真っ白い空間で
第一ヒロイン発見?
「到着〜!したはいいけどここどこ?」
魔法陣の痕跡をたどって行き着いた場所は、一面真っ白な空間だった。
見渡す限り白く、目視ではどこまでこの空間が広がっているのかわからないくらいだ。…しかし、ここ本当にどこだ?この空間には俺しかいない、俺以外誰もいないし、なにもないしどうなってる。
しばらく地面に座りながら物思いに耽っていると急に目の前が光り、視界を奪われる。
光が収まるとそこにはふかふかしてそうな1人掛け用ソファに腰をかけた爺さんがいた。
「はへぇ?」
おいなんか変な声出したぞあの爺さん……変態か、もしかして変態なのか!
「もっ、もう少し、近くに来てくれるかの」
開口一番それか、まあ仕方ないとは思うけど…何せ
俺と爺さん 現在50mほど離れておりますから…。
目の前が光ったのに、随分と離れたところに現れたな…まあいいけど。
言われた通り爺さんの近くに行くとソファの正面に木の椅子が置かれていた。爺さんが視線でそこに座れと言っているのでそこに座る。
爺さんがソファで俺が木の椅子というのになんかこう、少しくるものがあるが、ここは先ほどの恥ずかしい失態と奇声に免じで許しておこう……。
「ゴッホン!では早速お主にいろいろと説明していこうかの」
「ここはどこだ?召喚場所じゃない「待つのじゃばかもん!!」
俺の言葉を遮り声をあげる爺さん。
「先ずはこちらから説明するから、質問はそのあとじゃ。最近のガキはせっかちでいかんのう」
なんかいちいち、イラっとくる爺さんだな。
「では、説明していくぞい。主な内容は2つ、今の状況、それとそこから派生するこれからのことについて、まずはこの場所 “狭間” についてじゃな。そもそもこの場所は……………」
そこからの爺さんの話は長かった…。どれくらい長かったかというと学校に登校してから生徒にとってのパラダイスタイムの昼食時間にたどり着くまで、ぐらい長かった。
途中の雑談とかなぜか俺に説教を始めたりとかどんだけ俺と話したいのこの人…。
まあ爺さんの話をまとめるとこんな感じだ。
まず俺たちは召喚者であり、そして今回の召喚は勇者召喚であること(召喚にもいろいろあるらしい)。
で、この空間は “狭間” という 地球と召喚される世界の中間的場所であること。
召喚者は必ずここを通らなければならない。理由はあちらの世界に適応する力を得るためだと、と言ってもここでなにかをするわけでもなくここを通れば無条件であちらの世界で力が発現するらしい。
召喚者は基本的に自由で勇者だからと言って義務が発生するわけではない。但し召喚した側の意図は除く。 そしてあちらの世界でなにがあっても爺さんが介入することはない。
それからあちらの世界についてなんだが、まずあちらの世界には魔法が存在する(よく想像するファンタジーな世界ってやつだな)。そして何においても重要なのがスキル。スキルは4つあり、ノーマルスキル、エクストラスキル、ユニークスキル、アルティメットスキルだそうだ。
エクストラがノーマルの、アルティメットがユニークのそれぞれの上位スキルであるらしい(因みに召喚された時発現する力はユニークスキルだそうだ)。
以上が爺さんから聞いた説明だったんだが……爺さんはというと、長話をして満足したのかとても気分良さげに微笑んどります…(うわあ、あの顔殴りてえ)
俺がそちらを見ていることに気づいたのか表情を改める。
「説明は以上じゃが、なにか質問があれば聞くぞい」
「ああー、じゃあ質問な。あちらの世界の地理について教えてくれ」
「ほう地理か、んー、そうじゃなあ、先ずあちらの世界は、天使が住む天界、悪魔が住む魔界、その他の種族が住む地上の3つに分かれておる。…以上じゃ」
「…ん?いや、以上って 説明少なすぎだろ!」
「折角のまだ見ぬ世界なのじゃ、未知であるほうが面白かろう」
「ん〜、まあ、面白いのは大歓迎だが…」
「他に質問はないかの」
本当にそれ以上説明しないんだな、まあもういいけど。
「んー、あっ!そういえばステータスプレート的なのはないのか?」
「おお、おるぞい 。頭の中でステータス表示と念じれば出てくるはずじゃ」
「念じる、か…(ステータス表示)」
…………………………………………………………………………
【ステータス】
蒼葉 秋 17歳
種族 勇者
称号 未表示
技能 ノーマルスキル、未表示
ユニークスキル、 未表示
種族固有スキル、 勇者の希望、勇者の仲間
加護 未表示
……………………………………………………………………………
「どうじゃ、見れたかの?」
「ああ、問題ない」
てか、思ったより情報少ないな。
「他にも質問はあるかの」
「ん〜じゃあ、ちょっとした疑問だけど」
「なんじゃ」
「爺さんはあちらの世界にどの程度干渉できるんだ?」
