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第12話 『お嬢様とは』

 衝撃的だった。実際、お城に住んでいる人なんて見たことがなかったからだ。山崎を含め、全員の口が開いていただろう。西宮以外は。まず始めにツッコミを入れたのは、姫路だった。


「あのお城、西宮の家だったのかよ!!」


 普通の驚きだったが、そりゃそうだった。これ以上に表現のしようがない。驚きのあまり、小島が口走った言葉。


「あー、そりゃ21万円ぽんと出るわけだ」


 声は震えていたが、SCウォッチの時のお金の謎が遂に明かされた瞬間だった。その後、西宮から発せられた言葉は更に衝撃を生んだ。


「明日、うちに来てみますか?」


 松川がすぐに食いついた。


「いってみたーい!」


「では明日、学校の前で集合しましょう」


 その提案に、皆が興味を示していた。山崎と姫路は、一度二人で見たことがあったお城だ。当然、入ってみたい気持ちがある。小島と神宮と躑躅森は『お城』と聴いて、興味を持ってた。


「では、また明日会いましょうね。学校の前に10時集合にしましょうか」


 といい、みんなが了承した後、解散した。山崎と姫路は電車に乗って、話をした。


「なあ、姫路。お嬢様って本当にいるんだな」


「そうだな。あれは確実に本物のお嬢様だろうな。きっと、私服もゴージャスで、夕食もステーキとか普通に出てくるんじゃないか」


「この前執事を学校に連れてたけど、あれも本当だったんだな」


「きっとテレビもすごく大きい物があって、そのテレビでゲームするんだろうな」


 などと、妄想話を勝手に進めていた。


「しかし、日曜日にお邪魔してもいいのかな? 両親の仕事も気になるところだけど、仕事が休みの日じゃないのか?」


 と姫路に訊いてみたが、これと言って解決できる言葉は返ってこなかった。姫路と別れ、家に帰宅した。そして今日あった出来事について、母と話をした。


「うちのクラスの西宮っていう子、お嬢様だったんだよ。学校の近くの湖の上に建ってるお城、あそこに住んでるんだって」


 母にそう言っても、母は興味をあまり持っていなかったようだ。


「へー。お嬢様って本当にいるんだね」


 山崎の性格は、きっと母の物を受け継いだのだな。そう実感した瞬間だった。興味の無さは、自分と似ているところがある。


「明日、その子の家に遊びに行くから~」


「ふいふい。行ってらっしゃいね」


 やはり、興味がないようだった。これでも仲のいい親子だとは思っている。ちゃんと会話もするし、親に反抗するようなこともあまりしてこなかった。

 

――翌日


 今日は日曜日で、別に学校に行くわけじゃないので私服だ。そういえば、高校になってから休日に友達と遊んだ事はほとんどなかった。みんなはどんな私服を着てくるのか、少し楽しみでもあった。


 学校の前に着く。山崎のSCウォッチは時計として使われており、普通に活用していた。時計を見ると、まだ9時30分だった。つまり、30分も早くに着いてしまったのだ。流石に誰もいない。学校の前で立って待っていると、怪しい人物に思われてしまうのでは、と思っていたが、誰かがこちらに向かってきていた。


「おはよー! 山崎君」


「松川! おはよう」


 松川も到着時間よりも早くに来てしまうタイプの人だったらしい。


「おおー。私服の山崎君、やっぱり学校とは印象が違うね」


「そうか? 松川も、制服と違って中々印象が違うぞ」


 普通の格好、私服はファッションセンスが試されると思っているが、実を言うと山崎にはあまりセンスは無い。服を買いに行くのも、選ぶのもほとんど母親。適当に着て、適当な感じの格好で来たのだが、これは普通なのだろうか。少し山崎は心配していたが、松川の反応を見る限り大丈夫なのだろう。


