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捕らえられた秋

少し場面転換が多いです






「そうだったのですか、魔物を討伐できて良かったです」


調査報告はほとんどフェレサがおこなった。ただ調査内容にあった魔物の事は討伐した俺が話した。


「討伐はできたが、魔物は完全に消滅してしまったからな、詳しいことはよくわからなかった」


「そうですね。ですが今回は冒険者の中に被害を受けたものがいて調査を依頼したので討伐出来たのならそれが一番です」


「まあ、そう言ってもらえるなら良かったよ」


「それにしても凄かったよアキハさん。魔物の戦闘もそうだけど、アキハさんのおかげで死者の姿の確認もできたしね」


「そうですね、前々から死者の目撃は多かったですからね。今回事実が判明したので、あの土地についての詳しい調査を実行しようと思います」


「役に立てたのなら何よりだ」


「それじゃあ、調査報告はこれでいいかい?」


「はい、ありがとうございました。依頼の報酬は下の受付で貰って下さい、今回はどうするのでしょうか?アキハさん達にも報酬は配分するのでしょうか?」


「いや、私はそのつもりだったんだけど…」


「俺が断ったんだ」


「いいのですか?今回魔物を討伐したのはアキハさんですから報酬をもらう権利はありますが」


「いや、大丈夫だ。今回のことはいい経験になったからなそれでい良かったし、まあ宿を紹介してもらえれば十分かな」


「宿ですか?それなら受付に聞けば宿場を教えてもらうことができますが」


「いや、事情があってだな。ちょっと条件があるんだ」


「条件ですか?」


「ああ、実はな…」







秋達がシオラスについてから時間が経ち、現在は昼の喧騒も静まり返り静寂が包み込む真夜中。



港町シオラスを闇に紛れ疾走する五人の影。



「ターゲットの泊まった宿は確認したな。作戦は他の者に気づかれず就寝時に睡眠薬を投与。その後、転移の魔道具で魔王城へ転移する。もしターゲットの仲間が邪魔に入った場合は殺してしまって構わない」


「「「「了解」」」」



「それじゃあ各自配置につけ。ターゲット確保は俺が行う。周囲の警戒は頼んだぞ。それでは散れ!」


こうしてそれぞれがそれぞれの役割を全うするために配置についた。




秋が寝ている部屋、天井から忍び込み侵入した一人の男。


「どうやらしっかり寝ているようだな」

顔を確認し、本人かどうか確認をする


「よし、まずは睡眠薬を…」


懐から出した注射状の睡眠薬を腕に刺し投与する


「これで後は他のものに合図を送るだけだな」


そう言って男は魔道具で他のものに合図を送る、数秒後には全員が部屋に姿を現した。


「どうやら上手くいったようだな」


「そちらはどうだった」


「他のもの達もぐっすり眠っていた。確実に気づかれてはいないだろうな」


「そうか。それでは早速魔王城に転移する。これで任務は完了だ。」


「思ったより簡単だったな」


「まだ気は抜くな。転移するまでは周囲を警戒しろ」

そう言って最初に部屋に侵入した男は懐から転移の魔道具を取り出す。


「ターゲットもしっかり確保した。それでは転移する」


男が魔道具を発動すると男達の足下に魔法陣が出現する。

魔法陣が消えると、そこには男達の姿はなくなっていた。








男達が転移したのはギニィシルヴィアが住まう魔王城の王の間、そこにはすでに魔王ギニィが待っていた。



「おお、帰ったか。どうやら上手くいったようだな」


「はは!ご命令通りターゲットを捕らえて参りました。ただ、作戦遂行時に睡眠薬を投与したので意識はありません」


「よいよい、連れてきたのならそれでいい。ご苦労だった。褒美はグレイリンから貰うがいい。もう出ていってよいぞ」


「「「「「はは、有り難き幸せ」」」」」


そうして五人は秋を部屋に残し王の間を出て行った。


五人が出て行ったことにより王の間はギニィと秋の二人きりになった。


「さあ、これで二人きりだぞ人間!もう寝たふりはよせ」

意識がなく倒れている秋へギニィが叫ぶ。


「おっとばれていたのか」


意識がないはずの秋が起き上がる。


「私の眼は誤魔化せんよ」


「結構うまく寝たふりできてるつもりだったんだがな、ばれていたか。まあそれはいいんだが、どうして俺をここに連れてこさせた」


「その問いに答える前に1つ聞いても良いかの」


「なんだ」


「カルムマンを倒したのはお前か?」


「誰だカルムマンって?」


「名乗ってはいなかったのか、それでは言い方を変える。最近人間の町である実験をしていた魔族と戦わなかったかの?」


「ああ、そういえばやったな。もしかしてお前ってあの魔族のボスか何かか?」


「まあ、そうだがの。今回はそんな事はどうでも良い、私はカルムマンを倒したお前と戦いたいだけだからな!」


「随分と好戦的だな。まあ俺もわざわざここまで来てやったんだ。そのボスと早速戦えるんだったら喜んでやらせてもらうさ」


そうして両者は戦闘態勢に入る。


「わざとか、お前が寝たふりをしている時点でわかっていたことだが、その理由もぜひ聞きたいことだな。わざわざ敵に囲まれる場所に来るなど、無謀としか言いようがないからの」


「俺を負かしたら教えてやるからさっさと始めるぞ。その代わりこの部屋が壊れても知らないからな」


「その心配は要らんさ、この部屋の壁は魔法で強化されてるからの」


「それじゃあ不十分だと言っているんだがな、まあ戦った方が早そうだな!」


「そうだな、それでは始めようかの!」


こうして二人の戦闘が始まった。








時間は少し遡り秋を狙った男達が魔王城に転移し誰もいなくなった部屋。




「アキハ様、よろしかったのですか?アキハ様を狙った輩を見逃してしまって」


「今回は良かったんだよ、それに真実を知った魔王があいつらを生かしているかはわからないからな」


「主様、楽しそうですね」

ノーメンが主を見ながら呟く。


「アキハ様は面白さを求めていらっしゃるのです、ノーメンもいち早く理解しサポートをできるように」


「はいわかっております」


「あとは俺のコピーが指示通り上手くやってくれるだけだな、後で少しコピーに意識を飛ばしてみるか」


「それでは泊まっていた宿に戻りましょうか」


「そうだな、明日には出発するから二人も休んだほうがいいしな」


「「それはアキハ様(主様)も一緒です」」


「いや、まあ俺も少し意識を飛ばしたらすぐ寝るって」


「しっかり寝てくださいね、主様」

「アキハ様は面白いことが目の前にあったら寝ないで楽しんでしまいそうです」


「俺だって面白さより寝たい時ぐらいあるさ」


こうして俺たちは宿に戻った…。



次回は戦闘から始まりそうです

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