもりなかっただろう」
「そういう事は黙っているものですよ、ディル。あなたは私に借りがあるのですから、ねぇ?」
「あ、はいはい、分かっているよ。今日のだって借りを返してもらうという名目で僕に試験官を任せているでしょう。まあ君達を見てからは是非とも戦いたいと思ってたから良かったんだけど」
「それじゃあ借りを返すためというのは無しでいいんですね?」
「あー!うそうそ、本当は面倒くさいんだよ。ちょーめんどくさい。君に言われたから仕方なくさ」
「それじゃあよろしくお願いしますね、ディル」
今の二人のやり取りを黙って見ていたが…なにあのギルド長凄く怖いんですけど、普通の女ってあんなに怖いの、てかあの冒険者は一体なんの借りを作ったんだよ。いいように言われっぱなしだぞ。
「あーごめんね。それじゃあ試験を始めるとしようか。闘技台は真ん中にあるやつを4つほど集めればいいかな」
「そうですね、多少広い方が良いでしょうし」
ポチ
ギルド長がポケットから取り出したボタンを押す。
ガタン、ゴゴゴ……
ボタンを押したと同時に地面に振動が伝わる。
すげえな。
「この闘技台って動くのか」
「はい。…そうですね、ここのことについて少しばかり説明しておきましょうか」
「お、よろしく」
ゴホン
「まずここには3つの大きな空間があるのは知っていますね?」
「ああ、ここ以外に2つ修練場があったな」
「そうです。ですがここを含むそれらの空間は全て同じ造りになっているんですよ」
ああ、そういうことか。
「つまりこの闘技台を全て移動させ集めれば普通の修練場になるってわけか」
「その通りです。今日はたまたまこの場所が闘技場の役割を担っていましたが明日はまた別のところがここのようになるんです。それにこの闘技台は魔法によって地面の環境を変えることもできます。ただ、1つの修練場でそれを行うと他の二つでは行うことが出来なくなりますが」
「それはまたすごい設備だが、どうしてこのギルドにあるんだ?」
ここが領主が住む街と言っても普通は王都にあるようなもんじゃないか、こういった設備は。
「ここだけじゃありませんよ、他の領主が暮らす街のギルドにも同様のものがあります。王都はこの設備とさらにコロシアムがあります。コロシアムは冒険者ギルドとこの国で管理をしているんですよ」
そんなにいっぱいあるのか。
「まあいずれ王都も行くからコロシアムもその時に見ることになるだろうな」
「王都に行かれるんですか。それはまたちょーーーー」
「はいはいギルド長、そろそろ会話は終わりにして試験を始めようじゃないか」
ディルがギルド長の話しを遮り言ってきた。
「そうだな、説明も聞けたしいいんじゃないか」
「そうですね。それではノーメンさん、試験の内容を説明したらすぐに始めますので闘技台に上がってしまいましょうか」
「わかりました」
元の闘技台4つが集まって造られた闘技台へと上がっていく三人、俺たちも一緒に闘技台まで行き近くの闘技台の上から試験を見届ける。
しかし試験内容によるがおそらくノーメンがディルに勝つのは難しいだろう。両者の魔力量はディルの方が上、スキルは両者とも不明だが、絶対的に対人戦の経験がノーメンには欠けている。その分はやはり相手が有利か、それとも先程夜と闘って何か得るものがあったのか、結局のところはわからないなやっぱり。まあ別に勝つ必要はないんだが、あの二人にSランクの実力があると認めさせることが出来ればいい、…ただ今のノーメンを見る限り負ける気は毛頭ないようだが。
さてさてSSSランク冒険者の実力、楽しみだ。この世界の最高峰の冒険者、その実力はいかに…。
◆
時間は遡り秋達がキャッタナ大陸についた頃…。
サターナ大陸、とある王城のある部屋にて六人の魔族と一人の魔王が会議を行っている。
「それでは軍を動かすことをお許しくださるのですか」
「ああ、いいだろう」
一人の魔族の問いに玉座に座る魔王が答える。
「お前達幹部にこの件は任せよう。だが失敗は許さない、必ず成功させ我を満足させよ」
「はは!必ずや成し遂げて見せます」
そう言った一人は膝をつきこうべを垂れる、それに合わせ他の五人も同様にこうべを垂れた。
〈〈〈魔王ミスティル様の為に!!!〉〉〉
その様子を冷めた眼差しで見る魔王ミスティルは考える。
「(今回この行動は俺の趣味の一環だ。他大陸の種族共と戦争を起こすつもりはない。まあ俺が望もうがどうしようがそろそろ大きな戦争が起こる可能性は大いにある。どうやら人間族が勇者を召喚したようだしな、それが引き金となるだろう。まあだが、それでも俺がやることはなんら変わらない、戦いを挑んできたものは全て討ち滅ぼすのみ、それに今回動かすのは小規模精鋭揃いの軍隊、必ず作戦を成功させることだろう。作戦成功はすなわち俺のコレクションが増えることを意味する。さて今回の件は幹部達に任せたんだ、俺は部屋に戻ってコレクションでも眺めるか)」
…自室に戻った魔王ミスティルはコレクションを眺める、ミスティルの眺める先、そこには棚に並べられたいくつもの透明な筒がある。そして密閉された筒内には何かの液によって満たされ浮かんでいるいくつもの眼があった。その瞳には何も映らず生きていた頃の光は完全に失われている。そう魔王ミスティルのコレクションとは特殊能力を持つ魔眼だ。
魔眼を狙う魔王ミスティル、次に狙う先はエルノイド大陸、トロスト王国の街の1つ、『ソーラス』だ。
「くはは!!さて次の魔眼は俺の気にいるものだど良いんだがな」
魔族達の作戦の準備は着々と進んでいる……。
次回は試験に入れると良いのですが…




