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成長への期待



「アキハさん、そろそろ始めるかい」

準備運動をしながらフェレサが言ってくる。


「ああ、そうだな。夜!ノーメン!二人も準備はいいな」


「はい、いつでも」


「…大丈夫です」


今俺たちは闘技台の上にいる。この広場の真ん中の闘技台がちょうど2つ空いていたのでそこで勝負をすることになった。


一応ルールを設けた。これは形式的には試合だからな、やり過ぎないようにだ。特に夜がな。…まあ大まかに言うとこんな感じだ。


まず勝敗がつくのは相手の降参、または気絶、もしくはどちらか一方が場外に出てしまった場合だ。闘技台は少し段差になっているのでつまりは下に落ちたら負けということだな。引き分けは両者が同時に闘技台から落ちた場合のみだ。後は魔法の使用禁止。魔力による身体強化はありにしてある。まあつまり身体能力や技術、あとはスキルを使用した勝負というわけだ。武器の使用もありにしてある。

ただ今見る限りでは俺含む四人全員が素手だ。


勝負は俺の掛け声で始めることになっている。さてさて面白くなってきたぞ!


「それでは両者!…戦闘開始!」

俺の掛け声とともに勝負が始まる。夜とノーメンの勝負も面白そうだが今は目の前の相手に意識を向けよう、俺はフェレサが戦うところを見るのは初めてだからな、結構楽しみだ。


俺の掛け声とともにフェレサは後方へと一旦下がる。

フェレサの顔は真剣だ、それならば俺もしっかりと相手をしてやろう。できればしっかりとフェレサの実力を計っておきたいものだな。


15パーセントと言ったところかな…。

力加減を確認し俺はフェレサへと駆ける。


どうやら俺の動きをフェレサは目で追えているようだ、ただ身体は反応仕切っていない。俺はフェレサの横腹へ蹴りを入れる。今のままじゃこの動きには対処できないだろう。


ガンッ!


「グッ…」


ズズズズズッ


闘技台から落ちないよう足で踏ん張っている。


「ゲホッ、…流石だね。防ぎきれなかった」


「まあこのくらいは普通だ。どうする今のうちにやめておくか?」


「ふふ、そんなことはしないさ、こんな機会滅多に来ないんだから」


「それじゃあしっかり耐えろよ」


俺は再び走り出す、駆け出した一歩でフェレサに近づく。そうするとやはり目ではしっかり追えているようだ、俺は先程と全く同じ攻撃を仕掛ける。


ドゴォン!


蹴りはフェレサの横腹へ入る。そして再びフェレサは横へと飛ばされる、ただ今回違うのはフェレサが俺の攻撃を防御したということだ。


フェレサは俺の蹴りの直前にぎりぎり防御の姿勢に入っていた。


先程は反応しきれていなかった速さにだ。


「それがフェレサの能力スキルか」


「うん、そうだよ」


フェレサの能力、それは相手の魔力を奪うというもの。

フェレサは最初の腹蹴りの時に俺の魔力を奪ったのだ、それを使用して身体能力を強化したようだな。


「それにしてもかなりの魔力を奪えた筈なんだけど、なんで動けるんだい…」


実際魔力を取られたことにはすぐに気づかなかった。元々の魔力量が多いと奪われてもあまりわからない。フェレサはかなりの魔力量を奪ったと言っているが俺からしたら大した量じゃないのだろう。まあ身体に変化があったわけでもないし。


しかしなかなか面白い能力だ。おそらく相手に触れていなければ魔力は奪えないだろうが、今フェレサの身体能力は俺の攻撃に体が反応するまでには強化されている。一体どこまで魔力を奪えるのか試してもみたいが…。


「それじゃあ今度はこっちから!」


フェレサが俺に向かって駆けてくる。フェレサの動きは先程とは明らかに違う。フェレサの攻撃を防ぎ攻撃を仕掛ける、そこからは両者の攻防が続くのみだ。お互いの拳が蹴りが交差する。


もしフェレサの能力が魔力を無制限に吸収できるものならばこのままこの攻防を続けてもただ魔力を吸収され続けるだけだろう、フェレサの動きもだんだんと俺に追いついてきている。


ただ…奪った魔力を溜め込むなど身体には負担がかかるはずだ。身体とは魔力を収める器であり、それにも限界はある。その器以上の魔力を長時間その身に宿せば器は崩壊する。器は成長によって大きくもなる、ただ今のフェレサの身体はそれに耐えきれないだろう。


