幼少期の2人(4)
「この日は…覚えている。兄さんの母親が亡くなった日だ…。」
「え…?」
「いや、正しくは兄さんが自分の母親を殺してしまった日なんだ。この日は9年前だ。」
(ルル様が…!?何故そんなことを…。)
ドアの隙間が少しだけど空いていて2人でこっそりと覗き込んでみた。
その部屋には亡くなられたルル様のお母様が安置台の上に乗せられ、花が沢山散りばめられていた。その横でうなだれるように国王が座っていた。
「なんで…なんでこんな事になってしまったんだ…。お前のせいだ…お前が力の暴走なんてするからだ…!!お前が自分の母親を殺したんだ!」
国王は取り乱して小さなルルドに花瓶を投げつけた。
花瓶が小さなルルドに当たって割れてしまう。体は水に濡れ、花瓶の破片が顔にあたり頰から血が流れていた。
「もうお前の顔は見たくない。去れ!」
国王の怒りと悲しみが困った怒鳴り声で小さなルルドは少し震えていた。
「スレイちゃん、こっちにおいで!扉開くよ!」
小声でシリウス様が私を呼ぶ声が聞こえて急いでシリウス様の近くに行き隠れて様子を見ることにした。
「あなた…悲しい気持ちは分かりますわ。でもルルドも故意でやったわけではないのですから、どうか大目に見てあげてくださいませ…」
隣にいるのはシリウス様の母、サラ様だった。その隣には小さなシリウスもいる。
「…今日から私達の息子は1人だけだ。1人しかいないんだ。サラ、シリウス、今日から王宮に住もう。俺の後継ぎを…。シリウスを立派に育て上げなければならぬ。」
「あなた……分かりましたわ。今日から私達はずっと貴方のお側にいますわ。今はどうか心も体もお休みになって?また後でしっかりと話し合いましょう?」
「…そうだな。私は先に出る。」
国王は護衛と一緒に自室に向かっていった。少しふらつきながら歩いている様は王妃様が亡くなられたことが相当ショックだったのだろう。
「ははうえ…ぼくも、さきにもどります。」
小さいルルドを探しにいくかのように小さいシリウスもキョロキョロと探しながら部屋を出ていく。
サラ様はまだ王妃様がいる安置室に1人残って暫くサラ様は王妃様を眺めていた。
「フフ………フフフ………アハハハハハハッ!!何?こんな簡単に上手くいっちゃうの!?もっと早くやれば良かったわぁ〜。どう?息子に殺されるなんて思いもしなかったでしょ!アハハハハハ!ほんのちょっと紅茶に薬入れただけなのにあんなに魔力暴走するなんてね!!どれくらい魔力が多いのかしらあの子供!貴方も息子を正面から庇うから死んじゃったのよ!まぁそうなるだろうと目論んでたけれど…。本当に滑稽ね。これで私は王妃の座につける!後はシリウスを王太子にするだけだわ!アハハハ」
サラ様は楽しそうに笑った後、花瓶にさしていた花だけを取り王妃様の身体にパサッと置いて上機嫌で帰っていった。
「まさかとは思ったが…やっぱり母上が…。」
「ルル様の魔力をわざと暴走させてルル様の母親がそれを庇って亡くなってしまったってこと…?それを仕組んだのはサラ王妃殿下だったなんて…。あ…シリウス様私ちょっと行ってきます。」
「行くって…ちょっと待って…!」
私は走って小さいルルドとシリウスの所へと向かった。その後を追うようにシリウス様もついてくる。
「お兄ちゃん!まって!」
「…来るな。」
「いやだ!お兄ちゃんがしんぱいだよ」
「来るなって言ってるだろ!!」
「でも…血が…。」
「…俺は母親を殺してしまった。父…陛下に見捨てられた。もう俺の周りには誰も味方がいなくなるんだ。お前ももう俺に近づくな。お前まで酷い間に合う…」
「い、いやだよ!ぼく…お兄ちゃんといたい!」
「俺はこの先、生きてるかも分からない…。俺を狙っている奴には味方がいない今が絶好のタイミングなんだ。いつ襲われてもおかしくない…自分を守るのに精一杯になるんだ!もうシリウスの事庇えない。お願いだからもう来ないでくれ…」
「お兄ちゃんぼくが…ぼくが強くなって守るから!」
小さなシリウスはルルドの手を掴むが思いっきり振り払われた。
「俺にもう関わるな…お願いだから…それにお前が父に可愛がられる姿を見るのが…辛いんだ…これから俺は父にもういない存在かのように扱われるんだ…」
「お兄ちゃん…」
小さなルルドとシリウスはそれ以上何も言わずにそれぞれの方向へ涙を拭きながら歩いて自室へと戻った。
「シリウス様…」
シリウス様は小さなルルドをずっと見ていた。何を思って見ているのか、ただひたすら背中を追うようにみていた。
「シリウス様、ここから離れましょう。元に戻れるのか分かりませんが手を握ってみても良いですか?」
「あ、ああ。」
私はシリウス様の手を握る。するとまた白いモヤとともに時空が歪み始めた。
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