サーシャの想い人
こんなに凄い魔法を持ってるヒロインならきっとあの小説通りにルル様かシリウス様とくっついて、瘴気に当てられた魔獣や疫病を無くしていくのだろう。
サーシャは2人のどちらかを気になってたりしないのかしら?
私は不意に気になってサーシャに小声で話しかけた。
「ねぇサーシャさん…シリウス様とルル様の事どう思っていらっしゃるの?」
「シリウス様と…ルルド王太子殿下…ですか?」
サーシャはキョトンとした顔で私を見る。
「ええ。気になったりとか…どちらかを好きだったり。」
「私がお2人の事をですか…?」
サーシャはチラッとルル様を見て私の方へ振り返る。
「それは絶対無いです。お2人の事はタイプじゃないので。ルルド王太子殿下は無表情で何考えてるか分からないですし、シリウス様はちょっと…闇感強くないですか?」
どキッパリと言ったサーシャ。表情を見るに恋の「こ」の字も無さそう。
サーシャの気持ちは物語とは変わってしまってる。
「どなたかお慕いしている人でもいらっしゃるの?」
「実は…」
(実は…?って事はいるのね…!)
私はドキドキしながら次の言葉を待っていた。
チラッとサーシャは私を見る。その顔は頰は赤く目は潤んでいて、私が男性だったら好きになってしまいそうなくらい可愛い表情をしていた。
「どうしましたか…?」
「いえ…やっぱりまだ恥ずかしくて」
そうか…恋をしている人は他の人に好きな人の名前なんて恥ずかしくて軽々しく言えないわよね。
「良いのよ!聞き出そうとした私が悪かったわ。また…言えるようになったら教えて下さいね。」
私はサーシャに耳打ちした。
「…こういう優しくて気遣いが出来るところが本当に好き…。」
「?」
サーシャはボソッと何かを言っていたけれど、私には聞こえていなかった。
「スー、体の傷はどう?サーシャちゃん、ありがとう本当に助かったよ。」
カイお兄様が私達の後ろから話しかけてきた。
「お兄様。サーシャさんのおかげでこのとおり、すっかり良くなりましたわ!光魔法って本当に凄いのですね!サーシャさん、本当にありがとうございます。」
「いえ!私の力が役に立って本当に嬉しいです!」
「お!スレイちゃん傷が治ってる!良かった〜!」
いつの間にかドアの前にシリウス様が立っていた。
「シリウス様!?いつからそこにいらしたんですか!?」
「ついさっきだよ。」
サーシャは怒りながらシリウス様の前まで行く。
「シリウス様…見損ないました!!スレイ様にこんな怪我までさせて…!信じられない…よくここに顔を出せますね?」
「サーシャさん待って!怒ってくれてありがとう。でも大丈夫よ。シリウス様には謝ってもらいましたし仲直りもしましたの。」
「スレイ様…貴方は優しすぎます!!簡単に許しちゃダメですよ!ほら!この顔、全然信用できない顔でしょう?」
(仮にもこの国の王子殿下に凄い言いようだわ…サーシャさん怒られないかしら…)
時々サーシャさんは大胆な言動を取る。
私がヒヤヒヤしてしまうわ…。
「本当に反省してるよ…。もうしないってスレイちゃんにも話したんだ。」
シリウス様がうつむき加減でいるから表情が読めない。
「〜っ!やっぱり全然信用できない!」
「信じてくれなくても良いよ。でももう監禁したりはしない。…しないけど、俺はスレイちゃんの事諦めないよ。絶対俺のものにしてみせるから。」
シリウス様は私に近づき私の手を取りキスをする。
「な…っ!!お前手が早すぎるだろ!!スーは俺のものだ!お前には絶対に渡さないからな。」
ルル様が慌てて私の手をシリウス様から引き離してギュッと抱きつきながらシリウス様から守ろうとする。
(ん?何で私の取り合いみたいになってんだ?)
「スー、お前はどっちを選ぶんだ?」
「スレイちゃん?まさか…俺を選ばないなんて事はないよね…?」
「いや…選…ま、まって…」
2人に迫られて圧がすごい…。
「スーがいないと俺無理だ…。」
「俺だってスレイちゃんがいないと何するか分からないよ…。」
「ふ、2人とも落ち着いて下さい…!」
金色の髪に瞳の色が金色の王太子と、金色の髪に瞳の色が赤色の第二王子の2人が私を囲って問いただしてくる…。
「待ってください!!お二人ともスレイ様が困っています!!スレイ様を困らせる人にはこれ以上近づかせませんから!」
ヒロインであるサーシャが取り囲まれていた私に抱きつく様に庇ってくれた。
「私がスレイ様をこれからは守ります!」
「へぇ〜、なにそういう事?サーシャちゃんもライバルなの?」
「サーシャ…俺からスレイを奪う気か…」
(え!?なになに…!?どうなってるの〜?)