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元の世界(3)

 

「信じられない…過去の出来事が一致している。スー達は本当に過去を見てきたんだな…」


ルル様は私が王城でしか知り得ない話を知っていた事でかなりびっくりしている様子だった。

カイお兄様も動揺を隠しきれない様子だった。


「それが本当なら…現王妃様の仕掛けた魔力でルルは魔力暴走を起こしてそれを庇う様にルルの母親が亡くなったって事か…!?」


「はい…。サラ王妃様はそう仰ってました…。」

「ルル、お前は知ってたか?」

「いや…俺もハッキリと確信は持たなかったが、もしかしたらという考えは頭によぎっていた。ただ証拠がなかったから…。」


(王妃様の策略でルル様は自分のせいだと父親、国王陛下に責められ、周りの態度も急変して疎外された存在になっていたなんて本当に酷い話だわ…)


「俺は王妃を許す事はできないが…もうあれは過去の事だ。今は今後の王妃がどう出るのか対策を練らねばならない。王妃は俺の命をまだ狙っているだろうから。それに…スーのその特殊な能力…」


ルル様は私を見ながら少し眉間に皺をよせた。


「シリウスの黒く澱んでいた心が元の宝石の様に戻った事、過去に行く事が出来たこと。これは他人にこの事を漏れない様にして欲しい。王妃にバレると厄介だ。」

「はい…分かりました。」


ルル様は私の手を取って手首を触った。


「話を先にして悪かった。傷…痛むよな?」

「少し…ですが大丈夫ですわ。」

「最後に質問していいか?どうしたら過去に戻れたのか覚えてるか?」


(過去に…正直どうやって戻れたのか曖昧すぎて覚えていない)


「確か…手首に枷をつけられてしまった時に」


私はシリウス様との出来事を思い出し固まってしまった。


(あの状況の時の事は…言えない。…上手くかわして説明すればなんとかいけるかしら…)


「どうした?」

「あ…いえ、あの時の事はとても曖昧で…よく覚えてないと言うか…。」


「え〜覚えてないの?あんなに熱烈なキスしたのに?」


(シリウス様…!!いつの間に…!?)


さっきまでソファで寝ていたシリウス様がルル様の後ろからひょこっと顔を出す様にして話に入ってきた。


「キ、キス!?」

「き、きすぅう!?」


目を丸くして驚いていたルル様とカイお兄様の視線がとても痛い…


「シ、シリウス様…もう大丈夫なんですか!?」

「ああ、少し回復したから大丈夫だよ。」


「まて…キスとはなんだ…」


ルル様は私とシリウス様の会話を遮って怖い表情でシリウス様に詰め寄る。


「え!?あの…なんて説明したら…」


オロオロしてしてるとジャラジャラと足枷の鎖がベッドからずり落ちる。


「なんだこの鎖…」


ルル様はベッドからずり落ちた鎖を辿り私の足首に付いている枷を見つける。


「どう言う事だ…?シリウス…まさかお前無理矢理…」

「第二王子殿下…貴方は私の大切な妹に何をしたんだ…!!」


ルル様とカイお兄様が同時にシリウス様を責め立てた。


「あぁ、足枷は俺じゃないけどね。でも良いタイミングだなと思って…。スレイちゃんの事が本当に好きだから兄さんよりも先に奪いたかったんだよ。どんな手を使ってでもね。」


ニコッと笑うシリウス様にルル様は険しい表情でシリウス様の頰を殴った。


殴られた頰を触りながらシリウス様はハッと笑いながらルル様を睨んだ。


「本当に…兄さんの存在がウザいんだよ…!俺が努力しても結局はいつも兄さんと比べられては嘲笑われて…俺がどれだけ惨めな思いをしたか分かるか?!兄さんだってずっと俺が助けを求めても無視し続けたじゃないか!」

「…しょうがなかったんだ。仲良くしていると周りの奴らにお前まで狙われかねなかった」

「そんなのただの言い訳だろ!兄さんのレベルなら狙われた所で返り討ちにも出来るじゃないか!…どうせ個人的な感情で俺と一緒に居たくなかっただけだろ…。」

「シリウス…」

「あの頃俺がどんなに兄さんに助けを求め続けたか…兄さんは知らないだろ。兄さんなんて嫌いだよ…俺の前から消えてくれ…」



このままだとまた2人の関係が悪化してしまいそう…。

どうしたらいいの…。


シリウス様の心を視てみると黒く澱んだ色は全くない。今のシリウス様にはルル様に殺意がない事に少し安心した。


ここで関係が悪化したら何も変わらない。

上手く説得出来るか分からないけど…

これ以上2人の関係を拗らせたくない。


「待ってください!!お2人とも…!私、過去に戻った時、2人がとても仲良かった事知ってるんです。だから少し言わせて下さい。」


ルル様とシリウス様は私の方に顔を向けてくれた。





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