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上手くいかない関係



「スレイちゃんは兄さんと仲良いんだね。」


シリウス様は2人で教室へ向かっている途中、少し冷たい声で聞いてきた。


「そうですね、ルル様が休暇中ダンパーネ領に来た時に仲良くなりましたの。友達というより兄のような存在ですわ。その時は変装していてまさか王太子殿下だなんて思いもしなかったのですけど、本当の家族のように一緒に過ごしてました。」


「家族のように…へぇ…。」


「シリウス様…ルル様とは仲が良くないのですね…」


「まぁね…俺は兄さんが嫌いだから。兄さんは優れていて何でも苦労せずにこなしてしまう所も周りから蔑まれているのに平然としている所も…俺は兄さんよりも出来が悪いと言ってくる大人達も、出来るまで罰を課せられる環境も全部…。全部嫌いで壊してやりたくなるよ。」


シリウス様が笑顔で話しているのが逆に怖い。


「シリウス様… シリウス様の周りは人を平気で傷つけ欺き心無い言葉ばかりの人間が多いのでしょうね。そんな風に思うのは当然ですわ…」


慰めの言葉なんてイラつかせるだけなのは分かっているけど…


「私は…兄であるカイお兄様が大好きですわ。私の両親も周りの人も大好きです。それはカイお兄様や両親が思いやりのある言葉や愛情を持って私と接してくれたから。同じ境遇ではない私はシリウス様の気持ちを全て理解する事は出来ない」

「いや、いいよ。俺も理解して貰いたいとは思わない。つまんない話はもうやめ…」

「ですが、シリウス様はルル様の事が本当に嫌いなんでしょうか?本当はもっと別の所に本音があるのではないですか?本当はどうしたいのか、自分でも分かっていると思います。負の感情に飲み込まれる前に自分の本音を認めて自分と向き合ってみるのも一つの手です。シリウス様はもっともっと素敵な方だと私は思っています。あの…お会いして日も浅いですし頼りないかもしれないですが…力になれる事があれば言って下さい。」


こんな事でフラグが折れるとは到底思えない。けど少しでも小説通りの展開からは外れて欲しい。そう思っていた。


「君は…本当に真っ直ぐだね。」

シリウス様の見開いていた目がふっと優しい眼差しになった。

「ありがとう。」

優しく微笑んだ後、シリウス様は私に近づいた。


「じゃあこれから君に()()相談するよ。スレイちゃん。」


耳元で囁く声色が今までとは違い急に低く変わり、纏っている空気も重くゾクッと背筋が凍った。まるで悪魔な囁かれたような感覚だ。きっと顔も笑っていないだろう。


そろ〜っと顔を見上げるとさっきの感覚が嘘だったかのようにシリウス様はいつもの爽やかな表情をしていた。


これは…失敗した…?生意気な態度で嫌われたかしら…

悪い方向へ行かないといいけど。


私は不安な気持ちのまま教室へと向かった。



廊下の遠くでシリウスとスレイを遠くから見ていた女子生徒達がいた。

「あの子、ルルド様とシリウス様に近づきすぎではありません?」

「婚約者候補でもないのに図々しい。」

「ティア様、あの子に少々分からせてあげましょう?」

「そうねぇ。少しだけ彼女に説得する時間をつくりましょうか。皆様も協力してくださる?」



女子生徒達は遠くにいるスレイを睨みながら魔法科の学舎へと歩いて行った。




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