原因は、俺?
すみません、まだ旅立ちません....
とある王城の会議室にて。
……「何故、勇者が8人いる!召喚されるのは7人だったはずであろう!」
「やはり勇者の偽物が混じっておるのではありませんか?」
「そんな事はありません!全員のステータスの種族名に勇者と入っているのをすでに確認したではありませんか!」
「では、なぜ8人いる!」
「それは...」
「少し落ち着いてください、セレナ様。それに公爵も」
「しかしだな...」
「今はそのようなことを争っていても仕方ありません
。これからどうするのか、それがいま最も重要な案件なのですよ」
「わかったわよ。もう大丈夫だから話を進めてちょうだい」
「ちっ…」
「では、話を進めさせていただきます」……………
は〜いは〜い、僕でーす。先程まで天国に召される心配をしていた僕でーす。
今僕の目の前では、議論?と呼べるかわからないけどとにかく熱い話し合いが開催されてるよー。どうしてこうなったかというとさっきも話に上がっていたけど、どうやら召喚されるはずの勇者は7人だったのに手違いで一人多く召喚されちゃったみたいなんだよ…ははは、笑えるよね。しかもそれ、もう気づいた人もいると思うけど、……僕で〜す。どうやら召喚される時に押し返されてたのは、一人多かったからみたいなんだよ〜本当に召喚拒否されちゃってたなんて笑えるよ、本当……。
時間は少し遡り、勇者召喚の間にて。
「セレナ様、今回は大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫よっ!今回はしっかりと準備をしたもの」
「しかし…前回も同じようなセリフを言っていたような気が…」
「私は過去の失敗は振り返らないの。それに今回は前回手に入らなかった神涙の結晶と呼ばれる宝玉があるわ。これは約五十年前の勇者召喚の際に使われた宝玉。これがある限り心配はいらないわ」
「しかもこれ、手に入れるの大変だったんだからね。三十年前に消失してから行方不明になって、今回は闇市に出回ってるて噂をたまたま聞いたからいいものを…」
「そうですが…今回は多くの貴族や権力者、公爵家とそれに兄上様や父君、母君までこの儀式には御出席なさるのですよ」
「わかってるわよ、マークは心配性すぎるのよ。もう少しどんと構えてられないの」
「そんなことを言われても...」
「さあ、そろそろ始まるわよ」
◆
『皆様、今回はお集まりいただきありがとうございます。
今回は我が妹、セレナがこの勇者召喚の間にて召喚の儀を執り行います。どうか儀式の際は空間の調和を乱さぬようお静かにお願い致します。
それではセレナ、後はよろしく頼むよ』
「はい、兄様」
『今、ご紹介に預かった第二王女のセレナ・エレスタ・ベラスフィオーレ、と申します』
〈〈〈おお〜!!〉〉〉
(あれが人前には滅多に姿を表さないと有名な第二王女のベラスフィオーレ王女殿下か)
(なんと美しい)
(これほど美しいとは)
『え〜、先ほど兄様が仰ったようにように、くれぐれも儀式の最中はお声や 音 などを出さぬようお気をつけください』
〈〈〈…………〉〉〉
『それでは、そろそろ儀式を始めさせていただきます』
........................ . . . . . . . . . .
俺は、今暗闇を歩いている。爺さんと別れて門に入ってから10分ほど歩き続けたが未だに出口が見えない。…そして今大変精神状態が不安定です。
原因は俺がついさっき言ったこの言葉です。《てかこれ本当に天国につながってねえよな》…です。…このいかにもフラグ的言葉により俺は今天国への道を歩んでいるのではないかと不安なのですよ。正直、あの言葉はふざけ半分冗談半分でしたよ。しかしなんですかこの状況、どこへ向かっているんですかこれ、今まさに天国へ召される途中なんですかね僕は。ほんとどうなってんだよこれ…
この思考をさらに10分ほど繰り返しながら歩いていると、少し先に一筋の光が見えた
「あっあれは!出口か!」
まさか俺はついに天国に辿り着いてしまったのか!?
「しかしこれ、出るしか選択肢ないよな」
たとえこの先が天国だったとしても、俺はそれを受け止めて生きていこう。いやもう天国だったら死んでるのか…
空間の裂け目のような出口を抜けると天国…ではなく、(ここどこ?)なんか西洋の祭壇のような場所に立っていた。
〈〈〈おおー!成功だ、成功したぞー!!!〉〉〉
「セレナ様、やりましたね!!」
「ありがとう!マーク」
俺が立っている祭壇を中心にして囲むようにスタンド席のような場所があり、そこには多くの人々が総立ちになって拍手をしている。そして目の前には握手をし喜び合う男女。
とりあえず天国じゃなさそうだな…
「よくやったな、セレナ。おめでとう」
「おめでとうセレナ。よくやったわね」
祭壇にやけに豪華な服を着た、二人の男女が上がってきた。
「お父様!お母様!ありがとうございます!」
「マークも、娘の手伝いご苦労であったな」
「ははっ!ありがたきお言葉です」
祭壇に登ってきた男女は祭壇にいた男女に声をかけた後、こちら側へと向き直った。
「勇者様方、よくぞいらっしゃいました」
「おもてなしの準備はできておりますわ」
「聞きたいことなどもあるとは思いますが、それは後ほど。とりあえずは部屋へ案内します」
「どうぞ、こちらへ」
勇者様方?と思い横を見てみるとそこにはコンビニにいた7人が横一列に並んでいた………あー、そう言えば俺以外にも召喚者いたわ。
すっかり忘れてたな。にしてもみんな意外と落ち着いてんな。やっぱあの白い空間でいろいろと説明受けたのかね?
