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十二支部  作者: 兎羽 翔
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兎と猫の隠れ家



 重たい荷物をぶつくさ言いながら運んでいた綾瀬と椎名と別れた二人は、今後新たなプライベートルームとなる寮の部屋へと訪れた。中等部の部屋割りは完全ランダムだが、高等部となると様々な理由から、希望を出せばある程度叶えられてくる。

 理由とは、全寮制男子寮によくある特殊な性質を考慮したものだが、割愛。


 とにもかくにも、高等部一年目の部屋割りは柊と遊佐が、そして綾瀬と椎名が、同室として割り当てられた。


「俺、希望出してねーんだけど。なんでお前となの」

「酷い言い様だな。答えは簡単、俺が希望出した」


 どん、と重たい荷物をおろし凝った肩をならしながら平然と言い放つ柊に、遊佐は疑問しか抱かない。


 中等部三年、たまたま同じクラスで、あの人と付き合う条件を満たすために突然椎名の勉強係をかってでた遊佐に、ほかの二人は当然疑惑の目を向けていた。

 先程も述べた、特殊な性質が絡んでいるのではないかと勘ぐっていたが、椎名に対する勉強の教えはやたらスパルタだった。そのおかげでそのような懸念もいつの間にか忘れ去られていた。

しかし性格上、まともに友好関係を築こうとしない遊佐は、その自覚もあったし好かれているとは思っていなかった。椎名に教えるために、必然的にほかの二人と話すことはあったがその程度。

まさか、同室者希望を出されていたとは。


「なんで?」

「ふっつーに聞くなー。まぁ、最初は綾瀬と椎名を同室にしたかったからだな。あの容姿だろ?変な気おこすやつも中等部より増える」

「…だろうな」


 同意はしたくなかった遊佐だが、長くこの環境にいれば、どのような容姿のやつが男の対象になるか自然と分かってくる。それにぴたりと当てはまってしまうのだ、あのふたりは。

だからといって、柊と遊佐が同室になる必要性は感じないが。


「んでー俺も知らん変な奴と同室になるより、お前のほうが多少知ってるからそのほうがいいなーと思った。あと短い付き合いだけど一応お前の心配もしてた」

「心配?」

「うん。自覚ないだろうけど、お前タチに狙われやすいから」


 あ、ちなみに俺は猫に狙われやすい。

 そんな付け足した言葉は遊佐の耳に入ることなく、衝撃的な一言で頭はフリーズ。一時し、言葉を正確に理解したときには「はぁ!?」と叫んでいた。


「俺が!?」

「うん、人気あるよお前。顔は生意気そうだけど整ってかわいいほうだし、性格はあれだけど逆にそれがいいってやつとかに」


 なにそれこわい。

 完全に言葉を失った遊佐に、柊は思わず苦笑いをこぼす。わりと積極的にアプローチしていた輩に同情半分、遊佐の鈍感さに同情半分で。

 真っ青な顔でたたずむ遊佐の背中をぽん、と叩く。


「自覚わかねーかもしんねーけど。高等部は一気にそんな輩増えるし気をつけろよ。じゃないと、俺が教えた意味がない」

「…おー」


 すごく嫌だ、と心の声が聞こえてきそうな返事に悪戯心から柊はもうひとつ言葉をかける。


「お前が襲われたって知ったら、お前の意中の相手も嫌なんじゃねーの?好きな奴に心配かけたくねーだろ?」


 意中の相手。

 遊佐の相手が誰かは知らないが、思った以上にそれは効果があったらしく、真っ青だった顔色は嘘のようにいつもの無愛想な表情に戻る。


「おう」


 返事も、先程とは違い力強い。

 こんな無愛想に想いを寄せられる相手は、どんなやつだろうかと少し興味を持ちながらも、大して尋ねることもなく、それ以降は黙々とそれぞれの荷物整理に励むこととなった。


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