兄弟喧嘩
大声を出したシリウス様はフーッと一呼吸おき、冷静になった後ニコッと微笑んだ。
「兄さん…危うく周りにいる生徒達が氷漬けになる所だったよ?まぁ兄さんが失敗するのは僕にとってどうでもいい事なんだけどね…寧ろ大歓迎だよ。それと…女の子に急に抱きついたりキスするなんて…失礼だし変態みたいで気持ち悪いからやめてあげたら?」
いや貴方も同じ事してるじゃない………とツッコんだことは心に閉まっておこう…。
シリウス様は笑っているけど冷たいオーラがだだ漏れだった。いつもより殺気立っている。
「あぁ、ちょうど良かったシリウス。お前に話したい事があってね。」
「奇遇だね。僕も兄さんに言いたいことがあるよ。」
こんな公衆の面前で王太子と王子が喧嘩なんてしたら…マズいのでは…。
「お2人ともおやめください!大勢の前で喧嘩しないで場所を改めませんか?」
「スー、これは俺たちの問題だ」
「スレイちゃん、すぐ終わるから大丈夫だよ。別の場所まで行ってこの人と一緒の空気吸いたくない」
うわぁ…全然話聞き入れてくれない…。
どうしよう。
「シリウス、お前は何故スーにばかり構う。この間ダンパーネ領まで行った事は知っている。」
「はぁ?それ兄さんに関係ないだろ?僕がどこに行こうが何しようが…」
「そうだな、関係ないが…スーを困らせる事はするな。それにお前、最近何か変だ。何を企んでいる」
「…はっ。何だよそれ。いちいち腹が立つ事ばっかりいってくれる…!」
シリウス様は火魔法を使いルル様に攻撃し始めた。ルル様は氷で盾を作り防御する。
どうしよう…。
慌ててキョロキョロしている私は誰かに肩を後ろからポンと叩かれた。
「…!!カイお兄様!」
「やぁ、これはまた…大勢の前で何しようとしているんだい?」
ウルウルした目でカイお兄様を見る。
「あぁ、スー大変だったね。危ないからもっと後ろに下がって、ここは僕達に任せて?」
カイお兄様は私の左頬にキスをし頭を撫でる。
「カイお兄様…」
良かった…カイお兄様が来てくれたなら何とかしてくれる筈!
「おや、どうしたんだい?ルルにシリウス王子、なんで僕を睨みつけてる?」
「カイ、お前兄の権限使ってスーとベタベタしすぎだろ」
「兄妹だからってそこまで仲良くするのも変だよ、カイルさん」
ルル様とシリウス様2人はカイお兄様を睨みつける。
こういう所は息ぴったりなのね…。
カイお兄様も2人を険しい目つきで見る。
カイお兄様の後ろからドウェイン様とアロイス様もついて歩いてきた。ドウェイン様はシリウス様を睨みつける様な目線で見ているが、アロイス様は何だか様子がおかしい。顔が強張っている様に見える。
「アロイス様…?」
私の声にピクッと反応したが此方を向こうとしない。
やっぱり何かおかしい…。
私は目の力を使った。
アロイス様の心が歪み濁っている。ただその中に恐怖の様な物も混じっていた。
もしかして…もう小説通りにアロイス様はシリウス様の味方についてる…?!
遅かった…どうしよう…
きっとアロイス様はルル様を狙おうとしている。
だけどドウェイン様もカイお兄様も気づいていない。
カイお兄様とドウェインは喧嘩を止める為に2人の元へと歩き出していた。その後ろをアロイスも付いて歩いている。
その時、シリウス様はチラッとアロイスを見てニヤッと笑い火魔法を発動させようとしていた。