「そうじゃな、直接的干渉はほとんど出来んのう。間接的干渉なら先ほど説明した通り、召喚者のあちらの世界での力の発現、くらいまでが限界じゃな」
「なるほどな〜」
「それを聞いてどうするんじゃ」
「いや、特に深い意味はねぇよ」
「そうか 。 で 、質問は終わりかの」
「いや、最後に1つだけ」
「なんじゃ」
「爺さんの名前を教えてくれ」
「…んっ、すまん聞き間違えたかもしれん。もう一度言ってくれんか」
「だから!爺さんの名前を、教えてくれ!」
「やっ、やはりそう言っておったのか」
「ん、なんだよ。なんか問題でもあるのかよ」
「いやぁなあ、問題というかの…」
「なんだよ」
「わしには、そもそも名というものが存在しないんじゃよ」
ああ、やっぱり…。
「そうか…」
「なんじゃ、お主から聞いておいてその反応は」
「いやあ、まあな。随分と退屈な日々を送ってるだなと思ってな」
「っ!?まさか、お主。わしの正体に気づきおったのか」
言い方が大袈裟だな。
「まあ、全部じゃないけど大方わかったかな」
「まさか、今の質問だけという訳ではあるまい」
「まあ、そうだけど。 あってるかの確認ついでに言ってやろうか。先ず、爺さんはその存在全てが地球の上位存在の頂点に立つ創造神によって作られた存在であること。そしてその創造神はすでに存在していないこと、さらに主たる創造神が居なくなった今も与えられた命令を守り続けていること」
まあこの3つぐらいかな。
しかしまだわからないことはある。例えばその創造神は何故いなくなってしまったのか、とか。
俺は爺さんの表情を見る。
「その表情からして正解らしいな」
爺さんは悲しげな、そしてどこか悔しげな表情をしていた。
「ああ…正解じゃとも」
正解か、しかしそうなるとやはり退屈だろうな。
まるでシステムで動くロボットのように、与えられた命令を忠実にこなし、誰かが来るかもわからないこの場所でその相手を待っている。
苦しむ心を無くし無感情になれたらどんなに楽か、そんな事も考えただろう。だが時間は容赦なく爺さんの精神を削っていった。それでも限界はこない、そういう存在だから…その存在ゆえに永遠の苦しみを味わい続けている…。
一体どれほどの月日を一人で過ごしているのだろうか。
「ゴォッホン!さあ、今のが最後の質問だったのじゃろう。こちらから伝えることはしっかりと伝えきったのじゃ!さて、いよいよ新たな世界へ旅立つ時じゃ!」
うわ、完全に無理やりテンション上げてるな。
少しはっきり言いすぎたかな、まあ謝ったりはしないんだけど。
「で、俺はどうやってあっちの世界に行くんだ」
「お主の背後を見てみい」
そう言われ後ろを見るとそこには高さ3メートルくらいの門があった。
「そこを通れば、あちらの世界へ行けるじゃろうよ」
いつ現れた?全然気づかなかったな。
「そうか、じゃあお別れだな爺さん。いろいろと説明ありがとな」
「ああ、こっちこそ久しぶりの会話楽しかったぞい」
「そうか…」
久しぶり、ね…。
別れの挨拶を言った俺はまるで天国にでも繋がってそうな見た目の門へと歩いていく。……てかこれ、本当に天国につながってたりしてないよな、妙に神々しいし大丈夫だよな?
門を開け、目の前の暗闇へと入っていく…っとその前に、俺は爺さんの方へ向き直る。
「んっ?どうしたのじゃ」
やっぱ、最後の話は爺さんが少し可哀想に思えたからな、これぐらいの約束はしといてやる。
「爺さん!いつか俺の気が向いたらまたここに会いに来てやるよ」
そう言うと、少し驚いた顔をしてから爺さんは笑って、
「ははっ、いつか、か…あまり期待せずに待っとるよ」
ああ、待ってろ。いつか本当に来てやるから。
その時本当の姿で会ってくれたら、ここから連れ出してやる。
そう誓い、俺は門の中へと消えていった。
……………………(しかしこの門、本当に天国とかにつながってねえよな。俺、まだ召されたくないんだけど)
◆
まったく、なんという小僧じゃ。このわしから見ても彼奴の力の底が見えんかったぞ。
「それになかなかに面白いやつであった」
そう呟く老人の姿はみるみる変化していき、変化が終わるとそこには神々しさ漂う白髪の美しい女性が立っていた。
「久しぶりの召喚者だったから、少し緊張して老人の姿で出てきたけど、あの男ならこの姿でもよかったかもね」
それにあんなことまで言われたらやっぱり期待しちゃうじゃない。
《いつかまた、会いに来てやるよ》
「待ってるから、蒼葉 秋 君。いつか…ちゃんと来てね」
................ . . .
《いつか、お前をここから解き放ってくれる者が現れるじゃろう。だから****よ、それまで頑張るんじゃぞ》
《そんな、主様、いやだよ。主様ぁーーー》…
「主様、私やっと主様が仰っていた人に…出会えたのかな」
未熟者なので、問題点やご指摘等ご報告頂ければ幸いです、