そう思っていると最初に祭壇にいた男女がなんか焦っている。特に男の方が。
(セレナ様、召喚されるのは7人だったはずでは?)
(そうよ、宝玉〈神涙の結晶〉を使った儀式では7人が限界だったはずよ)
(しかし、勇者様方は8人いらっしゃいます)
(そうね、何故かしら)
(いや、何故かしらって、そんな軽く仰って…)
ーーーーという具合でスタンド席っぽい所にいた人達が去ったあと、あの二人が話し合っていたことが結構問題だったようですぐに発覚し、勇者全員のステータスプレートが確認された。
そこで全員、種族が勇者であることは確認されたが、どうやら7人ではなく8人いることが問題らしく、結局は儀式の重要人物や関わった人などを集め会議を開くことになり現在に至るわけだが……
「それでマーク、原因はなんだったのかしら」
「原因はわかりかねますが、おそらくなんらかの結果誰か一人が無理やり召喚されてしまったのかと。召喚の儀が終わった後、宝玉は粉々に砕けてしまいましたし、伝説では勇者は7人しか召喚されないはずであったことから、そう考えられるかと思われます」
ちなみに話し合っている連中は俺含む勇者達を長方形のテーブルを挟んで正面に8人両横に4人4人で座っている。
この会議に参加しているのは、当事者の俺たち勇者、それと王と王妃、それに第一王子、第二王子、第一王女、そしてセレナと呼ばれていた第二王女とマークと呼ばれていた男(後でわかったが、第二王女の執事だそうだ)。それと公爵家当主が四人、に貴族数名で、合計24名が参加している 。
ちなみに会議の進行をしているのはマークだ。
でだ、俺はこの途中に気づいてしまったわけだ。これ余計に召喚されたの俺じゃね…と。
で、いままさに話し合いの真っ最中なわけだが。
「まず勇者様方の扱いです、8人が全員勇者様だということは確認済みです。ここまではいいですね?そしてここからが本題です。伝説の中では勇者は7人だった、しかし今回は8人召喚されてしまった。この誤転移の勇者を勇者として受け入れるか否かです」
どうやら8人全員が勇者であってもその人数に問題があるようで、今現在は伝説に沿って勇者は7人しか存在してはならない、誤転移の勇者を突き止め処分するべきだと言ってる奴らと伝説はあくまでも伝説であり勇者が8人いても問題はないと言っている奴らに分かれて言い争っている。
しかしこれ、召喚された勇者の前で話し合う内容か?
しかも俺、別にこの国のために何かするつもりないし。
そんなことを思っていると、
コンコンッ
「失礼致します、陛下。勇者召喚成功の報せを聞きつけた隣国ハイベルト王国から国王陛下がいらっしゃいました」
「なんだと、随分と早いな」
「お父様、どうするのですか」
「陛下。陛下がお決めになられたことなら皆が従います」
「どうか、ご決断を」
「うむ………」
「お父様、」
「わかった…。我が国は、8人の勇者を受け入れることとする。幸い勇者の伝説と召喚方法が伝わっているのは我が国だけだ。
このことが他国へ漏れぬよう注意するように。無論ここにいる者達は他言せぬように」
〈〈ははっ!!仰せのままに〉〉
こうして結論が出て会議は終わることとなった。
そして今は最初に案内されるはずだった部屋へと改めて案内され第二王女からこれからのことを説明されている。
「まず勇者様方にはこれからお見えになる、ハイベルト王国の国王陛下にお会いになられていただきます。それまでやや時間がありますので、この部屋でおくつろぎながらご自由にお過ごしください。なにか御用がおありでしたら外の使用人にお申しつけ下さいませ。では私はこれで失礼致します」
ガチャ…
早々と出て行ってしまった。
沈黙……
「あ、あの〜、よければ自己紹介をしていかないでしょうか」
声がした方を見るとそこにはどこか気の弱そうな中学生ぐらいの女の子がモジモジしていた。
「そ、そうですね」
「そうね」
「そうよね、まずは自己紹介から」
「そ、そうっすね」
俺も一応返事をしておく。
「いいですよ」
「……別に」
「構わないわよ」
「じゃ、じゃあまずは言い出した私から」
そこから、勇者達の自己紹介が始まった。
「わ、私は、川平 まいです!大学生です」
大学生かよっ!
