2.僕と説明
「さぁってー♪はじめての出陣ですからねー。サクサクいきますよー。」
現在僕は卯月と身体をチェンジしている。なんていうんだろうね、本当に身体そのものがかわって、さっきの白い空間でみた彼女の姿そのものにいつのまにかかわってた。
ついでに僕は彼女の視界を拝借してる感じ。なんか勝手に進む辺り3Dゲームのチュートリアルみたいなイメージ。操作を受け付けませんてね。
「さぁってー♪また光りましたねー♪」
ペカッと光りましたよー、なんで楽しそうに喋っている卯月。狼だとかいう耳がピコピコと動いている。
「♪」
ズドドドドドドと音をたてて走っているとは思えない軽やかさだ。尚、彼女の履き物は草履である。下駄ではなかった。
まぁはじめて身体を動かすにしてはよく走れるなぁとか思ったけれど、曰く|「超越性能だから最初から絶好調」《バクに不可能はなし》なんだそうで。
「目的地に着きまーす♪」
キキッとブレーキを掛けて止まる。
目的地についたらしい、はやい。3分くらいしかたってないよ。
因みに僕は自分の【超越性能】について卯月から説明を受けている。
どうやら卯月の状態だと人類を超越した存在とやらに当てはまるらしく。どうやら大抵の事は知ろうと思えばわかるし、やろうと思えば出来る。
つまり、負けることのないチート野郎とのことである。
余程のことがない限り僕(卯月)が死ぬこともないということで、ペカッた光を見に行きたいという卯月の要望に答えて走らせてみたわけだけど、どうやらその判断はよろしくなかったようだ。
そこには眼鏡をかけたなんか近所の中学校の制服を着た男の子が、なんか光輝くなんかすごそうな、バレーボール位の球体をなんか幾つも浮かべてた。
〈テンパってますねー♪なんかばっかり使ってますよー〉
うるさい。
〈でもダサいのか格好いいのかわからないよね。格好も制服だし。〉
卯月は着物に草履、簪付きで生まれたのにね。彼の能力だと服とかは付いてこなかったらしい。後、残念ながら足は地面についてる。これで浮いてたら完璧だったのにね。何がかは知らないけど。
〈というかあの浮いてる球体くらっても平気なの?〉
〈へーき、全然へーきです♪あの程度、どーやら中二病のなかでも外れ……コホン、症状は軽い方ですから。〉
〈へー。じゃあ因みに僕はどれくらいなの?〉
ふと疑問に思う。あの派手さで外れ…ゲフンゲフン、軽い症状だということは自分のこの、【超越性能】とやらは結構な当たりなんじゃなかろうか。なにせ別人格までつくっちゃう位だし。なによりバグだし。
〈あっちの眼鏡さんが自転車なら私たちは雪風じゃないですかねー♪それくらいの差はありますよ。とりあえず末期です♪〉
末期認定。まぁ死ぬことはないとかいっちゃうくらいだし。
とかやってたら眼鏡君がこっちに気がついたようだ。はっとしてこちらを眺めた後、一度眼鏡のつるを指で上げてから、左手で右手を掴んだ。
「駄目だ!君、こっちに来ちゃいけない!くっ、力が勝手に…」
え、リアルな感じの中二病ですか?まさかのテンプレ中二病さんですか?
なんかガッツリ暴走してるような感じだけど、さっきまであの人普通に球体操ってたよね?
それと暴走するっていう制約かなんかがあるなら確かに服とかはつかないのか。
僕の場合は暴走しないように補助までついてきたけど、これは正直ラッキーだったかもしれない。卯月がいなきゃ僕一瞬で死んでるわけだし。
「えー、ここに来てテンプレですかー、ちょっとお姉さんがっかりですねー♪」
笑顔で煽る卯月。てくてくと近づくスタイル。地味に僕と同じ考えだったんだね。やっぱり暴走とかテンプレ臭いよね、てか、前、来てるって!球体がー
―ドオォォーン!!―
「ほら、よくあるじゃないですか、貴様の攻撃なんぞ効かん的なやつ。あれですよー私に効くわけがないのですよー、いえー♪」
まぁそんな気はしたけど。全然効いてないっていうかそのまま止まらないで近づいて行く。
「う、うわぁぁぁぁああああーー!!??」
叫びながらも球体をこっちに飛ばしてくる眼鏡君。それを平然と受けながら歩き進む卯月。彼の叫びは暴走とやらをしているからか、こちらに平然と歩いてくる卯月が恐いからなのかわからない。
逸れた球体は地面を抉りそこそこの大きさのクレーターを作り出していた。
〈効かないってことよりもあの球体の威力の方に驚いてる。あんなに威力出るもんなんだね。〉
〈まぁ暴走しているようですし、威力というか出力あたりが倍にでもなっているんじゃないですかー♪〉
じゃあ逆に倍になってもこの程度って見方も出来るのか。それにしてもばかすか放ってくれるねあの眼鏡君。もうそろそろ三桁いくくらい飛ばしてると思うけど疲れないのかな。
〈なんか奥の手とかもないですしさっさと決めましょー♪〉
すっ、と足にちからをこめて移動、そのまま腕を拡げて眼鏡君の首にラリアットをかますまでの所要時間は一秒要らないくらい。
くらって派手に吹き飛ぶ眼鏡君。あ、道路に頭から落ちてそのまま倒れた。だいたい飛距離5Mくらいかな。はじめてみたよ、人が吹き飛ぶところ。
もうここは非現実な日常空間なんだね。
「つまらなかったですしー、さっさと帰りましょう♪」
その後僕らは家に帰り、ご飯を食べてさっさと寝た。
卯月は予想に反して料理がすこぶる上手でした。美味しかったです。
ごちそうさまでした。