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悩まされるギルド長



「はぁ〜、それで何のご用でしょうか?ルサルファからの紹介文には話を聞いてやってくれと書いてあったのですが」


はぁ〜ってため息したぞ、あれ?なんかイライラしてねこの人。


俺は目の前の机の端に目がいく。そこにはぐしゃぐしゃに丸められた紙が置いてあった。あれってもしかして…。


「あのですね、私たちこの街に来たばかりで是非ギルド長には挨拶をしておこうと思いまして、私はSSランク冒険者のフェレサです」

さすがのフェレサもギルド長の態度がおかしい事に気づいたようだな、妙に畏まっている。このギルド長性格きつそうだもんなー。


「まあギルド長に挨拶をというのもあったがそれ以外にもちょっと用事があってな」


「この街に来たばかり?…貴方達はルサルファの護衛の方々ではないのですか。そういえば格好も…」


ルサルファの護衛?何だそれ。


「違うぞ、俺たちは今日この街に来たばかりだ。紹介状に書いてなかったか?」


ギルド長は机の端に置いてあった紙くずへと手を伸ばす…やっぱりあれが紹介状だったのか。


紹介状を確認したギルド長は俯いている。


「す、すみません。しっかり書いてありました。ルサルファからの紹介状と聞いて最初の一行で読むのをやめてしまいました」


なんだ、どういう関係なんだ王女とギルド長。


「そうですか、兵士を助けてルサルファと…それで私に用事とは何でしょうか?」


「実はなこいつ…ノーメンがまだ冒険者登録をしてなくてな、なんとか一気にランク上げらんないかな?」

いちいちランク稼ぐのも面倒くさいのでね、是非ともお願いしたい。



「そう言われてもですね…ちなみにフェレサさんはSSランクと聞きましたがあなた方二人のランクは?」


「二人ともSランクだ。出来ればノーメンもSランクにして欲しいんだが」


「確かにギルド長の推薦ならばSランクにする事も出来ますが私は彼の実力も何も知りませんしね。判断をくだしかねます」


「そうか」

まあそう都合よくはいかないよな。


「う〜ん、そうですね。それじゃあ私が指名した冒険者と戦っていただきます。その戦闘を見て判断するということでどうでしょうか」


「おお!いいのか!?」


「お仲間にSSランクとSランクがいるのです。それなりに信用できますからね。それじゃあ明日またギルドに来てください。このギルドの地下には修練場がありますからそこで試験を行うことにします」


「わかったが、指定する冒険者は承諾してくれるのか?」


「はいそこは心配入りませんよ、私が呼んだらすぐに駆けつけてくれることでしょう。ふふ」


え、何今の笑い怖いんですけど。


「それよりギルド長、名前を教えてくれないかい?」

ギルド長の態度が変わってからフェレサもいつもの口調に戻っている。確かに名前はまだ聞いていなかったな。


「そうですねまだ名乗っていませんでした。私はリサルムと言います。リサで良いですよ」


「そうかいそれじゃあ遠慮なくリサと呼ばせてもらうね。…ところでさっきはなんでイライラしていたんだい?」

それを聞くか、フェレサ。


リサルムの表情が一瞬固まる。


「き、聞いちゃまずかったかな」


「あ、す、すいません。別に大したことじゃないんです。まあそうですね、ルサルファを知っている方になら是非知っていて欲しいです」


「なんだ?さっき言ってたルサルファの護衛となんか関係あんのか?」


「はい、実はですね……」


そこからリサルムが話し始めた事はまああのイラつきも仕方ないと納得するものだった。


その内容はこうだ。まずルサルファとリサルムの仲は1年前から始まったそうだ。リサルムは1年前にこのギルドの支部長に就任したそうなんだが、まずはこの土地の領主へと挨拶に行ったそうだ。つまりはルサルファだな。

相手が王族だということもあり結構緊張していたリサルムだったがルサルファの王族らしからぬ気さくな接し方にすぐに仲良くなったそうだ。

だがそこからが悪夢の始まりだった。

リサルムの仕事がだんだんと忙しくなりルサルファとは会う機会が減っていったそうだ。それでも休日はルサルファと一緒に過ごしていたそうなんだが、その頃からだんだんとルサルファの様子がおかしくなり始めた。まずその変化の兆しが表れたのはリサルムがしばらく会っていなかったルサルファに会いに屋敷へ行った時だった。…屋敷へ入ってルサルファの部屋へ案内されたリサルム、最初の方は二人でお茶を飲みながら談笑していたそうだ。しかしそれは突然起きた。急にルサルファが俯きこんなことを言い始めた。


『ねぇ、私ってあなたの友達だよね、そうだよね。なのになんで会いに来てくれなかったのかな!私が会いに行ってもリサちゃんギルドにいないし、もしかして私を避けてるのかな、ねぇどうなの!』


怖い、怖いよ、なにこれ完全に病んでるじゃん、という感想をリサルムの白熱の演技を見て思った。


まあそういうわけだ。ルサルファは立場上なかなか友達というのが出来なかったそうでそういう関係に憧れ、飢えていたそうだ。そこへリサルムが現れ、仲良くなってくれた。

そしてそのことがあってからはリサルムはだんだんとルサルファと会わなくなったそうだ。現在は全くあっていないそうでたまにルサルファの護衛がギルドへ来て屋敷へ招待しようとするそうだ。ルサルファが直接来ないのは自分が行くと避けられると思っていかららしい。

最近はかなり回数が増えているようで先程もまた来たかとイラついていたそうだ。


それでも完全に拒否するのは悪い気がして出来ないでいる。

そしてリサルムはこの話の最後に『ルサルファと関わりを持ってしまった貴方達も気をつけてね』と言い締めくくった。



…この話を聞いた俺たちは何も言えなかった。まさかあの王女がここまでやばい奴だったとは思わなかった。先程までの態度ではしっかりとした頼り甲斐のある女性としか印象がなかったからな。


でも王女の気持ちも少しは理解ができ…る、なんでも言い合える対等な関係を欲している、王女の立場上それはなかなか手に入らないものなんだろう。それは俺たちと話している態度からも伝わってきた。それがもう少し正常な性格をしていれば手に入ったものを…。


だが俺はあの王女の信頼を得る計画をもう立ててしまったわけなんだが、どうしようか。どちらを取るべきか。…ルサルファ王女との関係は今後この国で楽しむ為には必要な事だ。いや、それとも他の領地に行ってそこの領主と関係を持つか、それかルサルファ王女の性格を矯正するか…どうしようか。



「さっきあった時は全くそんな感じがしなかったんだけどね」

驚きから立ち直ったフェレサが口を開く。


「あの様なルサルファを知っているのは私だけですよ。どうやらあまり親しい関係にない人には普通の態度のようです」


「まあ気をつけることにするよ、それで明日は何時頃来ればいいんだ」

もう話題を変えてしまおう。


「そうですね、午後2時頃来ていただければ大丈夫です。それよりも前に来て修練場を使っていただいていても良いですよ。2時からは貸切にしますけど、普段は誰でも自由に使用できますから」


「そうかわかった。あとついでに宿を紹介して欲しいんだ、どこか良いところはあるか?」


「そうですね、それじゃあここなんてどうでしょう?」

そう言って街の地図を広げたリサルムは1つの場所を指差した。

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