決断(1)
「どうやらこの王太子様、いえ…この国は貴方が生きていないとハッピーエンドにはならないようね。貴方をこの世界に私は戻したいと思って探していたのよ。あの世に行ってしまったら別の世界か、もう一度やり直してもらうか…どちらかになってしまうもの。さあ、貴方はどうする?スレイ・ダンパーネ。」
「私は…」
私が言いかけた時、ヴェティス様は私の口を指で塞いだ。
「待って。ちゃんと話さないといけないわね。」
「ちゃんと…?」
「ここまで頑張ってくれたものね。先ずは、前世の世界に戻る。亡くなる前に戻してあげられるから今度は長生きできるわ。しかも素敵な男性と出会えるようにしてあげる。もう一つは貴方が望む別の世界へこのまま転生する。好きな世界で暮らせるのよ!そこではお金に困らない生活にしてあげる。最後は…このままスレイ・ダンパーネとして生きる。私はスレイ・ダンパーネとして生きてほしいけれど無理強いはしないわ。また他の転生者を連れてきて手伝ってもらって頑張ろうと思うわ。さぁどうする?」
(なんだか凄く贅沢な選択ね…。でも私は…)
「私は、スレイ・ダンパーネとしてルル様がいる世界を生きたいです。」
「それは…私がこの国にいて欲しいと言ったから?それともハッピーエンドで終わっていないから罪悪感があるとか?」
「いいえ、私は…ルル様の事が好きだからです。ルル様を幸せに…笑顔にしたい!」
ヴェティス様はニコリと綺麗な笑みを見せた。
「そう。貴方も王太子が好きなのね。嬉しいわ…。やっとあの子も幸せになれるね。ずっと見てきたからとても心配だったの。いつも短い人生で人に恨まれ蔑まれ、それでも強く生きていこうとしていたから。」
(私もいつの間にかこんなにルル様の事を好きになっていた。彼がいない世界なんて考えられないくらいに。)
「貴方がスレイ・ダンパーネとして生きてくれるのなら、私の加護も、力もそのまま与えたままにしておくわ。魔獣が学園に来た時も私の声を届ける為に使いとして行ってくれたのよ。」
「あの時の『物語はまだ終わっていない』という言葉はヴェティス様の言葉だったのですか!?」
「ふふっ。そうよ。これからも魔獣を通して話す事が出来るようにもう少し力を分けてあげるわね。これで魔獣の声も綺麗に聞こえるはずだから。」
「ヴェティス様ありがとうございます!」
「最後に、貴方の決断はもう迷いはない?ここに来ることはもう無いからこれで私の姿を見るのも最後になるわ。」