フェレサが一旦後ろへと下がる。


「はあ、はあ…これでも…だめだったか」


「そろそろ身体が限界か?」


「はは、まだまだこれからだよ!」

自らの身体を奮い立たすように叫び、俺へと駆ける。その速さは俺が最初にフェレサへと駆けたものと同等だろう、一瞬で俺との距離をつめる。


ガチャ

何かの音が聞こえた。

フェレサが地面に向かって何かを叩きつける。


その瞬間…。


キュイィンーーー

俺の目の前が光に包まれる、これは…閃光弾の類か。腰の袋から出したやつだろう。魔法はなしと言ったが魔道具はなしとは言っていないからな。


ただあいにくこの身体には無意味だ。俺はフェレサの気配を探る、どうやら今の一瞬で背後に回ったようだ。


俺は後ろを振り向き拳を構える。


「なっ!?」

俺が後ろを振り向いたことに驚いたようだ。

フェレサは今にも剣を振り下ろそうとしているところだった。魔道具を出した袋に剣も入れていたのか。


「お前剣も使えるのか、それも見てみたいが…まあそれはまた次回だな」


ドゴンッ!!

「グハァ!」

俺はフェレサの腹を正拳突きした、今のでおそらく場外に吹っ飛んだだろう。


さてさて夜達の方はどうなったかな。


フェレサが放った魔道具による光はだんだんとおさまっていく。闘技台の下を確認するとフェレサが仰向けに倒れていた、少しやり過ぎたか。


「いや…完敗だよ。全然敵わなかった」


どうやら喋れるぐらいには元気のようだ。まあ大丈夫だろうが一応治癒魔法をかけておく。


「あ、ありがと…でもこれくらい大丈夫さ」


「まあ外傷だけでも直しておけよ。体力はあんまし戻らないけど」


「そうかい、ありがと」


「それにしても今の闘い、身体に負担をかけ過ぎじゃないか」


その言葉を聞いてフェレサは苦笑いを浮かべる。


「はは、自分でもそう思うけどね。少し自分の実力を知っておきたくてさ、私はアキハさん達と一緒に旅をしているけどその人達との実力がどの程度離れているのか身をもって知っておきたかったんだ」


そういうことか、まあ俺はともかく夜とノーメンならフェレサは追いつける可能性を秘めていると思う。まあ夜とノーメンも成長するからなんとも言えないがそれでもフェレサの伸び代は大きいだろう。これは夜やノーメンに加えフェレサの成長も楽しみだ。


それに先程は負担のかかる戦い方をしていたがあれはまだ自分の能力を完全に把握し制御仕切れていない、あの能力はおそらくユニークスキルだと思うが、今の状態のフェレサではアルティメットへの覚醒は遠いだろう。まあその成長もこれからが楽しみだと言えるだろうけどな。


そういえば夜とノーメンはどうなったんだろうか。



「アキハ様、終わりましたか」

俺とフェレサの元へ夜とノーメンが歩いてきた。



「おお、二人も終わったのか」


「はい、私達は結構早くに終わったのでアキハ様の闘いを見ていました」


そうだったのか。


「それにしてもノーメン、お前ボロボロだな」

執事服もボロボロだ、後で直しておこう。


「はい、最初の方はスキルなどを使い善戦だったのですが、終盤は夜先生の動きに反応が追いつかず最後は場外です」


「そうだったのか」


その結果は少し意外だった。俺はスキル使用可の状態なら身体能力のみの夜とノーメンはそれなりにいい勝負をすると思っていた。…いやおそらくノーメンは全力じゃなかったんだろう、それか訓練のため自らに制約でもかけて闘っていたか、例えばスキルの使用を絞ったりとか、まあどちらにしろ身体能力だけでノーメンが夜に勝つのは今の所不可能に近いだろう。


「それにしても主様、お二人の闘いはかなり注目を集めていますよ」


「注目?」

そう言われ俺は周りを見渡す。


周りには先程まで闘技台で闘っていた冒険者は誰一人として居らず、全員が壁際まで寄ってこちらを見ている。ドーム席で冒険者達の闘いを見ていたもの達も同じようにこちらに視線を向けている。


なんだこれ…。

「一体いつからだ」


「私と夜先生が闘いを終えた時には既にこの状態でした」


それ俺とフェレサだけじゃなくて君達も注目集めてたんじゃないの。

しかしどうやら目立ってしまったらしい、まあ今の戦闘、大概の奴は動きすら目で捉えきれてないだろうが。


「もうそろそろ2時だしな、ここの広場の脇にあるベンチで休みながらギルド長が来るのを待ってるか」


「そうですね」


「フェレサは自分で動けるか?」


「うん、大丈夫さ。だいぶ回復してきた」


こうして俺たちは勝負を終えノーメンの試験開始をベンチにて待つことになった。


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