お菓子みたいな赤い瞳
「何でも出来て神様に愛されてる…。そうみえる?でも僕よりも兄上が何でも出来るよ」
シリウス様は私の言葉にピクっと顔を引き攣らせ少し冷たい表情に変わった。
シリウスの目が何かを睨みつける様に少し怖くなった。
あ、シリウス様の心の濁りが濃くなっている…。
あぁ、そうか。この人はきっと周りの人達にルルお兄様と比べられて生きてきたんだ。幼い頃から比べられていた本人はどれだけ辛い事か。私には計り知れない。
「兄上と比べたら僕は剣も上手くないし頭も良くないし。僕の良いところってなんだろうって思ってしまうよ。ね、僕そんなにカッコよくないだろ?」
シリウス様は笑い飛ばしていたが目は笑っていなかった。
「カッコよくない…。そうですか…?シリウス様はシリウス様、お兄さんはお兄さん。人は比べる事は出来ない。人にはそれぞれの個性がある。似ている所はあっても全く同じではないから、そもそも比べる事なんて出来ないですしね。シリウス様も何でもそつなくこなせて素晴らしい。お兄さんも何でも出来る。ただそれだけだと私は思いますわ。だからシリウス様も誰かと比べる必要無いですし、十分に素晴らしいですわ。」
シリウスが目を見開いて驚いたような顔をしていた。
その後目を細めながら微笑んだ。
「へぇ。そんな事言われたのは初めてだよ。スレイちゃんて変わった子だね?」
「そうですか?変わってると言えばシリウス様の瞳!他の方とは違ってとっても綺麗な赤色で、キラキラして魅力的ですね。私シリウス様の瞳の色凄く好きですわ。」
またシリウス様は驚いた顔をしていた。
彼の目、この国にあるキラキラした赤いイチゴの形のグミのようなお菓子『キュラ』に似てて美味しそう…。
とお菓子を想像しただけでお腹がキュルルルと鳴ってしまった。
「あははははっ。何?まだ授業も始まってないのにもうお腹空いたの?」
シリウス様はゲラゲラと楽しそうに笑った。
恥ずかしい…
「だって…初めての授業、緊張して朝ご飯あんまり入らなかったから、シリウス様の瞳を見てキュラを思い出しちゃって…」
もう恥じらいも捨てて本音を言ってしまう私。
「キュラ…!?僕の目お菓子に見えるの?やっぱり君は変わってるね。赤い目は気味悪がられたり怖がられる事はあっても好かれる事はないのに。何だかスレイちゃんとは仲良くやっていけそう。研究科に来て良かったな。そうだ!友達になった記念に僕が後でキュラプレゼントするよ!」
「え…キュラを!?本当?」
「フフ、任せて!」
キュラは今人気のお菓子でよく売り切れになる。
王都から離れて暮らしていた私にはなかなかレアなお菓子だ。
ん…?待って。
深く考えてなかったけど今友達認定された?友達が出来たのは嬉しいけど、彼の事はルルお兄様の敵になる予定の人で、本当はあまり関わらないように遠くで見張るつもりだったのについつい話し込んでしまった…。何仲良くなってんの私!?
チラッとシリウス様の顔を見る。
その視線に気付き、彼は私を見て嬉しそうにニコッと笑った。
ハハ…っと引き攣ったような顔で笑う私。
混乱してるとガラッと先生が扉を開けて入ってきた。
このまま授業が始まりそう。仕方ない…ここはなるようになれだ。