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未知と宇宙と約束された世界

作者: 時羽鉦也

太陽系第三惑星、地球。

そこに住まう「人間」と呼ばれるものたちは、実は大体「地球人」ではない。


簡単に言うと、ある一家以外、すべて地球外生命体(うちゅうじん)だ。

近所の犬も、隣の席に座る女の子も、電車のつり革にもたれかかるおじさんも。

昼ドラの内容を楽しげに話している主婦たちも。

みんな地球外生命体。


こんな状態になった理由を説明するには、地球時間でざっと3~40億年あたり前までさかのぼる必要がある。

現在地球と呼ばれているこの星は、3~40億年くらい前に、銀河系規模の帝国の貴族によって『発見』され、所有されることになった。

その貴族は帝国でも酔狂で有名な人物で、もともと帝国が辺境統治に関心がないのをいいことに、この星を自身の箱庭とした。

あの帝国は、辺境に対してかなり甘い。

なにくれとなく世話を焼き、大きくなって反抗期に入るとぺろりと平らげる。

そのことだけを楽しみにしているきらいがある。

しかしその頃は大きく育てるほど知性のある生物がいなかった。

だがそれも決してマイナスポイントではない。なにせ地球は水の星。

水だけではなくほかの種も発展してきていて、例の貴族が箱庭趣味の仲間を引き込んだこともあって、この小さな箱庭に逗留するものはそこそこいた。

もちろん偉大なテーマパーク、エラシオン程の出入りはなかったが。


ざっと地球時間で30億年くらいすると、ポツリポツリと知恵をもつものが現れ始めた。

しばらく待つと順当に社会を構成しだしたが、何度も争って個体数を減らしていった。

面倒見のいい仲間は一定以上減らないよう、安定して生活できるよう指導したりもして、結果神と呼ばれたりした。


そこで想定外の事態が発生した。

仲間たちは、あるがままの地球を愛し、住みつき、現地のものとも仲良く過ごしていた。

その結果、人間の中に地球外の種族が結構な確率で紛れ込んでいた。

ああ、70%はむしろ大多数と呼ぶべきかもしれない。

そのうちの30%は、地球人たちとのハーフ、またはその子孫。少しずつ溶け込んでいったようだ。

ハーフやその子孫が、ときどき先祖がえりをして天使とか悪魔とか、妖精とか妖怪とか様々に呼ばれた。

特に王族や支配者層にはその傾向があった。確かに神の子ともなれば絶大な力があるだろう。


この件は地球人愛好家(なかま)たちを悩ませていた。

純粋な地球人が減り続けているのだ。

このまま放置してしまうと、地球人はハーフという形で取り込まれ、存在しなくなる。

まるで仲間たちが地球人を取り込み、侵略してしまったような格好だ。

善意からの歩み寄りが原因だったり、地球人の方からむしろ近寄ってきたのは言い訳にはならない。

仲間たちの倫理的に見て、地球人の倫理感覚に照らして表現するならば、生まれた時から知っているかわいい子を育てていて、最近ようやくよちよち歩きができるようになったと思ったら、いつまでたっても甘えてくるのがうれしくて、うっかり性的暴行を働いてしまったような感覚。

