幼少期の2人(1)
「ん…ここは…?」
気を失って倒れてから目を覚ますと私はシリウス様と手を握ったままだった。シリウス様はまだ目覚めていない。
「シリウス様…シリウス様大丈夫ですか?」
私はなかなか起きないシリウス様の体を少し揺らしながら声を掛けた。
「ん…スレイちゃん…。」
「良かった…シリウス様どこかお怪我はありませんか?」
「いや、大丈夫だよ。スレイちゃんこそ大丈夫なの…?さっきのは何?」
「私にも初めての事でよく分からないです…何が起こったのか、今ここは何処なのか…」
シリウス様は立って辺りを見回す。
「ここ…王城の中だ。」
「王城…!?」
「シッ!誰か来る!こっちに隠れて」
コツコツと音を立てて歩いているのはシリウス様の母、サラ王妃殿下と隣には4歳くらいの小さい男の子がいた。
「え…嘘だろ?あれは…俺だ…」
シリウス様は目を丸くして小さい男の子を見ている。
「あの子がシリウス様?どういう事なんでしょうか…。」
「嘘のようだけど…どうやら俺たち12年前の王城に来てしまったみたいだ。」
「じゅ…12年前!?何で…戻れるのでしょうか…。」
「いや分からない。スレイちゃんの目の力で俺たちは過去に来ている事は間違いない。また目の力を使って戻る事は出来るだろうけど…問題はどうすれば力が発動するか…」
「そんな…分からない限り戻れないって事?!」
「今は取り敢えず、俺たちの姿が見えるのか見えないのか分からないから人目につかない場所まで行こうか。」
「分かりました」
目の前に王妃様と小さいシリウス様が誰かをずっと待っているみたい。私達も2人が去らない限り動けない…。
身を潜めて待っているしかないわ。
少し経ってからカツンカツンと足音が聞こえてきた。
「あなた…!お会いできて嬉しいわ。」
そこにやってきたのはシリウスのお父様、カムバーディナル国王様だった。
「サラ、君は美しいな…。いつも会う度に美しくなっていく。」
「お褒めに預かり光栄ですわ。シリウスももう4歳になりましたのよ。とても聡明で貴方によく似ているでしょう?」
「そうだな…瞳が赤くなければ俺に似ていただろう。
どうして赤い瞳で産まれてきたのやら…。優秀なルルドを超えられるようなら本邸に入れてもいいのだが…シリウスお前はルルドよりも魔力が弱い。他で超えられるものがあればまた考えてやろう。」
「…はい父様。」
話の途中で侍従が入ってきた。
「失礼します。王妃殿下と第一王子が王室でお待ちです。」
「ああ。直ぐに行く。サラ、また何かあれば侍従に伝えろ」
「ありがとうございます。」
王妃殿下と第一王子…?という事は、この時はまだルル様のお母様は生きていたのね!サラ王妃様はまだ側妃という事よね…。
国王が去っていった後、サラ様は自分の持っていた扇子で小さいシリウスの頰を思いっきり叩いた。
小さいシリウスは叩かれた拍子に倒れてしまった。
「なんで貴方はあの子供より魔力が弱いのよ…!それによりにもよって赤い瞳なんて…忌み嫌われる象徴じゃない!せっかく産んでこんなに可愛がってるんだから私の言う事聞いてちょうだいね?貴方はあの子供より優秀でないといけないのよ。それにしても…あの女本当に邪魔…我慢してきたけどもう限界だわ…何で私が王妃じゃなくて側妃なわけ…?あの女を消してしまえば私が王妃になれる…そうしたら貴方も私も本邸に住めるんじゃないかしら?アハハッ…そうだわ!そうすれば良かったんじゃない!これから楽しくなってきたわ」
サラ様は小さいシリウスを置いて1人で離宮へと帰っていった。
小さいシリウスは叩かれた頰をずっと手で覆っていて真っ赤な瞳から涙が溢れそうになっていた。