刺客(1)
後ろまで見渡していると、小さな鳥が私の所へと飛んできた。
(これは…?魔獣だわ…!認識阻害が出来るマナバードだった筈…。)
認識阻害をしている為、人間には普通見えない鳥の魔獣。
同じ魔獣か、魔獣と会話できる私にしか見えなくてお兄様に言ってもあまり信じて貰えなかった過去がある。
勿論ルル様にも見えない。
(でも…どうしてこんな所にマナバードが??)
マナバードは私の所まで近づいてきていた。
「キヲツケテ! フードノヒト! アブナイ!」
(フード?フードの人が何処かにいるの?)
辺りを見回しても人が多すぎて分からない。
(マナバードが危ないって言ってるって事は心を視れば分かるかしら…。)
私は観客席にいる人達の心を視てみる。
皆楽しい時間を過ごしているからか、キラキラと輝く宝石のような心ばかりだ。
その中に1人、端っこに黒いフードを被っている人を見つけた。心の色も黒く、何かに操られているようなモヤも見える。
(いた!きっとこの人だわ!)
明らかに雰囲気も怪しいのに周りの人達はその人が見えていないみたい…。
(この人、もしかして認識阻害の魔法使ってるのかしら…)
「ボクタチナカマ ヲ アイツニ コロサレタ。」
「ナカマ ノ チカラ ツカワレテイル!キケン!」
「フードの人はマナバードの力を奪う為に殺してその力を注いだ魔法石を今使っているってこと…?」
私はマナバードに聞こえるくらいの小声で話した。
フードの人は自分の手を私たちの方に向けて伸ばす。
片方の手には何か物を持っている。
(あれは…ナイフだわ…!!!)
フードの人と私は目が合わない。明らかに何かを狙っている。
(もしかして、小説の物語を強制的に戻そうとしている何かが働いてるのだとしたらルル様が危ない!!)
ルル様に教えないと…!!
横を振り向くとすぐ隣にいた筈のルル様は舞台から降りようと移動した所でアロイスとドウェインと話していた。
くるっと振り向いたルル様は私が歩いて来ない事を不思議に思っている表情だった。
「スーどうした?そろそろ舞台から降りるよ。」
チラッと観客側を見ると、フードを被った人はぶつぶつと言葉を何かを詠唱しているように見えた。
(あれは…風魔法!?もしかしてナイフを飛ばす気!?)
フードの人はニヤッと笑いながら瞬時に強い風の威力でナイフを飛ばしてきた。
(ダメ!!このままじゃルル様に当たってしまう!)
「危ない!!」
私は咄嗟にルル様に抱きつくように庇う。
それと同時に私の体には強い痛みが走った。
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