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兄と妹。  作者: 神田水紗&日和
斉藤編 〜斉藤兄は妹魂と書いてシスコンと読む。〜
12/28

《斉藤二人とカレー》

《斉藤二人とカレー》

 果歩の好きな食べ物の中にカレーがある。僕と果歩の時間が合う時に偶に二人で作っている。

 作り方に変わった点などはない。香辛料からとかそういったこともしない。ルーを使うごくごく一般的なものだ。唯一他とは違うところと言えば、最後に何を混ぜて作るかというところだろう。

「さて、今回もいつも通り出来たわけだが……。」

「じゃあお兄ちゃん、この中から選んで。」

 机の上には五枚のメモ用紙が文字が見えないように裏返しにされて置いてある。この中から一枚選び、そこに書かれている物をナベに入れるのがこの家の習慣となっている。

「ちなみに、何があるんだ?前の岩塩は無いよな?あれは普通に塩の塊だからな。」

「大丈夫だよ〜、えーと、今回はケチャップ、リンゴのコンフィチュール、マーマレード、サバ缶、バナナ大福だよ。」

「バナナ大福以外はまだまともだな。リンゴのコンフィチュールって林檎ジャムだよな。」

「まあ、ケチャップはルーが違うのであるし、リンゴのもいつものルーと同じだしね。」

「マーマレードは少し怪しいが……まあ、大丈夫だろ。サバ缶は美味しいだろうしな。」

「バナナ大福は未知だね〜。」

「絶対まずいと思うぞ。」

 結果、引いたのはバナナ大福だった。

 なんと言うか、こうなるんだろうなと思った通りだな……。

「本当に入れんのか?」

「入れよ〜、入れよ〜。」

 果歩のその無邪気な笑顔に惑わされた。

 バナナ大福入りのカレーライスは、一言でおいしいとは言えなかった。大福の皮の餅の部分が溶け出し、ドロッとした食感と、バナナ餡のネトッとした舌触りが何とも言えない。

 そして、口に含むとバナナの香りが鼻を抜ける。

「これ、……まずくないか?」

「ええ!?そう………かな。」

 そう言って果歩は視線を落とす。

 すでに果歩の前にある皿からは半分ほど消えていた。果歩としてはかなりの好感触だったようで、いつもより箸が進んだのだろう。カレーライスなので箸ではなくスプーンなのだがな。

「私はかなりイケると思ったんだけどなぁ………。」

 などとブツブツと言いつつ南国を思わせる黄色が目につくところをスプーンですくい口に含むと頬を少し緩ませるのだった。

 その姿を見ながら僕は「また作ろうかな。」などと妙なことを頭によぎらせていたのである。





神田です。

これで《斉藤編》は完結です。また暇があれば出すかもしれません。ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます。

次編は《神谷編》です。ツンデレの妹と少し鈍感な兄の話です。どうかこちらでもお付き合いください。ではでは。

次の投稿は11月10日です。

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