どれだけ真っ青になったか想像してもらえただろうか。

真っ青になったころ、折悪しく災害が重なり、なすすべなくまた多くの地球人が死んでいった。

結局種の保存と生活様式を保存させるため、仲間たちは地球人の積極的な囲い込みを決断したのだった。



そして、今この時点で残っている地球人は日本という国に住む1家族のみ。

もうずいぶん前に種としては絶滅が決定している。

だからせめてこの狭すぎる星の中で愛でている。

ハーフや混血を繰り返した者たちは多い。

もしかしたら、限りなく地球人に近いものも今後生まれるかもしれないが、最後の純粋な地球人たちを惜しむ気持ちのほうが強い。




「ねえ、宇宙(そら)ちゃん、何考えてるの?」

春風が強めに中学校の屋上をさらっていく。

高い柔らかい声が空気振動を経て俺の認識核へ到達する。

俺にだけ認識できる中空投影を中断し、フェンスにかけていた重心を30%減らして声をかけてくる人物を見やる。

首筋までの黒髪のボブに、明るい橙色の瞳孔。

きれいに手入れされた制服が風で飛ばないように端を気にしている。

見間違いようのない我が幼馴染の姿。



「...ああ、未知子(みちこ)か。...宇宙(うちゅう)のことについて、ちょっと、な」

正確に言うなら、地球の人類人外比率とその原因について、ちょっと。


「そっか。名前が宇宙(そら)だもんね!」

「うーん、まあ、そうだな」

名前どころか、俺自体が宇宙なんだけどね。

今まで細かいことは言わなかったが、俺の本体は今でも元気に貴族をやっている。

ここにあるのは、本体の分身体と分身体が操縦しているいろいろ改造したアンドロイドだと思ってくれていい。



「そーだソラちゃん、聴いて聴いて!あたしね、今度お話書こうと思うの」

「...へえ、どんな話?」

「んっとねー。ほんとは内緒なんだけど...」

「?...書いた後でもいいぞ?」

「ううん、聴いて!あのね、この前思いついたんだけど...宇宙にはきっと地球以外にいろんな生き物がいると思うの!」

「うん。それで?」

まあ実際にここにもいるんだが。


「それでね。よく地球人だって宇宙人だっていうじゃない?」

「間違いじゃない」

実際その通り。


「だったら地球人以外全部宇宙人...もっと言うなら、あたしたち以外みんな宇宙人って言えるんじゃないかと」

「...え?」

待て。どうしてそうなった。


「あたしたち以外みんな宇宙人!ちょっと面白くない?

