刺客(2)
チラッと観客側を見ると、フードを被った人はぶつぶつと言葉を何かを詠唱しているように見えた。
(あれは…風魔法!?もしかしてナイフを飛ばす気!?)
フードの人はニヤッと笑いながら瞬時に強い風の威力でナイフを飛ばしてきた。
(ダメ!!このままじゃルル様に当たってしまう!)
「危ない!!」
私は咄嗟にルル様に抱きつくように庇う。
それと同時に私の体には強い痛みが走った。
私はあまりの痛さに疼くまる。
「スー!…スー!?大丈夫か?」
ルル様は一瞬何が起こったのか分からなかったが、私の背中にナイフが刺さっている事に気付き辺りを見回す。
周りも混乱し、騒然としていた。
「ル、ルル様…」
「スー!喋るな…」
「ルル様…に怪我が無くて良…かっ…た」
ルル様の表情が酷く悲しそうな顔をしている。
「スー…こんな時まで他人の心配しなくていい。お願いだから喋るな…」
(痛い…。ルル様の顔が分からない。声も遠くなる…これはもう私危険かも…でも良かった。最後までフラグちゃんと折れたよね…?)
私は意識を失った。
「…スー?」
スレイの意識がなくなり、ルルドは手が震え始める。
震えながらスレイの体に耳を当て心臓の音を確かめる。
「まだ…動いてる。大丈夫。」
自分に言い聞かせるかのようにルルドは「大丈夫。」と何度も繰り返していた。
「ドウェイン、お前はカイルを呼んで犯人を探せ。」
「承知しました。」
「アロイス、お前はサーシャを呼びに行くんだ。」
「サーシャを?医者じゃなくて…?」
「医者じゃ間に合わない!サーシャが出店を手伝っているから近くにいる。早く呼んでこい!」
ルルドは珍しく声を荒げる。
アロイスは急いでサーシャを呼びに行った。
ルルドはスレイを抱きかかえ舞台から降りる。
「お願いだ…スー。間に合ってくれ。」
スレイを抱きしめながらルルドは背中に刺さったナイフを抜く。ナイフが刺さっていた所から血がボタボタと流れ出る。
「スレイ様!!スレイ様大丈夫ですか!?」
遠くからサーシャの声が聞こえてきた。
「サーシャこっちだ!」
サーシャとアロイスはルルドの声が聞こえた方向へと走り出す。
ルルドの元に来たサーシャは、血だらけになっているスレイを見て顔が青ざめる。
「スレイ様…待っていてください。絶対に助けますから!殿下、スレイ様の傷口をしっかり手で塞いで下さい。」
サーシャは両手を握りしめて目を閉じる。自身の体から光が発生し、その光はやがてスレイを包み込む。
傷が深いせいか、光魔法の治療は暫く続いた。