屈託のない笑顔
ルルお兄様に寮まで送ってもらっている途中、周りの生徒からの視線が気になっていた。気になっていたけど…
目立たずにいたい…というのはもう諦めなきゃだわ。
こういうの苦手だけど開き直るのも必要ね。
ふぅ〜とため息をついた。
「スーどうした?何か嫌なことでもあった?」
「あ…いえ、そう言うわけではなく、目立つ事が苦手だけど学園に来たからにはもう何も気にせず過ごす事も必要だなと気合を入れてました。」
「そうか。不安な事があったらいつでも言ってくれ。誰かに何かされたならすぐに始末しに行くよ。スーのお願いならなんでも聞くから。」
「ふふっ。こ、心強いです…」
私はキュッと無理やり笑顔を作った。
始末って…。
うわぁ…何かあっても絶対言えないやつだ。
「そうですね…また心配事とか不安な事があったらルルお兄様に相談しますね。送ってくださってありがとうございます。それじゃあ…」
そそくさと寮に戻ろうとした時、ルルお兄様が手をぎゅっと握ってきた。
握られた手を見るように振り返るとそのままぎゅっと抱きしめられた。
「やっぱり俺の部屋に檻作ってスーを閉じ込めておこうかな。そしたら俺も安心するし?」
檻!?
いやいや…やめてその発言は怖いって
流石にエスカレートしてて無理…
「ルルお兄様、流石に病みすぎです…それ犯罪」
しまった心の声が出てしまった…。
めちゃくちゃ不敬発言じゃ…私やられちゃう…?
「病みすぎ犯罪…。」
「あっっ、えと…ルルお兄様ごめんなさい…言い過ぎてしま…」
あたふたしている私の言葉を遮ってプッと笑い出すルルお兄様。クスクスと笑っている顔を見るのは初めてだった。少しあどけない笑顔で楽しそうに笑っていた。
やば…可愛い…
この笑顔は駄目でしょ
いつも無表情だからギャップが…
鼓動が早くなってきた。イケメンに笑顔は反則…
流石にこれはドキドキする。ドキドキしている顔を見られたくなくて手で顔を少し隠した。
「スーも言うようになったな。心を開いてくれてるって思っておくよ。けど…」
更に私に近づき私の耳元でルルドお兄様は囁いた。
「そんなに可愛く頬を染められるとやっぱり誰にも見られないように閉じ込めておきたくなるな。」
「しないで下さい。」
私は言葉を被せる様に返した。
怖い発言するのやめてほしい…。ルルお兄様の事だから本当に檻とか用意して閉じ込められそうだわ。
クスクス笑いながら、じゃあまたと手を振ってルルお兄様は帰って行った。
冗談がどこまで冗談なのか怖くて聞けないわ…。
◇
◇
◇
◇
◇
◇
部屋に戻った私は鍵付きの棚からあの紙を出した。
もう一度物語を見直してみる。
アロイスとドウェインには会えたけど結局まだ彼等のどちらかがスパイなのかどうかは分からない。これからお兄様に会いに行く時に探りを入れてみよう。
秋までにはフラグを折らないと…。
後出会ってないメインキャラは第二王子と悪役令嬢。
第二王子は学園にいるシーンがなかったからお城にいるのかしら。
私に何ができるのだろうか…もし失敗したら…と不安ばかりが過ぎる。
それでも出来ることからやってみるしかない!と私は気合を入れた。