離宮からの脱出(2)
「そうだった…話を戻させてもらうね。あの時スレイちゃんに…物凄く拒絶されちゃって。その時に時空の歪みが発生したんだ。」
「そうだった…私…どうにかしないとって思って…そうしたらいつの間にか過去に飛ばされてたわ。」
「時空の歪みで過去に飛ばされる…?」
誰もが初めて聞く様な出来事で少し沈黙が続いた。
「白いモヤのようなものが出てきて…その後に空間の歪みが出来ていた。ただ、その時スレイちゃんは気を失っていて胸の辺りが光っていたんだ。俺はそれに気を取られて必死だったから、俺もよく覚えてなくて…」
ルル様もカイお兄様も顎に手を置き考え込む。
「やはり聞いた事がないな…そんな現象が起きたなんて。」
「過去に戻った時も、何度か空間の歪みが現れて色んな過去に飛ばされました。全て王城での出来事でしたが。」
「やっぱりスーには特別な力が備わっている気がする。魔力はないけど人の心を視る力、魔獣と話せる力…それに過去に戻った事も心の澱みが綺麗にする事もすべて事例がない。」
ええ…。名前も登場しないようなモブなのに前例のない力ってどういう事…?
私もうーんと眉間に皺をよせて考え事をしていた。
そんな私にカイお兄様は私の隣に座り肩をポンと叩く。
「もっとゆっくり話を聞きたいところだけど今はスーの怪我も治したい。早くここを出よう。」
カイお兄様は優しく笑いながら私の頭を撫でてくれた。
「そうだな…先ずはこの足枷外さないと」
「俺はもう魔力切れになっちゃったから兄さん2人でお願いできる?何重にも術がかけられてちょっとややこしいんだよね。」
カイお兄様が私の足枷を見て少しだけ困った顔をしている。
「本当だ…。僕でも解除するの魔力切れ起こしそうだな。何故こんなに何重にも術がかかってるんだ?これは王妃様の仕業か?」
「母上自体そんなに魔力はないから他の者にかけさせたんだろうね。」
「俺がやる。どけ。」
ルル様は私の足枷を触り、呪文を唱えて始めた。
顔色ひとつも変えずにあっという間に枷が外れてしまい、皆が目を丸くしていた。
「ルル…こんなにすぐ解除できるなんてお前本当にどれだけ魔力があるんだよ…。」
「はぁ…。兄さんの魔力量カンストしてんじゃない?俺はこんな人と張り合わなきゃいけないなんて馬鹿馬鹿しくなってきたよ。そりゃ努力しても無駄だわ…」
カイお兄様もシリウス様も若干引いてる…。
確かにルル様は敵に回すと怖いかもしれないわね…。
「ルル様…ありがとうございます。」
「流石に俺でも治癒魔法は使えない。病院での治療となると時間もかかる。完治の早い治癒魔法が使えるのは光魔法だけだ。サーシャが治癒魔法使えるんだが…。」
「スー…火傷の部分も手首も早く治療してあげたいんだけど、王城の者に…特に王妃様には知られない様にここから出なきゃいけない。」
「そうですわね…どうしたら…」
「じゃあ僕が母上のところへ行って時間を稼ぐからその間にここから出て。」
シリウス様はニコッと笑いながら言った。