例えば、うちの家族以外はみんな、実は宇宙人で、あたしたち最後の地球人をそっと見守ってるの!」

「...なんのために?」

「さあ?保護するためじゃない?」

「何から?」

「うーん...そこまでは考えてなかったわ...でもね!種族の差を越えて愛し合う二人!ってのは考えてるの!」

「恋愛ものかよ...」

「素敵じゃない?」

「できれば恋愛要素は薄くしてほしいなあ...主人公は地球人?」

「そうね...女の子がいいかな。

普通に夏の怪談、ホラー物が好きで、未知との遭遇に期待しちゃうタイプ。

テレビでUFOが!とかエイリアンが!とかいうのが好きで、よく見てたのね。

それで、学校の帰り道にUFOらしきものを見つけるの!」

モデルが丸わかりだぞ、未知。...しかし

「らしきもの?」

「UFOってのは未確認飛行物体(アンノウン・フライング・オブジェクト)という意味だもの。

確認しちゃったらUFOじゃないわ」

「なるほど。筋は通ってるな。続けて?」

未知には話に集中してもらわないとマズい。少しでも、間違っても、彼女の後ろに浮いている宇宙船に気づかれてはいけない。


「それで思わず追いかけるわよね。

普通だったら追い付けないだろうけど、うまい具合に山に落ちるわけよ」

また狙い澄ましたかのように宇宙船は花町家に突っ込んだ。

あそこなら大丈夫だ。

昔ながら滞在している地球外生命体だから、うまい具合に墜落した馬鹿を確保してくれるだろう。


「...ずいぶんお粗末なUFOだな」

「乗り手が若かったのかもしれないわ...いいわね、それ。

そして助け出した乗組員がイケメンなら尚良しよね!」

「イケメンなら何でもいいのかよ」

「あ、妬いちゃう?...あーでもUFOの墜落なんて展開としてはありがちかしら」

「そうかもな」

すぐそこで発生しているくらいにはありがちかもしれない。


「じゃあどんなのがいいかしら...そうだ!初めてできた恋人が宇宙人だったってのは?」

「...あれ?宇宙人は一族を保護してるんじゃなかったのか?」

「あ、そっか。それに最初から恋人じゃあ味気ないもんね」

「無理に恋愛をからませる必要はないんじゃないか?発想は面白いんだし」

むしろ世界中が注目すると思う。何を書かれるか戦々恐々。

発売されたらべストセラー間違いなし。


「えへへ、そう?ソラちゃんにそう言ってもらうと嬉しいなー」

「はいはい」

「その設定でね、ほかにもいろいろ考えてるの」

「へえ、例えば?」

「うん。例えば、通ってる学校が、実はその家族のために作られていた!とか」

「ほうほう」

ワンストライク。


「テレビで流れている海外の様子は、実はドキュメント風に撮影されたものだった!とか」

「ホウホウ」

ツーストライク。


「残った地球人がその家族だけだから、いっそ冷凍保存しちゃおうか?って言う悪の組織が暗躍してた!とか」

「ほほう」

内角高め。デッドボールぎりぎり。

実際にその手段も検討されていた。ただし悪の組織ではない。


「そんなに貴重ならさらってクローン作って売り飛ばしちゃおうぜ!っていう悪の組織とか」

「ほほう」

今度は外角低め。

実際にそれをしに来た新参者は、古参連中から袋叩きの上中央で社会的に処刑された。

しかし、知ってたのか?と思うくらいの精度だな。

ちょっと困った。

平穏に過ごしてほしい。

それが俺たちが地球人たる彼らに望む最後のことなわけで。

実際にそうであると知られてしまったら、その精神的ショックはどれほどになるだろう。


「あとはねー。異世界から珍しいものを盗んじゃう人たちが地球人をさらっちゃうとか!」

「それだと地球人が主人公じゃなくてヒロインになっちゃうけどいいのか?」

これも外角低め。

宇宙的に並行世界および多元時空での生命体は確認されているし、その他の次元からこちらのものを引っ掛けていく所業は一時期問題になっていた。

よく地球人がさらわれたからだ。

対処法が見つかってからは、矛先を上手く操作して多次元旅行希望者を中心に送り込んでいる。

案外そちらの居心地が良かったりすると定住化してしまう、というのも最近の問題の一つだ。

遊んでないで帰ってこいよお前ら。


「...そうかー。やっぱりお姫様を助けるのは王子様の役割だもんね。

お姫様が主役じゃ締まらないかあ」

「何が何でも恋愛要素入れたいんだな...」

「だって、そんな世界だって気付かなくても、気づいても、きっとあたしの主人公は楽しんで生きるもの。

楽しんで生きるんなら、きっと恋愛だってするわ!」

審判関係なしに、どストレートのストライクをもらった気分、とでもいえばいいんだろうか。

ギミックとしての心臓が止まるかと思った。

いやでもほんと、気づいてないよな?気づかれてないよな?


「...その発想は、本当にすごいと思う」

「うん、ありがとー。実はね、こんなこと話したのって、理由があるの」

「へえ、なんだ?」

「物語にソラちゃん出してもいい?」

「え?」

「いつも見守ってくれて、助けてくれて、危ないときには守ってくれる、生まれた時からずっと一緒にいる大切な人が、実は地球最後の家族をそば近くで守る最強のボディガードだったのです!ってのを考えてるの」

「...」

どストライク。

バッターアウト。


「...だめ?」

「...主人公が、お前なら、出てもいい」

「!」

みるみる真っ赤になるかわいい子。

さて、攻守交替のお時間です。


ちなみに、仲間たちはにちゃんねらーのノリ。

あらしは特定してあぼーんしました。

ぶつりてきに。


野球についての突っ込みは不可でお願いします。



宇宙(そら)ちゃん。(男性体)

古参の一人。

むしろこの辺境で地球を見つけたやつらの一人。

帝国のお偉方なのをいいことに、いろいろいろいろ手をまわして、自分の意識体を常駐させて辺境ライフを満喫していた。

結構初期に奇跡起しちゃったり地形変えちゃったりしたので、後になってムー大陸とか特集されると微妙な気分になる。

他の奴らも大なり小なりやってるので人のこと言えない。

地球人が文明を手にしてからは割と引っ込んだところで眺めていた。

そのころから人間の発想力ってすげえなあと思っていた。

奇抜な発想するのって大体地球人だったし。

今まで引っ込んでいたが、現在は最後の地球人の最後を見守るためすぐ近くにいる。

人間に擬態するなど朝飯前です。

小さいころから見守っている、みっちゃん(未知子)がかわいくてしょうがない。

けども正体は死んでも明かさない。



未知子。(女の子)

未だ知らないと書いて未知子。

幼馴染のソラちゃん大好き。

もちろん、女として。

十三歳は立派なレディだと思います!

後々まで今回の会話を覚えていて、いたずら心を起こしてソラちゃんにカマかけたのが十八の時。

そのころになると、仲間内で未知子ちゃんは俺の嫁と言い出す輩もいたりして、ソラちゃんはさりげなくむかっ腹立てているといい。

本人は父性のつもり。

未知が欲しいならおれを倒してからにしろ。

まあ、実際選ぶ権利はみっちゃんにしかないわけで。

みっちゃんが本気で望めば、実はどこの大金持ちとも結婚できたりする。

でもそんなことは当然本人は知らない。



そして、みっちゃんの家族大公開。

みっちゃんは今時珍しい、大家族の子供。

母方のじいちゃんばあちゃん:異常に元気。

両親:二人とも元気。

長女:兄弟序列の不動の一位。

長男:責任感強い。オカルト嫌い。

次男:まじめ。でもネタに走る。

次女:おしゃれ大好き。でも節約も大好き。

三女:みっちゃん。

三男:いたずらっ子。


次女と三女の間がちょっと離れている。

ソラちゃんはみっちゃんの幼馴染。

上の兄弟四人にもそれぞれ同い年の幼馴染がいる。

三男にももちろん幼馴染がいるが、彼らの中でも一番精神年齢の低い子の精神体が立候補。

最後だからか、彼らが一人一人つき添っている。

ちなみに、みっちゃん兄弟の幼馴染は、それぞればらばらの家庭の子という設定。

いくらなんでも全員兄弟って無理があるぜ。



生まれた時からの幼馴染は、両親と彼らの仲間その1。

そして長男と彼らその2。

三女のみっちゃんとソラちゃん。

後の四人は、引っ越してきたり、幼稚園で一緒だったり、小学校で一緒になったり。

どんなに遅くても小学校二年までには接触して仲良くなっているあたり、みんなそれぞれ執着が強い。

彼らはみっちゃん兄弟が可愛くて仕方ないのだ。

っつーか、固定ファンがいる家族ってすごいな。


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