悪魔のようなシリウス(2)
「ねぇ、もっと酷い目にあいたくないなら、僕の邪魔しないでくれる?そもそもなんで君が入ってくるのか分からないよ。兄さんの婚約者でもないのに…。もしかして…兄さんの事が好きとか?」
「いえ…そういうわけではなくて…」
「自分の命が大事なのか、他人の命が大事なのか…考えなくてもよく分かるよね?正しい選択をして俺の邪魔しないでくれるかな?」
確かに私は王族達とは関わりもない、物語がどう進んでも関係のないモブだ。
それでも、兄のように慕ってきたルル様が殺されるなんて見たくない。それに友達であるシリウス様が殺すなんて後味が悪過ぎる。ここまで関わってしまって物語も知ってしまっている以上無視なんてできない。
でもこれ以上シリウス様を怒らせると私もどうなるか分からない…。それに今のシリウス様が何をしでかすか分からなくて怖い…。本当に殺されてしまうかもしれない…。
友達だった筈なのに…全部嘘だったのかな…。
何だか悲しくなる。
私は黙ったまま震えながら俯いていた。
シリウス様はガシッと私の顔を両手で強く掴み俯いていた私の顔を無理矢理上げる。
「なに…?俺が怖くなったの?今まであんなに仲良くしてきたのに残念だなぁ。これからも変な行動を起こさないかしっかり側で見張っててあげるから安心して。」
あぁ、やっぱりもう前のように友達にはなれないのね…。
私は悲しさと怖さで涙目になってしまう。
「はぁ…。だからそういう顔反則だよ。スレイちゃんとーっても可愛いんだから」
そういってシリウス様は私にゆっくりキスをした。
びっくりしすぎて一瞬固まってしまったけど、咄嗟に腕を伸ばし抵抗した。
「や、やめてください…!!」
勝手に私の目の力が発動し、シリウス様の心が視えた。
シリウス様の心が濁りきっている…!前まではまだ綺麗だったのに。
この色は何?今まで見た事がない色だ…深い緑に紫が混じったような…。もう暗く濁っていて色の見分けがつかなくなっている。
私は怖くなり震えてしまった…。
「ははっ。ヤバ、今僕の心の色が視えたの?凄い怖がってるね。視る時ちょっと目の色赤っぽく変わるんだ?僕とお揃いだね。その目も好きだよ。」
そういって何度もキスをするシリウス様。
「い…やだ!」
やっと離れてくれたシリウス様はニコリと笑っていつもの明るいシリウス様に戻っていた。
「さ、授業が始まるから戻ろうか!折角の復帰初日なんだから沢山学ばないとだね。」
シリウス様はまた無理やり私を引っ張り、教室まで一緒に戻る事になった。
こういう時は1人で勝手に教室戻るのんじゃないの…?
私の事放っておいて欲しい…。というか一緒に居たくない。彼が何を考えているか分からなくて怖い。
なんで…?
教室の扉を開けるとクラスメイトが手招きをしてくれていた。
「あ!スレイさん!こっちこっち、もうすぐ授業が始まりますわよ。」
「あ…はい。今行きますわね。…あの…シリウス様手を離して下さる?私皆様の所に戻りますから…」
「何勝手な事してんの?ずっと見張ってるって言ったよね…?」
ニコッと笑いながら声は低く恐ろしかった。
「皆!僕も隣良いかな?席取るの忘れちゃったんだ。スレイちゃんの隣空いてるよね?」
「まぁ!良いですわよ!どうぞお掛けになって下さい。」
何も知らないクラスメイトはシリウス様と一緒の席になった事をキャアキャアと喜んでいた。
この後もシリウス様とは隣同士の席で座る事になった私はまったく授業が頭に入らなかった。