サーシャ(3)
「カイお兄様…顔が近いですわ…
サーシャさんが戸惑っています。」
シスコンなのは元々だけど
最近エスカレートしてない?
私が呆れながら伝えると
カイお兄様は慌てて謝って離れた。
「妹さん想いの素敵なお兄様なんですね。
とっても素敵な兄妹で羨ましいです。」
サーシャはクスクスと可愛く微笑んでいた。
なんて良い子なの!!
これは…最高に可愛い笑顔…!
王太子…ルルドお兄様もこの笑顔に見惚れて
恋心が芽生えるのでは…?
ストーリー上では確か…ヒロインの笑顔に
心惹かれて気になり始めていた気がするのよね。
どう…?!こんな可愛らしい子滅多に見ないわよ!!
私はくるっとルルドお兄様を見た。
えぇ…
全く笑顔じゃない。寧ろなんか機嫌悪い…?
想像に反しまた怖い顔している。
そしてサーシャを見ずに
私の顔をじっと見つめている。
何で!!!
何のトキメキも始まってないじゃない!
私じゃなくてサーシャ見なきゃ…!!
私もルルドお兄様の顔をずっと見ていた。
「スー。そこにいる女にばかり見惚れて…
俺よりもその女がいいのか…?」
うおっっ…
ルルドお兄様嫉妬してる…しかも女子に…
ほらサーシャも怖がってまた顔色が悪くなってるじゃない。
「あの子、王太子殿下に挨拶もなく無礼ではなくて?」
ボソッと周囲の誰かが言った言葉が
サーシャにもしっかり聞こえてきた。
ハッと気付いたかのようにサーシャは焦りだした。
「た…大変…ししししし失礼致しました!!!
王太子殿下の前にも関わらずご挨拶もなく
ご無礼をお許しください!!」
深く頭を下げてブルブルと震えているサーシャ。
ルルドの表情も相変わらず怖い。
周辺にいる皆は恐怖で一歩も動けなかった。
誰も何も言えないこの状況。
いや何か言ってよルルドお兄様。
物語と全く違う展開に私も戸惑う…。
でもこれじゃサーシャも可哀想だし…
またかと言わんばかりの表情のカイお兄様と
目が合った。
『スー。ルルを落ち着かせろ。』
とジェスチャーで言ってるのが伝わった。