知らない展開
しょうがないカイお兄様の頼みなら
やるしかない…
上手くできなかったらごめんなさい。
私は一呼吸入れた。
「あの…ルルドお兄様。サーシャさんは緊張して体調も良くなかったみたいですわ。元気になられたら、また改めてご挨拶して貰っては如何でしょう?
それより…私は何故ルルドお兄様があの時と髪と目の色が違っているのかをまだ教えて頂けてません。私に説明して下さいますか?」
私は精一杯の笑顔で伝えた。
そんな私にルルドお兄様は目をキラキラと輝かせた。
自分に興味を持ってもらえたことの歓喜が
まるでしっぽを振って喜んでいる犬のようだ…。
「そうだった。スーと話したい事沢山あるし入学式のホールまで一緒にいこうか。」
何となくルルドお兄様の周りに花が見える。
ルンルンしてる。
…可愛い。
「サーシャ…と言ったか?ここは学園の中だ。身分は気にせずに学生同士として過ごせばいい。カイル、俺がスーとホールまで行く。」
「あ、ありがとうございます!王太子殿下!!」
サーシャは、よかったぁとホッと胸を撫で下ろした。
周囲の人たちもやっと恐怖という緊張から溶けて歩きだしている。
「それではカイお兄様、後はルルドお兄様と一緒に
行ってきますね。」
「ああ、ありがとうスー。助かったよ。まったく…ルルはスーの言う事はよく聞くんだな。サーシャさん。良ければ僕がホールまで案内するよ?また倒れられたら困るしね。」
「いいんですか…!?是非お願いします!」
サーシャも一緒に行ってくれる事で心強い味方が
出来た気持ちになっている。
とても楽しそうに笑ってるなぁ…。
本当はここでは王太子とヒロインが意識し始めるシーンだった筈なんだけど意識どころかサーシャは恐怖で震えてたしルルドお兄様は全然サーシャを見てなかった。
これじゃ私が読んだ小説とは全く違う展開になっちゃった…。
もしかしたらまたどこかで軌道修正が入ったりするのも
転生した物語ではよくある事だったりするから
きっと大丈夫よね…?
そう呑気に考えていた。




