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1.僕と彼女

「えっとー?つまり君は僕であって、僕の潜在能力?とやらを使うために生まれたってことであってる?」


 白くて広い。小学校の体育館並の広さの空間に僕は居る。

 気づいたらここにいて、目の前にいる女の子が微笑んでいた。


 薄い桃色の着物に藍色の帯をつけて、栗色の君の毛は地面につく位長い。髪の毛の一部が犬とか狼の耳の様に盛り上がっており、その盛り上がりの少し下に花柄の簪をつけている。目は翠色で個人的には可愛いと思える顔立ちをしていて、でもなんか懐かしいような雰囲気を感じる。 

彼女とは正座をして向かい合っており、自然と僕も正座をしていた。


「はい♪私は貴方が扱いきれない能力を扱うために存在する人格です。とはいっても私が表に出ると身体も変化するんですけど♪」


「身体が変化する?」


「ええ、貴方の潜在能力【超越性能】(この世のバグ)は本来人間で有る限り耐えきれませんから。一瞬で砕け散りますよ♪なので私は狼を素体として身体が構築された様です。」


 どうやら耳は狼らしい。

 というよりも人格?それと狼としての身体って?


「ああー混乱させちゃいましたねー。要するに貴方はとっても素敵なぱわぁを手にしてましたがそれを使いこなせる身体と脳をしてませんでしたので、それを別に用意したんです。これまた不思議ぱわぁにて♪」


 何て万能なんだろうか不思議ぱわぁ。

 しかし、何故いきなり潜在能力とやらに目覚めたんだろう?


「…何故私が生まれて、何故潜在能力に目覚めたか。ヒントを挙げるなら、私に会う前に高熱で倒れた記憶はありますか?」


「…ある。」


「そして、その高熱の原因として考えられるものがひとつ、ニュースになるような大きな出来事としてあったでしょう?それが原因ですよ♪」


 そう。確かに心当たりというか、思い当たるふしはある。

 3月20日金曜日。13日の金曜日が無事に終わってホッとしていた一週間後。都内のコンピューターか何かが爆発して、人体に影響があるウィルスがばら蒔かれたのだという。


 結構の人数がウィルスに感染したとかで、高熱やら頭痛やら体調不良を訴えているようだ。

 ウィルスに感染するのは特に法則性がなく、僕も4月を目の前にして高熱でたおれたんだっけ。それにこのウィルスにはとんでもないおまけがあって


「そして私は【超越性能】のお陰である程度はこの事態を把握しています♪」


「『中学2年生頃の思春期に見られる、背伸びしがちな言動』をしてしまうという病気になるんだろ?」


 所謂、『俺に近づくな!離れろ、奴が出てくる。うわー』『くくく、血が騒ぐ。お前も眷族にしてやろう。』てな感じやつのはず。感染者特集TVで組んでたし。知り合いにもいるし。


「いえ、違いますよ?言動をしてしまうだけではなくその想像、妄想したモノ、すなわち秘められた力とか実は人外のであったとかそういうのが本当に宿ってしまうんですよ。


それも様々な人が考えた自分が格好いい!と思った背伸びしがちな言動全てが対象となっており、感染時に決まりますのでー。自分の深層心理とか関係なく、真面目ちゃんだろうとなんだろうと関係無しに中二病になってしまうようです♪」


 え?

 彼女が言ってることはきっと間違ってはいない。さっき懐かしいと感じたのは自分をベースにして創られているから。故になんというのだろうか、嘘とか焦りとかそういうのはなんとなくだけど、わかる。そして彼女が嘘をついていない。ということは。


 それって、つまり。僕は―――――


「二重人格」


「いえ、違いますよー?」


 やんわりと彼女に否定された。それも良い笑顔で。可愛い。


「同時に出られないとは言え私にも専用の身体はありますし、二重人格と言うよりも一度に表に出られるのがどちらかなたけです。なので貴方がゲ○ター1で私がゲ○ター2みたいな感じですかねー♪」


 全く判らん。つまり身体を切り替える際にはオープンゲットなりなんなりしなきゃいけないのだろうか?


「かわるときは普通に替わるという事を私に伝えてください。意識で私たちは繋がっているので脳内会議も出来ますよー♪二人っきりですが。後、私も貴方と同じで寝たりしますから何時でもと言うわけにはいきませんけど♪」


 声を出さなくても意識で伝えれば良いのか。意識で会話できるのはありがたい。主に暇潰しとして。


「成程、少しは状況を理解できたかな。」



「因みにここは貴方の内なる世界。心の中です♪脳内でここに来ようと思えばいつでもこれます。逆にここから出ようと思えば出られますよ♪」


 微笑みながら説明を続けてくれる彼女。やっぱり可愛い。

 と、笑顔を見て和んでいる場合じゃなかった。聞かなきゃいけないことがあった


「そういえば君の名前は何て言うんだい?」


 これから一緒に生活をする身分としては聞いておきたい点だ。


 尋ねると彼女は少し困ったような顔をしつつも


「ありませんよー♪だって生まれたばかりですしー。なので名付けてくれたほうがよいかもしれませんねー。」


 …あ、そー言えばそうか。色々知ってるから勘違いしていたけど、さっき自我を構築したばかりなのか。つまりは産まれたばかりの赤ん坊と同じ…でもないか。


「じゃあ一回意識を体に戻すよ。そしたら一緒に考えよう」


 そう言って身体に意識を戻すように集中させる。彼女が手をフリフリしてるのが見えた気がする。


 白くて狭い。目の前には少し散らかっている自分の部屋。見慣れた光景だ。散らかっているとはいってもゴミが落ちていたりするのではなく、携帯端末のコードや本棚に入りきらなくなった本が床に散乱しているだけのことだけど。

 ベッドから体を起こし、壁についてるカレンダーを見る。4月の文字の下に「卯月」と書いてあった。

 そーいえば3月も終わるからってことでもうカレンダー捲ってたんだっけか。


「卯月か…。」


 さっきまで会っていた彼女の名前。もう一人の自分である彼女の名前を決めるにしては安直だと自分でも思うが、悪くはないと思う。


〈可愛らしくてよい名前だと思いますよー♪〉


 頭に響く女性の声。


(まぁ、一応由来はあるけど。新しい月を、新しい年度を、迎える月の名前を冠するのは、新しく一歩を踏み出す僕らに相応しいと思わない?)


〈全っ然なにいってるかわかりませんー♪〉


 即答である。


〈でも響きと字面は気に入りましたから使わせてもらいますね♪由来はちょっとよくわからないですけど。


では改めまして、私は卯月。鳴神 卯月(ナルカミ ウヅキ)と名乗らせていただきますね♪〉


 もう聞き慣れた音符の付きそうな軽やかな口調で彼女、卯月は言う。

 この声を聞けば、正直潜在能力とか中二病とか面倒だと思っていたけど。それでも面倒な反面、彼女となら楽しくやれるような気がする。


〈あ、向こうがなんかペカッて光りましたねー♪〉


 え、そんなこと出来る奴等もいるの?

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