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任務完了



「主様、ルイーナの裏門が見えてきました」


御者席からノーメンが言う。


「そういえば裏門から街って入れるのか?どうだ、ノーメン。入れそうか?」


「ん?あれは…」


ノーメンから返事が返ってこない。


「どうした?」


「いえ、なんでもありません。どうやら裏門の所に人がいるようなのでおそらく大丈夫だと思います」


「そうか。まあ駄目だったら正門に行けばいいだろ」


「はい」


最後の野営地を出発して早数時間、やっと街に到着だ。すでに辺りは暗くなり始めている。



ガッ、ガタン


段差を上がったような揺れのあと馬車は動きを止めた。検問所だと思い外を覗くと既にルイーナの街に入っていた。そしてそこには見覚えのある2人がいる。


馬車を降り、ルサルファとリサの元に行く。


「よう。久しぶりだな」


「はい、お久しぶりです。それに、いろいろとお疲れ様でした」

リサルムが言う。


「ああ、…ルサルファも久しぶり」


「久しぶりだな。…そこまでの日数が経ったわけじゃないんだが、確かに久しぶりだと感じるな」


「確かにな。それにしてもなんでここにいるんだ?2人が門を開けといてくれたんだろ」


「ああ、そうだ。見張りをしていた兵士から二台の馬車が街に近づいていると報告があってな。父上からアキハさんが王都を出発したことは聞いていたから馬車が近づいたら報告するように言っておいたのだ。それにこの時間に街に近く馬車ならアキハさん達だと思い、ここで待っていた」


「そうか、わざわざありがとな」


「いや、どうって事はない。そうだな、ここでは何だし私の屋敷にきてくれ。そのまま屋敷に泊まって、旅の疲れを落としてくれ」


「そうか、それは助かるよ」


ルサルファの言葉通りルサルファ邸へと向かった。ルサルファも俺達にいろいろと聞きたい事があるのだろう。

到着すると俺達はそのままルサルファの自室へと通された。


スクロワ達3人も俺達と共に部屋に行くことになった。ルサルファはスクロワ達に今回の報告を聞かせてくれと言っていたが、本当の所は冒険者に嫌悪感を抱くスクロワが改善したのかどうか本人に話を聞いて確認したかったんだろう。報告なら俺達がいれば十分だしな。



「護衛依頼お疲れ様。それで今回の報酬なんだがーー」


「ああ、報酬ならいらないよ。その護衛依頼ってのも本当は違うんだしな。それにスクロワ達にも王都に行った本当の目的は話してある」


「スクロワ達に…。そうか。たが、今回のは一応依頼という形で頼んだ訳だしな」


「ん〜。それじゃあ俺達がルイーナを出て行くまでこの屋敷に泊めてくれないか?」


「ルイーナを、出て行く…」

ルサルファが黙ってしまった。


「アキハさん、ルイーナには何日いるのでしょうか?ルイーナを出た後の予定は既に決めているのですか?」


リサが聞いてくる。


「そうだな…。いろいろあったし少し休む時間として3日ぐらいはいると思うぞ。予定の方はエンシャント大陸に行こうと思ってるんだよ。まあ、夜達にも言ってなかった事だし、後で詳しく話そうと思ってるけど。それでもやっぱりそんな長くはいないだろうな」


「そうですか」


「で、話を戻すけど、この屋敷に泊めてくれるのか?」


ルサルファは未だに黙って俯いている。


「だ、大丈夫ですよ。ルサルファも最初からそのつもりでしたから」


反応がないルサルファの代わりにリサが答える。


「そうか、なら良かった。そういえばルサルファ。今回の魔王騒動この街の被害はあったのか?」



「…アキハさんと…お別れ」


「ルサルファ!アキハさんが聞いていますよ」


リサがルサルファの肩を揺する。仲がいいようで何よりだな。俺がこの街に来た時に仲が悪かったのが嘘のようだ。


「あ、ああ。すまない。なんだ?」


元に戻ったようだ。


「魔王騒動の被害、この街はどれくらいだったんだ?」


「いや、被害と言えるものは何もなかった。それに父上からいろいろと事情は聞いている。アキハさんこそ父上の身代わりに魔王の元へ行くことになったのだろう。本当にありがとう。父上も感謝していた」


「そうか。まあ俺もちゃっかり褒美を貰ってるわけだしそこまで感謝される事でもないよ」


「褒美か…そういえば父上が言っていたぞ。やっと役立てられる者に渡ってくれたと」


「そうだな」


「アキハさん、その褒美とは何ですか?」


リサが聞いてくるが、そういえばまだ夜達にも褒美の事は話してなかった。


「今回の褒美として王城に保管されていた神具を貰ったんだよ。見返りとしては大き過ぎるかもしれないが、どうせ扱える奴がいないんだったらと思ってな」


初耳だ、とディル達が驚いている。確かに神具は絶大な力がこもっているし、この世界ではどの宝よりも貴重なものだろうからな。そんなものを持っているというだけで驚くべき事なんだろう。


「ところでスクロワ、冒険者に嫌悪感を抱いてしまうというのは改善したのか?今回スクロワ達に本当の目的を黙っていたのはそれを改善して欲しかったからなのだ。あとは各自の成長の為にもな。冒険者に護衛されるという形をとり、アキハさん達と触れ合えば良くなると思ったのだ」


「そうだったのですか。私の為だったとは…お手を煩わせてしまい申し訳ありませんでした」


「いや、今回私はアキハさんに頼っただけだ。それより、どうだったのだ?今のスクロワを見る限り良くなったと思うのだが」


「改善、とは言えませんがアキハ殿のおかげで冒険者とのうまい付き合い方を学べました。それに、アキハ殿達のような冒険者なら、私は普通に接することができます。この方達は信頼できますからね」


「そうか、それは本当に良かったよ」

スクロワが冒険者を嫌っている原因を知っているのだろう。そう言ったルサルファは本当に優しい目をしていた。俺もスクロワに原因を聞いた訳じゃないが、なんとなく想像がつく。


「それにアキハさんには稽古までつけてもらいました。そのおかげで私達3人は短い期間で確実に成長する事ができました」


「稽古までもか。アキハさん、ありがとう」


「俺も楽しかったからいいよ。それと、3人はこれからも成長を続ける。これから先ルサルファの力になるはずだ」


「それは頼もしい限りだ」


その後も王都で起きた事などをスクロワが報告したりと俺達がルイーナに戻ってくるまでの短くもいろいろあった旅の話をした。話の途中フェレサの腹が鳴った事をきっかけに全員で夕食を食べる事になった。スクロワ達はさすがにそこまではと遠慮していたが、ルサルファがまだ話しが終わっていないからと言って半ば強制的に一緒に付き合わせていた。


夕食が終わるとさすがにスクロワ達は帰って行った。


俺達はもう少し話をしたいというルサルファの希望に乗り、場所を邸宅のテラスに移して話を続けた…。


少し考えればわかる事だった。たぶんルサルファが大量に酒を持ってきたのがいけなかったんだろう。酒と言えばこの2人、フェレサとディルが酔って騒ぎ始めた。途中から2人は放っておいて他の酒には酔っていない面子で飲んでいた。結局最後は酒に溺れる2人を気絶させ、俺達の為に用意された各自の部屋に放り込んでおいた。これがパターン化される気がするな〜。あの2人、明日は二日酔いかな。











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