離宮での監禁暮らし(3)
シリウス様が用意してくれていた桶に入った水を見つけた。
ここまでなら鎖も届くし急いで顔を洗ったり、自分の身支度を終わらせなきゃ!シリウス様…全部お世話するだなんて言ってたけど無理…恥ずかしいし何より怖い。
私が近くにあったタオルで顔を拭いているとコンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「お待たせ、スレイちゃん朝ごはん食べようか!」
朝からシリウス様はご機嫌だ。すごく楽しそうにしている姿を見ると明るくて爽やかさがある。あの悪魔のような姿とはまるで正反対。
部屋にあるテーブルにシリウス様が朝食を並べてくれている。
「あ、あの、流石に王子殿下にそんなことさせるわけにはいかないので…私がやります。」
「うーん…そう思うのは当然なんだけど。俺がお世話したいんだよね〜。そうだ…やっぱりこれ、使おうか。」
シリウス様は棚から枷を取り出して呪文を唱えはじめた。
その枷はシリウス様の手から消えていつの間にか私の手首にはまっていた。
「え…!?やだ…っ!外してくださいシリウス様!」
「これでスレイちゃんは何も出来なくなっちゃったね。俺がやるから、支度してる間大人しくしてて。」
私の言葉をスルーしてテキパキと準備をする。
「よし、お待たせ〜!さぁここに座って食べようか。」
シリウス様は私の手を引っ張り椅子に座らせる。
「はい、スープからね。あーんして」
「え゛…むむ無理ですわ。」
「でもその両手じゃ食べられないでしょ?」
「そう…ですけど…そんな恥ずかしい事出来ません。」
「大丈夫。今は俺たちだけしかいないんだから何も恥ずかしがる事はないよ。はやく食べて…はやく。」
シリウス様の目がどんどん怖くなってる…。これ食べなかったら悪魔降臨する…?そうなったら私ではどうにも太刀打ちできなくなるどころか恐怖で動けなくなる。
私は思いきって口を開けて食べてみると、シリウス様は上機嫌に笑ってこっちを見ていた。
「食べる姿も可愛いんだね。スレイちゃんて全部が可愛いよね。いつ見ても癒される…。さぁ、こっちのパンとベリーも食べて!」
私はされるがまま口に運んでもらって食べていた。
「あの、シリウス様…。この手枷いつ外してくれますか?」
「んー。この枷も魔法使ってて外す時は魔力が結構いるんだよね。だからそうそう外せないかなぁ。今日はこの後俺が勉強も教えてあげるね。スレイちゃん勉強頑張ってたでしょ?因みに俺はもう研究科のカリキュラムがそろそろ終わるんだよね。だから何でも答えられるよ。」
「勉…強…」
私は勉強がしたいわけじゃなくて早くここから出たい。この手足の枷も外してもらいたい。この状況が不安でしかないのにシリウス様はそれを無視するかのように次から次へと話が進んでいく。シリウス様とは全然話が噛み合わないし、私本当にここから出られないの…?
「シリウス様、ご飯はもうお腹いっぱいなのでいらないですわ…。」
「もう?まだ半分も食べてない…どうしたの、泣いてるの?」
「私は…早く帰りたいんです。手足の枷も外して欲しいのに…シリウス様に私の言葉が全然届かない。」
「俺さぁ…言ったよね?もうここからは出られないって。何言っても無理だから諦めて?それに俺、スレイちゃんの泣き顔が1番大好きなんだよね。その顔見るとどんどん泣いて欲しくて嫌な事沢山してしまうかも。」
シリウス様は私の手を取り、目を瞑りながら自分の頰に摺り寄せる。そしてシリウス様が目を開けた時に赤くキラキラした瞳が泣いている私の顔を映していた。
「スレイちゃん…」
シリウス様の顔が私の顔に近づいてきた。
「だ、駄目です…キスは駄目ですわ。」
私は咄嗟に両手でシリウス様の口元を押さえた。
シリウス様は私の手を払う。
「なんで…?もう初めてじゃないし、いいじゃん。」
「こういうのは嫌だって何回もお伝えしてます…。」
「そっか…嫌だって言ってたね。じゃぁ嫌な事なら沢山しなきゃね。もっと泣いてる顔見せて…」
シリウス様は抵抗する私の手を押さえつけてキスをした。
「ん…っやめ…」
「スレイちゃん、ベッドに行こうか。」
「い、嫌です!お願い離して!」
シリウス様は私を抱きかかえてベッドに移動した。