ルルドの隠密行動(2)
「あの…アロイス様の事ですが…。ルル様を裏切ったというより何か事情がありそうです。アロイス様の心を視た時、濁りの中に怯える様な色もあったので…もしかしたら脅されているのではないかと思うんですが…」
私の言葉にカイお兄様とルル様は目を合わせた。
「そういえば…アロイスの母親は病気で療養していたな…治療が出来ずにあまり状態も良くないと聞いたが。」
「もしかしたら、シリウスに主導権を握られて母親の治療ができなくなっていたのかもしれないな。シリウスの言う事を聞かないといけない状況になってしまったと考えるのが妥当だろう。」
「そうだな。もしそうなら…アロイスの事を解決するのは早いかもしれない。直接俺がアロイスに話を聞いてみるのが1番早いだろう。」
「ルル、頼めるか?」
「ああ。後……スー。シリウスには気をつけろ。」
「はい…。でも…私はもう学園には居ない方が安全かと…」
「いや、学園は辞めなくていい。」
「え…?」
ルル様は私のおでこにキスをした。その時温かいフワッとした光のようなものが私を纏った。
「ルル、お前加護魔法も使えるのか!?どこまで魔法が使えるんだ…」
「か、加護?!」
「今与えた加護は、スーに危害を加えようとする人がスーに触れられないようにした。」
「触れられないように…。バリアみたいなものかしら?」
「そうだな。触れようとしたら弾かれる。」
「そ、そんな私みたいな人に加護までいいのでしょうか?」
通常、魔力を多く使う事と、王族の一部のみでしか加護魔法は使用できない為ごく僅かな身近な人や自分の身を守る為に使用するケースが多い。
そんな加護魔法を私にだなんて…。ルル様はどれだけ心が広いのだろう…。
「スーには近くにいてもらったほうが状況も把握できるし守れるから。これで学園での生活は安心だろ?」
「そうですね…。カイお兄様、私はまだ学園にいても大丈夫でしょうか?」
「そうだね…やっぱり心配はつきものだけど…まぁ加護もついてるし、僕たちもそばにいるから守れるしね。」
「私、何かあったらすぐに皆様のところに行きますわ!」
「じゃぁ…これも」
ルル様は私にネックレスをつけてくれた。
「コレは…」
「うん、何かあった時俺に分かるよう魔法をかけてある。」
「ルル、スーの為に色々用意してくれてたんだな…。」
「あ、ありがとうございます…。お礼をしなくてはいけませんね。」
ルル様はニコッと微笑んだ。その顔がとても優しくてドキッとしてしまった。
「スーが傍にいて生きてるだけで俺は何よりのプレゼントになる。」
「ルル様…。本当に何と感謝をすればいいか…」
「ま、スーの傍にいるのは兄様である僕だけどね。」
「カイ…いい加減お前のシスコン早く治せ。」
「なんでだよ。無理に決まってるだろ。」
「…そこはルル様と同意見だわ。カイお兄様早く素敵な女性との婚約話を聞かせてください。」
「スーまで!?兄様は悲しくなってきたよ…」
こんなに穏やかな時間、ダンパーネ領にルル様が来てた頃を思い出すわ。
この後大変な目に遭う事も知らずに私は平和に過ごしていた。