「昼食を買いにコンビニに来たらこんなことになってしまいました。白い空間での説明がなければパニックになっていたところです。同じ境遇の者同士、協力していけたらいいなと思います…以上です」
やはり他の人も白い空間には言ったみたいだな。
てことは爺さん以外にもああいう存在がいるのか?
「じゃあ、次は私がするわね」
大学生の右隣にいた、今度はちょっと目つきが鋭い眼鏡美女。
「私は日阪 京子。仕事は家庭教師をしているわ。こんなことになったけど、これからよろしくね」
この流れ的にどんどん右に流れていく感じだが、
「つ、次は僕ですね」
これまたザ・オタクといった外見の小デブさんだ。
「ぼっ僕は小田倉 茂史ともっ申します」
うわあ緊張してるな。どもっちゃってるし、がんばれ小デブさん!
「み、皆さんと、協力できたらなと、思っております。よ、よろてぢ…よ、よろしくお願いします//…」
うわ、最後思いっきり噛んじゃったよ、そして恥ずかしいのか小デブさん俯いちゃったし…かわいそうに。
そして、次は、
「草林 猛だ、よろしく」
こちらはまたいかにもヤンキーな金髪ヘアーお兄さん。
「次は私ね、私は木原 夕実。そこの川平とは友達よ、これからよろしく」
ほほう、あの大学生と友達か。それにしては随分と体の成長度合いが違う女性だな 、まあそれと友達であることは関係ないんだけど。
あ、次俺の番か。
「えー、僕の名前は伊月 涼高校二年生です。こんな事態に巻き込まれてしまいましたが、ここにいるもの同士お互いに協力できたらなと、思います 。これからはよろしくおねがいしますね(ニコッ)」……
………はい、俺、盛大に猫を被りました。名前も適当です。がしかしこれは後々大切になってくることなのですよ……乞うご期待!
「じゃあ次は私、私は緋月 溟です。前の人と同い年の高校2年生です。よろしくお願いします」
ほー、俺と同い年か、これまた美人だな。
さて、いよいよ最後はこの人。
コンビニエンスストアの店員さんっだぁー!
なんせ仕事着ですから、この中で特に異彩を放っております。
「コンビニでバイトをしていた、田附 真也です。あっちでは大学生でした。他の人はどうかわかりませんが、俺は絶対に元の世界へ帰りたいと思っています。他の人を無理矢理一緒に帰らせるなんてこともしません。ですので、どうか協力よろしくお願いします」
まあ、いきなり異世界に連れてこられたんだ、帰りたいと思うのが普通か。しかし誰もそのことに触れなかったんだよな、みんな帰りたくないのか?まあ今の言葉を聞く限りではなかなか好感が持てますぞ店員さん。
さて、自己紹介は終わったが、ハイベルトの国王とやらはまだこないのか。また気まずい雰囲気に…お、来たか。
コンコン、ガチャ
「失礼致します、」
第二王女が入ってきた。
「ハイベルト王国国王陛下が到着なされたので、勇者様方をご案内させて頂きます」
◆
「この中に、ハイベルト国王陛下とお父様がお待ちです」
目の前には大きな扉、どうやらここは王の間と呼ばれるところらしい。
「中に入ったら席が御用意されていますのでそこにご着席ください。
では、よろしくお願いします」
ギイィィ
開けられた扉の中へ入ると目の前には8つの椅子が置かれていた。その正面にテーブルがありその奥に二人の男がいる。一人は先ほども見たこの国の国王だ、もう一人は燃えるような赤毛を短く切り揃えた筋肉隆々のいかついおっさんだ。その両脇には護衛が4名ずつ、しかしこの国の国王は見た目は文官タイプだと思ったがハイベルトの国王はまるで正反対のタイプだな。
「だあっはっはっ!!よく来た勇者達よ」
「すみませぬな、勇者様方。取り敢えず席へおつきくだされ」
そう言われ俺含む勇者達は目の前の席へ着く。
…コンコン
「入れ」
ガチャ
「失礼します。陛下がお呼びになられているとのことでしたが?」
「ああ、マークか。マークには勇者様方にこの世界についてとこれからのことを詳しく説明してもらおうと思ってな」
「そうでしたか、畏まりました」
そういうとマークは国王の横へと移動した。
「それでは、説明させていただきます。質問等は最後にまとめてお願い致します」
そうしてマークは話し始めた。
しかし俺は、ここである重大なことを知ってしまうのであった………(もちろん、俺にとって……)
次回、盛大に〈ヒャッハァ!!!〉
しちゃいます.......(旅立ちます)