久しぶりの痛み
秋君も眠いとです(-_-)zzz
俺のコピーが連れ去られたのを確認した俺たちは本当に泊まっていた宿に戻ってきていた。
「それではお休みなさいませアキハ様」
「お休みなさいませ主様」
「ああ、おやすみ二人とも」
ガチャ
ここの宿はギルド長、つまりサリファさんに紹介してもらったものだ。俺は今回2つの宿を借りていた。それは昼にサリファさんに条件を出し紹介してもらったものだ。今俺がいる宿は普通の宿だが、先程コピーの俺が泊まっていた宿は冒険者ギルドが経営している宿だ。まあつまり多少の荒事は許容されるということだ。だからサリファさんに宿を紹介してもらったわけだ。ギルド長の紹介であれば結構な荒事でも目を瞑ってくれそうだしな。
ただまあ今回は特に何事もなく魔族達は帰ってしまったわけなんだが…。
そして何故今回俺がこんな面倒な事をやっているかというとそれは俺が今日この町に到着した頃に遡って説明することになる。まず俺たちが馬車庫から冒険者ギルドに向かっている途中のことだ。俺はこの時点で何者かにつけられていることには気づいていた。そしてこの世界に来たばかりの俺を狙うなどつい先日問題を起こした魔族がらみだとすぐに予測はついた。だが目的まではわからなかったから少し探りを入れることにしたのだ。だからそのついでで少し楽しもうかなと今回の作戦を思いついた。
今回の作戦は簡単に言うとこういった内容だ。まず俺は魔族達の目を掻い潜り町中でコピーと俺を入れ替え夜とノーメンと共にあの宿に泊まらせた。ここからの魔族達の行動で内容は変わってきてしまうが最終的には俺はコピーを魔王城へ転移させ魔王と戦わせるつもりだった。それはこの世界の魔王の力を測るためというのが第一だ。そして今回魔族達は俺を連れ魔王城に自分たちで転移したので俺が手を出すまでもなく作戦は上手くいったわけなんだが…。
俺が今回アルティメットスキル【生命創造】で造ったコピーの魔力、身体能力は夜より少し劣る。だが今回コピーには七つのステータスの内の1つ緋色の眼を与えている。そしてもう1つ夜との決定的な違いがある、それは魔法が使えるということだ。あいつは俺の完全なコピー体だ。俺が使える魔法は全て使うことができる。まあ魔力量が少ないから俺が作った魔法など魔力消費の多い魔法の連発はそんなに出来ないだろうがな。
そして今頃コピー体は魔王と戦っている頃だろうが、今回は殺すことが目的ではない。どれほどの力を持っているのかを確認するだけだ。だからコピーには負けそうになったり、相手の力を測り終わり次第こっちに転移で戻ってこいと指示してある
最初はこの部屋でコピー体が転移してくるのを待っているつもりだった。ただ俺も魔王と戦って見たくなってきたのでこれから意識を飛ばします。いや、やっぱり楽しそうじゃん、どれぐらい強いかもこの眼で直接見てみたいしね。
まあ、コピー体とは後で記憶を共有するつもりだったから直接見るのと変わらないといえば変わらないんだけど…まあそこは気分ということですよ
。
あとこの意識を飛ばすというのはコピーだからこそ出来る。そのため夜にはできない。コピーは基本俺の名前を与えるため自我も俺そのものになる。だからこそ出来ることだ。
それじゃあ早速飛ばしますか…。
バタンッ
こうして俺の本体は意識を失いベットの上に倒れた。
◆
「ハハハ!よいぞよいぞ!やはりお前はこの私と戦うに相応しい強者だった」
バンッゴンッバンッ…
魔王ギニィと秋の拳が激しく撃ち合う、それは常人にはその姿を見ることすら出来ないほどの速さの攻防だ。
だが確実に秋はギニィの攻撃を捌ききれなくなってきている。
「思ったよりやるな」
ギニィから一旦距離をとった秋が言う。
「お前もなかなかにやりおる。だがそろそろ終わりかの?先程から押され始めておるではないか」
(まあ、確認はこれくらいでいいか。身体能力の把握は出来た。次は魔法も入れていくか、まあり連発は出来ないし早めに終わらせてさっさと転移で帰ろう)
「御託はいいからさっさとかかってこい、全力でな」
「ははは!その生意気な口黙らせてくれるわ!」
ギニィが駆ける。そのひと蹴りで秋の懐に入り込み拳を振りかざす。
スパンッ!
ギニィの拳が空を切りる。
「ほほう、やはり転移を使えたか。カルムマンをここに転移した時点で気づいてはおったがの」
「獄炎の化身よ、抗う者を食らいつくせ、炎蛇!」
秋が詠唱を唱えると同時に目の前に燃えたぎる炎を身に纏いこの空間全てを覆い尽くすほどの大蛇が現れた。
詠唱の終了とともに炎の大蛇はギニィを喰らう。
グゥァシャーー!
大蛇は咆哮を上げより強く燃え続けるそれはまさしく業火の炎…だが。
シュルルルル………
今まで燃え続けていた炎は突如としてその勢いをなくしていく。
「まさか極魔法まで使うことが出来るとはな」
大蛇はあっという間に消滅し、その中央には無傷のギニィが立っていた。いや正確には消滅とは違う。まるで吸収されたかのような消え方だった。
「やっぱこれではダメだったか。傷1つ出来ないとは驚きだが、港町にいる俺が知ったら喜びそうだな」
「今度はこちらが攻撃をする番だな!」
今までよりさらに早くギニィは秋の元へ駆ける。
それは思考が戦闘からずれていた秋には反応できるものではなかった。
ギニィの拳が秋の顔面へと飛んでいく
ーーーおっ!ちゃんと意識を飛ばせた見た…ドガァンッ!
顔面を殴られた秋は後方へ吹っ飛ばされ、壁に激突する。
「はは、今度は避けられなかったのう」
魔法で強度が上がっているはずの壁にめり込んだ秋。その秋に向けて笑みを浮かべながら言う
ただ秋の方はそんな言葉など全く耳には届いていなかった。
痛ってーーーー!何?なんなの意識飛ばしたらいきなり顔面殴られたんですけど、それにコピー体だからすごく痛いんですけど、こんな痛み久しぶりかも!
はあ…少し悪いタイミングで意識を飛ばしてしまったみたいだ…最悪だ。
だがコピー体とは言えここまでやられているとは…それに記憶を見るに結構な強さじゃないか。これは嬉しい情報だな。
しかし…まだ顔がジンジンする。
「よいしょっと」
壁にめり込んだ身体をはずして再び魔王の元へ歩いていく
「まだ戦意はありそうだな、良かったぞ」
嬉しそうな笑みを浮かべながら俺の様子を伺う魔王
こいつは戦闘狂っぽいな、まあその方が俺も嬉しいけど。
ただまあ、残念なことに今回は既にもう俺に戦意は無いんですけどね。
多分俺がこのまま魔王と戦い続けても戦闘が長引くだけで決着はなかなかつかないだろう。
この魔王はまだ力の全てを見せている訳ではなさそうだが…やっぱどうしようかなこのまま力を見せてくれるまでねばってみるか、いや、でもなあ、このコピー体じゃ魔王の本当の力を出させるのにも時間がかかると思うしな。
「というわけで、さらば魔王!」
「え!?ちょっ…」
こうして俺は魔王との戦闘を放棄して宿に転移した。
今回作中で極魔法という名称が出てきましたがどこかで魔法の位についても説明を入れるつもりです




