王座の間(4)
「そなたが私の息子、ルルドの婚約者か。」
「はい。」
私が緊張を隠せず震えているのを見て、陛下は少し表情が柔らかくなった気がした。
「そんなに緊張せずともよい。取って食おうと言うわけでは無い。そなたもルルドも此方へ上がって来なさい。」
(え?王座の隣へ行くの!?)
私は困惑しながら隣にいるルル様を見つめた。
「ヴェティス様には特等席で見てもらいたい。その為にスーも一緒にいて欲しいんだ。行こうか。」
緊張で足が震えて階段を上ることが難しくなり躓きそうになった。
(あ、危ない…!転んでしまう!!)
私の体が倒れそうになった時、ルル様は私の体を持ち上げてお姫様抱っこをした。
「ル、ルル様!?助けて頂いたのは嬉しいのですがこの態勢は大勢の前で恥ずかしいです…。」
「いや、スーの事だ。また転ぶかもしれないからこのままで行かせてもらう。」
ルル様は、はぁとため息を吐く。
「スー見て。カイが凄い顔してるぞ…あいつはいつ妹離れが出来るんだろか。まぁあんな顔されてもスーは渡さないけどね。」
クスッと笑いながらルル様は私をお姫様抱っこしながら階段を上る。
そんな姿を見た周囲の人達は目を大きくして固まっていた。
「あの王太子殿下が令嬢にご執心なのは噂ではなく本当だったのか…。」
「見て、スレイ嬢の前ではあんなに柔らかい表情をなさるのね。」
大人達はさっきまで冷たくて恐ろしいとまで感じていたルル様からは想像もつかない優しい表情を見せた事に驚きを隠さずザワザワとしていた。
ルル様は階段を上りきり、王座の前に着いてすぐ私を下ろしてくれた。
「ルル様ありがとうございます。」
「いや、これくらい何度でもしてやれる。」
頭をポンと触ってくれたルル様に笑顔で返すと、陛下もポカンとした表情をしていた。
「驚いた…。ルルドお前本当に変わったな。…この娘が本当に好きなんだな。いや、こんな息子の一面も見られて嬉しいよ。ありがとうスレイ嬢。」
陛下は私にニコッと笑顔を向けてくれた。
「い、いえ!とんでもありません。勿体無いお言葉でございます!!」
(陛下とルル様は仲違いしていたけれど、仲直りしたのかしたら?良かった…今はとても仲良さそう。)
「本題に入るが、今日はルルドとシリウスから報告があると聞いたが…こんなに大勢を集めて一体何をしようと言うのだね?もしこの規模に見合わないような話なら…分かるな?」
陛下の表情は威圧感のある怖い表情へと変わりルル様に問い詰めた。
「承知しております。本日は2つ重大な報告がございまして陛下にも皆様にも聞いて頂きたく集まっていただきました。」