婚約者(1)
「そろそろ時間だから戻ろうか。」
「分かりました。うぅ…もうすぐ始まるのね…。」
ベンチに座ってゆっくりした時間を過ごしていて忘れてたけどこれからが本番だったわ…。
お披露目があると思い出しただけで体が硬直してしまう。
そんな私の肩をポンと優しく叩くルル様。
「無理はしなくていい。どうしても駄目なら出なくてもいい。」
「え…でもお披露目なのに相手が居ないとなるとルル様の評判も下がりますでしょう?」
「俺の事は気にしなくていい。どうとでもなるしなんなら一言で黙らせられる。」
(いや、それは皆に恐怖を植え付ける事になるのでは…?)
「スーのやりたいようにしていい。でも…ごめん。婚約は無しと俺から離れる事はどうしても許してあげられない。」
「あくまでも婚約者候補で落ち着いたら婚約しなくてもいいと言ってたのに?」
私は少しにやけながら言ってみる。
「スーはこれが終わったら婚約破棄したいのか?」
ルル様が可愛い子犬のように見えてクスッと笑ってしまった。
「そうですね…王太子妃なんて私のような人には不向きだと思っています。ですが…私もルル様の力になりたいとも思っています。正直な所少し悩んでますが…いえ、これはただ私の覚悟が足りないだけですわ。」
「スー、今日が終わったら数日スーはゆっくりしていい。だから…嫌がらないでくれ。」
私の手をぎゅっと握ってくるルル様は何だか可愛く感じてしまった。
「ルル様…。私頑張りますわ!ルル様は私の隣にいてくださるんですもんね。」
ルル様は私をみて優しく微笑む。
「最近ルル様はよく笑顔を見せてくれますね。」
「俺、笑ってる?」
「ええ!とっても優しい表情ですわ!」
ルル様はビックリした顔をしていたが「そうか…。」と少し口角を上げて笑っていた。
その表情があまりにも切ないような嬉しそうな…なんともいえない顔で私はドキドキしていて、ルル様から目が離せなくなっていた。
(思えば…私はルル様と一緒にいることが増えて、ずっと支えてもらっていたわ。何かあったらいつもルル様は助けてくれていた。私はルル様と会えなくなってしまったら…他の人と結婚してしまったら…胸が締め付けられる思いになる。私は…ルル様のことが好きなんだわ。)
自分の思いに今気が付いた。
そうか…私はルル様の隣にいたいんだわ。
「よし!もう決めましたわ。ルル様、私は覚悟しました!今回のお披露目もしっかり務めさせて頂きますわ。勿論!貴方の婚約者としてこれからは怯まずに隣で支えていけたらと思いますわ。」
ルル様は目を大きく見開いた。
「スー…それは俺と結婚してずっとそばにいてくれるって事?」
「はい!私はもう逃げも隠れもしませんわ。自分の思いに気が付いたんです。」
私がニコッといたずらに笑うとルル様は私を抱きしめた。
「ありがとう…。スー、本当にありがとう。嬉しい。」
抱きしめている手に更に力が入る。
(ルル様は嬉しそうな表情してるわ…。)
「ルル様が嬉しい時、私もすごく嬉しいんです。心があったかくなるんです。だから笑顔の絶えない時間を過ごしたいです。」
「そうだな。スーの願いならなんでも叶えるよ。」
「さぁ、一緒に戻りましょう?時間になってしまうわ。」
「ああ、行こうか。」
私達はお披露目会場へと戻った。
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