王妃の策略(1)
「さぁ、今の内に行きましょうか。」
「えぇそうですね!」
私とサーシャは席を立ち、寮まで帰ろうとした。
私は目眩のようなクラッとする感覚に覆われ足元がふらついた。
「大丈夫ですか?」
近くにいた王城の護衛騎士に声を掛けられる。
「ええ…。大丈夫です。」
言葉とは裏腹にどんどん足元がぼやけてまともに歩けるような状態ではなくなってしまっていた。
これは…何が起きてるの…?
周りを見ても、ぐにゃぐにゃに見えて吐き気を催しそうだ。
「お嬢様、具合が悪いのなら控え室にご案内しますのでそちらで休まれては如何ですか?」
「いえ…お兄様が…いる…」
私は喋ろうとしても目眩の様な感覚がして喋られなくなっていく。
「スレイ様…控え室に行きましょう。…ゆっくり休んでください。」
サーシャの声が聞こえたけど何を言っているのかも分からない…。目を開けられなくなった私はそのまま倒れた。
「ご苦労様。この子は離宮に連れて行きなさい。」
「仰せのままに。」
「周りに見られないように運んでちょうだいね。」
そこに現れたのは王妃だった。
護衛がスレイを抱きかかえようとした瞬間バチっと跳ね返されてしまった。
その時スレイの額が光っているのを王妃が気付く。
王妃はクスッと笑っていた。
「あら、あの害虫も相当この子を気に入ってるようね、加護まで与えて。面白いわ…」
王妃は薬指に嵌めていた指輪をスレイの前でかざした。
『解除』
王妃が唱えると、スレイについていた加護や魔法が全て解除されてしまった。
「このエリクサー、つけておいて良かったわぁ。さぁ、貴方達人目につかないように運ぶのよ。」
護衛は言われた通りスレイを抱きかかえ人目につかないような道を選び離宮まで運んで行く。
王妃はサーシャに笑顔で話しかけた。
「さて…サーシャさん、だいぶ貴方も薬が効いてきたかしら?美味しくて素敵な紅茶だったでしょ?とても気分が良くなるのよ。」
「はい…とても美味しい紅茶でした…」
「いい?今から貴方はスレイさんと2人で寮まで帰るの。いいわね?」
王妃に言われたサーシャは催眠にでもかかっているような顔つきで目はボーっとしている。
「はい…。私はスレイ様と2人で…寮まで帰ります。」
「そう。とってもお利口ね。では気をつけて帰るのよ。」
「はい…」
サーシャは1人でそのまま寮へと歩いて帰っていく。
「…フフ、私から死角になりそうな席にワザと座っていたって事は警戒していたのかしら…スレイさん。さぁ後は上手くやってごらんなさいシリウス。」
カツカツとヒールの音を響かせながら王妃は会場へと戻って行った。




