離宮での監禁暮らし(2)
あれ…?
私…知らない部屋で寝ている夢を見た気がする…。そろそろ起きなきゃ…もう朝?
記憶が曖昧でよく分からないまま私は目を開けて上半身を起こした。
「あ!おはよう!やっと起きたんだね〜。結構寝てたから心配したんだよ?」
…え?
私は目を大きく開けて凝視してしまった。
「シ、シリウス様??何で…」
辺りを見回すと見たことのない部屋…あれは夢じゃなくて現実だったの?!そしてシリウス様が隣でニコニコと微笑んでいる。
「私…何でここに…」
「ああ、まだちょっと混乱してるよね。君はお茶会で倒れてそのままこの部屋で眠ってたんだよ。寝過ぎてもう朝になっちゃったね。」
「そう…なんですか。私倒れちゃったんですね。シリウス様ありがとうございます。私そろそろ戻らないと…」
足をベッドから出そうとするとジャラジャラと金属音が聞こえる。何だか足も重いような…?
そのまま歩こうとすると何かに引っかかってつまずき、転んでしまった。
「スレイちゃん!大丈夫?鎖に足が絡まってるよ?」
「鎖…?なんで…え…っ 足枷!?」
「あぁ、これはスレイちゃんが逃げられないように鎖で繋いでるんだよ。君はもうここから出られない。でも大丈夫!僕が全部お世話してあげるから。朝ごはんも一緒に食べようね!」
優しく微笑むシリウス様に私はゾクっとしてしまった。怖くて動けない…。
「な、何を言ってるの?どうしてこんな…」
「震えてる…可愛いね。この状況が怖いの?それとも僕が怖い…?」
シリウス様は優しく私を抱きかかえベッドへと座らせる。
…ルル様から加護をもらったのに何も反応しない…!
ネックレスも…何で!?
私がネックレスを触っていると、その手をシリウス様が握った。
「スレイちゃん、兄さんに加護と危険察知魔法かけてもらってたんだよね?あれは全部母上が持っているアーティファクトで解除したんだ。だから君がここにいる事は誰も知らないし、今頃僕達の影が学園で授業を受けてるから皆学園で生活していると思ってるよ。」
「影…?」
「そう。僕とスレイちゃんの影を利用して人型魔法で本当の人間みたいに普通に生活しているんだよ。魔法って便利だよね。」
「なんでこんな事……」
「ん〜そうだなぁ。母上が僕に君をプレゼントしてくれたんだ。こんなに近くに大好きな人がいてずっと一緒にいられるんだ。だから僕は君を大切にしようと思ってるよ。」
「プレゼント…王妃様が私を…?」
狂ってる…。王妃様もシリウス様も…。
でも、今は何言ってもシリウス様には届かなそう。
そういえば…小説の内容にもヒロインが離宮に監禁されているシーンがあったわ。ヒロインじゃなくて私に変わっちゃったのが不思議だけど…でも小説のストーリーではちゃんとヒロインはシリウス様にこんな事をするのはよくないと説得して自分の気持ちをハッキリ伝えた事で離宮から出してもらえてた。本当にお互いがお互いを好きだと認識するシーンだった。
だったんだけど…
私も…説得出来るか?
そもそも私はシリウスに恋をしているわけではない。両思いだと認識してここから出してくれたのなら…無理なのでは…。これは詰んでないか…?
いや、説得だけでも…!でも小説のヒロインはどう説得したのか全然思い出せない。こんな時細かく覚えてるのがセオリーじゃないの…!?でもどうにかしなくては!!
私はぎゅっと手を握りしめ意気込み、シリウス様と目を合わせた。
「シリウス様!こういう事はよくないです。私を解放してください!」
安直なセリフしか出てこない…
「それで説得してるつもり?なんにも心に響かないけど?逃げるつもりなら手も縛り付ける必要があるね。」
逆効果だった。
私に説得なんて無理だよ…。小説のセリフ覚えていれば違ったんだろうけどどう頑張っても何も思い出せないし…。
しょんぼりする私を見ながらクスッと笑うシリウス様。
「あ、そうだスレイちゃんお腹空いたでしょ?今朝ごはん持ってくるからちゃんとお利口に待っててくれる?」
シリウス様はパタンと扉を閉め食事をとりに行ってしまった。
どうしよう…今の私に何が出来る…?どう動くべきか。とにかく悪魔バージョンのシリウス様が降臨しないように上手く切り抜けないと…!