 少し松川と会話していると、躑躅森がやってきた。タンクトップ姿で、運動する奴にはぴったりの感じの服装だった。まさにイメージ通りという感じだ。


「おはよう! 山崎、松川」


「おはよーつつじ君」


 待っていれば、どんどん人が来る。次に姫路が来た。姫路の服装は何もツッコミを入れるほどのない普通の服だった。山崎は、このクラスの特徴の無さナンバー1は自分か姫路かと考えていたが、自分では無かったとこの時自覚した。神宮も、集合時間の10時より少し前にやってきた。神宮は、学校にいる時と逆に、少し子供っぽい格好だと思った。帽子も被っていて、少女というよりは、少年のような格好だったという印象だ。そして、また一人少年がやってくる。だが、その少年はあまり見覚えのない子だった。


「おはよう、みんな」


 だが、スマホをいじりながら来たので誰かわかった。小島だったが、学校との印象とは激しく違っていた。そこで、松川は最初に疑問を吹っ掛けた。


「あれ? 小島君、眼鏡は無くても大丈夫なの?」


 そう、小島は眼鏡を掛けていなかったのだ。これに気付かなかった自分は、少し情けなかった。小島は、学校では毎日眼鏡を掛けていた。今日は掛けていなかったので、新鮮に感じた。


「ああ、眼鏡ね。あれ実は伊達だよ。度は入っていないし、パソコンの光を遮断するために掛ける物だから、今日は掛けてない」


 少し驚いた。別に小島は、目が悪くて眼鏡を掛けてる訳では無かったからだ。


「そうだったのか……」


 初めて声を掛けた時、山崎は眼鏡を掛けてパソコンをいじっているような人という印象の元、話し掛けたのだった。心の中で、小さく謝った。


 そうして全員が揃った時に一台のリムジンが学校の前に来た。中から出てきたのは、西宮だった。西宮は、白いワンピースを着ており、いかにもお嬢様というような格好だった。


「みんな揃っていますね。じゃあ行きましょうか」


 そう言われ、リムジンの中に案内された。みんな初めてリムジンに乗ったと思う。それぞれ緊張していた。リムジンの中は広く、高校生が7人入ったところで狭くは無かった。


 5分程度走ったところで、例の湖の前まで来ていた。桟橋が湖の中心まで繋がっている。湖の中心には、大きな城風の家が建っていた。城風というのは、西宮の家と発覚した時にあれは家だったんだと言い聞かせたので、そういう考えに至っていた。ゆっくりと門をくぐり、噴水がある家の中をリムジンが走った。そうしていると、すぐに家の前に着いた。


「着きましたわよ」


 そう言い、西宮は降りた。みんなも順に降りていき、圧倒された。目の前にはびっくりするほどの高さの家が、佇んでいたからだ。


「わー……家大きいねぇ……」


 と松川は口から言葉を漏らしていた。みんな周りを見渡していた。囲うように建てられている家、こんなのは初めてだ。そう言わんばかりの見渡しっぷりだった。


「さあ、みなさん上がってください」


 そう言い、扉を開けると、目の前には大きな広間、中央には階段が分かれていた。


「2階の、左側に客間があるので、そちらまで行きましょうか」


 そうして学園カメレオン一行は、中央の階段を上ろうとした。すると、Tシャツにジーパンの若い男が、眠たそうな顔をして降りてきたのだった。松川が西宮に訊いた。


「お兄さん、すごく庶民的だね?」


「ああ、父ですよ」


「えー!」


 松川だけではない、他のみんなも驚いていた。若く見える男性だが、あれを父親と言うのには若すぎると思ったからだ。リアクションを取っているうちに、その若い男性が口を開けた。


「お、娘たちの友達かい? みんな、ゆっくりしていってね」


 意外と陽気だった。山崎が思っていたほど、高貴なイメージは無かった。


「ずいぶん若いようだけど、歳を訊いてもいいかな?」


 と松川は西宮に訊いた。


「興味あるんです? じゃあ後でお話しましょうかね」


 と言い、階段を上り始めた。それに続いてみんなも父親にあいさつしながら、上っていった。客間に到着すると、ソファーに腰掛けてくださいと言われた。ふかふかの、気持ちのよいソファーだった。大きなテレビにゲーム機に、と客間と言っても普段から使用している部屋だという印象だった。


 すると、西宮のお父さんが部屋に入ってきた。


「よし、僕の昔話でもしようかな!」


 何故か、昔話を聴かされることになった。この話によって、西宮に関する色々な謎が明らかとなる。

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