《音無兄と音無妹》
神田です。
2話連続投稿です。せめてこのくらいはと思い。驚きましたか?
音無戸森は僕の妹で、高校に入って僕が自室にこもるようになっても未だに懐いてくれるので僕にはもったいない妹だと思っている。
戸森という名前は、「こもり」とも読めるが本当に引きこもってしまったのは僕だから奇妙な感じがする。言ってしまえば悪いが、多分どっちかが引きこもってしまったらどちらかは自分は頑張らなきゃとなっていただろう。僕は今はこの通りだが、戸森が僕になっていてもおかしくは無かったと思う。
戸森は髪に緩くウェーブがかかっていて、いつも少し眠そうな目をしている。
今日は両親が旅行に出かけたので僕が家の事をしていた。何でも結婚記念日とかで少しの間は帰ってこないそうだ。
朝に弱い戸森を起こしに行くと声をかけただけでは目を覚まさなかった。
身体を揺するとようやくぼけーとこちらを見るとまた目を閉じて布団を被った。
「おいおい、学校遅れるぞ」
「んー」
「学校はどうでも良いけど、ご飯冷めるぞ」
「もうちょっと」
「じゃあせめてリビングまで運んでやろう」
冗談のつもりで言ったのに寝ぼけて理解が出来てないのか戸森は腕を伸ばしてきた。抱えて行けということか。
正直、僕に妹を抱えられるほどの筋力は無い。
かろうじて背負うことは出来たようで何とかリビングまで連れて行き、ソファに下ろした。
冗談でこんなことになるとは思ってもいなかった。こんなことなら日頃から筋トレを、とも思ったりしたがそもそもこんなことはもう無いだろう。次から言わなきゃいいだけだしな。
背負っている時からだがソファに寝転がってから余計に眠りが深くなろうとしているように見える。
並べた朝食のご飯から湯気は戸森を起こしに行く前よりいくらか食べやすい温度になっていそうだった。
「おーい、そろそろ起きろー」
肩を揺すると何とか目を開けた感じで身体を起こし、ようやくソファに座って微睡んでいた。
戸森は僕と違って学校に行かなきゃならないからリビングまで手を引っ張って連れて行く。今でもご飯はちゃんと食べていると母が話しているのを小耳に挟んでいたので目の前に朝食があれば目も覚ますだろうとは思う。
「あれ?今日ってナツが作ったの?」
戸森は僕のことを夏人からナツと呼ぶ。お兄ちゃんとか呼ばれないから悲しいとかそういうことはない、戸森は気まぐれで呼び方が違うからナツが基本なだけで色々と呼ばれるからそういった思いはない。
「そうだよ。二人は旅行中だからね、僕に任せるとさ」
多分僕の返事を聞いていない戸森は「おー」とか何か納得するとすらーとした手を合わせて食べ始めた。
「お兄ちゃん、料理上手いよね」
「そうでもないよ」
味噌汁を一口。
「お母さんより上手いかもしれないよ」
「それ、お母さんに言うなよ」
「言ったらどうなるかな」
「僕がこの家のコックになるね」
「いいじゃん。私は嬉しいよ」
「僕が嬉しくないよ」
「そっか」
「そうだよ」
ほんの少し戸森が本当に残念そうに見えた。作ったものを美味しいと言ってもらえるのは嬉しいんだけどな。
まさかそれを書くのに2年と少しの少しが経ったとは思うまいとか思う神田です。
次回はアクセス数とか見て決めます。




