過去に
諸事情により、投稿が遅れた事申し訳ありませんでした。もしかしたら暫く2日に一回の投稿になるかもしれませんm(_ _)m
「ところでノーメンさんはどうするの?話は聞いたわけだし、そこははっきりしといた方がいいと思うんだけど」
ノーメンの方へ向き直りフェレサが聞く。
「私は正直迷っていました。どちらが正しいかなど今はわからない。全ては結果次第です。ただ、私の目指すのは強くなる事。それが主様が私に望んだことだから。私は主様に私の成長を見せなければいけない。それを果たしてもいない私が主様の身近な存在になろうとするわけにはいきません。なのでお二人に協力はできないと思います」
「えっと、それじゃあノーメンは中立って事でいいのかな?できれば今日の事をアキハさんに話さないで欲しいんだけど」
「はい。夜先生とフェレサさんの話には共感できる部分が確かにありました。中立ならば私としても助かります。それに、私だって主様の幸せが第一です。どちらが正しいのかわからない以上お二人の行動が良き結果になるよう願っております」
「うん、ありがと」
話が終わり、私は今日は終わりにしようと提案する。
「それでは今日はもう解散にしましょうか。思いもよらない形で話を打ち明ける事になりましたが、今後はアキハ様の為にいろいろとよろしくお願いします」
「私こそ」
ガチャ
ドアを開けるとちょうど廊下の向こうからアキハ様がこちらに歩いてきていた。
◆
昨日は本当に変な夢をみた。なんとなく見てしまった夢、しかしそれが思ったよりも俺の心に影響を与えた。
俺は殺される事であいつらを救えたと思っていた。いや、今だってそうであってほしいと思っている。
俺が唯一救えた仲間達、それ以降の世界でも大切な存在はできたんだ。だが、そいつらは例外なく全員が殺された。守れなかった…守り抜くことができなかった。力はあったんだ、それでも大切に思う奴らは殺されていった。殺した奴はどの世界でも全て、俺が葬ってやった。もっとも苦しむであろう殺し方で、殺した。だが、そうやって復讐しても殺された仲間達が帰ってくるわけでもない、満たされることのない心。復讐を遂げた俺の心に残ったのは虚無感だけだ。だから、そんな辛い世界から逃げる為に、最後には俺は自ら命を絶った。
しかし、どの世界でも今までの記憶が残り、たとえ死んでも、俺の心が晴れることは無かった。それでも馬鹿な俺は、暖かさ、温もりに飢えていた俺は何度も同じ事を繰り返し続けた。だが、あれは6つ目の世界だった。俺は今まで生まれた世界の記憶がなくなっていた。たまに夢に見る事はあった。それでも自分に前世があると思える程のものでもなく、力も引き継がれていなかった。
種族的に特殊な存在で、強力な力も持っていた。だから自身の過去を覚えていない俺は大切な存在に囲まれ、それらを失う悲しみを知らずにのうのうと生きていた。だが、それでも過去からは逃れられなかった。力を持つ俺達種族に恐れ、他の種族全てが俺達の敵となった。力はあった、それでも少数種族だった俺達は敵の数という武器を前に敗れた。同族は全て捕らえられ一人一人仲間の目の前で殺されていき、最後に残ったのはその当時、種族の長だった俺だけだ。そこで、思い出した、思い出してしまった。今まで俺が味わった悲しみを、すべての記憶を。
同時に今までの世界の力を手に入れた俺は全てを滅ぼした。俺達を追い込んだ全ての種族を殺し尽くした。
誰もいなくなった世界。本当に1人になった。そして思った、最初から1人なら悲しみを味わう事はないと、大切な仲間を失う悲しみから逃れようとした。次に生まれ変わってもし、記憶が引き継がれていたならば今度はずっと1人でいよう。1人でこの悲しみが隠せるほどに楽しい事をしよう。そう誓った。そして救えなかった大切な仲間達を俺の記憶から大切な仲間達ではなくした。そうする事で不安定な心を保とうとした。
次に生まれた地球という世界、誓い通り、俺は常に1人でいた。そして俺の人生を俺が楽しむ為だけに使った。それなりに楽しかった。それに、確かに悲しみはなかった。それでもときどき夢に見た、俺がかつて失ったもの。ただ一回だけ、仲間達を救えた事を。ユルグリッドでの記憶は俺の支えでもあった。
失う事もなく、さらには大切な存在が生きてくれていると。確かに仲間に殺されたのは悲しかった。それでもそいつらを失う方が悲しい、それにあれはあいつらの意思じゃないと最後に確認もできていた。
只々自分の思うがままに生きていた。力をほとんど使わずに過ごす事ができる平和な世界の生活もどこか心地よかった。
そこで俺は再びこの世界に戻ってきた。俺の唯一大切な仲間だと呼べるあいつらがいたこの世界に。
戻って来た事がわかった時、震えた、感激した。そこで俺は自分で立てた誓いを破った。1人でいる事を辞めてしまった。今は夜、ノーメンにフェレサまでもが俺の側にいる。
ユルグリッドに戻って来て、俺は知らぬ間に1人でいる事を辞めた。それはきっと仲間を救う事ができたこの世界でなら、1人になる必要もなく悲しみを味わう事もないのでは、とどこかで思ってしまったからだろう。
気づけば多くの人と関わりを持つようになった。この中に俺が大切にしたい存在がいるかと言われれば、今は、いないとしか言いようがない。この世界に戻ってきた所で過去の出来事がなくなったわけじゃない。少しでも近づこうとすればまた、悲しみを味わう事になるんじゃないかという恐怖が頭に浮かび消えてくれない。
自分が楽しむ為に行動し、全て自分の為にやる。今でもその行動が過去の悲しみに押し潰れそうな俺の心を紛らわしてくれる。
そしてだからこそ、この世界で何が起き、ユフィ達はどうなったのかを知らなければいけない……。
……朝食を食べた後ふたたび寝てしまっていたようで、気づけば昼だ。部屋を出てルサルファ邸をうろついているとルサルファに会った。もうじき昼食だから、夜達を呼びに行こうとしていたらしい。それなら俺が行くと、言ってルサルファと別れた俺は順に夜、ノーメンの部屋に行ったがいなかった。出掛けたのか?と思い、最後はフェレサの部屋に来たんだが、ちょうど部屋から3人が出てきたところに遭遇した。
3人でいるのは珍しいな。
「なんだ。フェレサの部屋で何かしていたのか?」
「そ、それは。え〜っと」
フェレサが言い淀む。
「…あ、そう。今度試合をやろってさ、2人に頼んでいたんだよ。私もしっかりレベルを上げないとと思ってね。許可をもらえたあとは少し雑談をしていたんだ」
「へぇ、そうだったのか。それならその試合俺も付き合ってやるよ。やる時は教えてくれ」
「あ、ありがとう。助かるよ」
「ところで、アキハ様は何故ここに?」
「お前らに昼食の準備ができたと伝えに来たんだよ。さっきルサルファに会ってな」
「そうだったのですか、わざわざありがとうございます」
「いやいいよ。それより行くぞ、ルサルファと昼食が待ってる」