秋の収穫祭(2)
「スー、時間まで少し街を見て回ろうか。」
「はい!行きましょう!」
私はルル様の腕に手を組み2人で街に向かって歩いて行った。
いつもより賑わっている街並み。色んな人が笑顔で楽しそうに歩いていたら買い物をしている。
「この国は活気が溢れていて皆楽しそうに笑ってますね。」
「そうだな。十数年と戦争もなく瘴気に侵された魔獣がなる事も殆どなく平和な日が送れている。」
「感謝しなくてはですね…!」
(この後…お披露目があるのか…目立つ事が苦手だから緊張するな。)
私は街ゆく人々を見ながら緊張した面持ちでルル様の腕を強く握りしめた。
「スー?」
「ごめんなさい…私目立つ事が本当に苦手でお披露目の事考えたら…」
「大丈夫だ。スー1人で表舞台に立つわけじゃない。俺が隣にいる。」
少しだけ口角を上げて私を見るルル様の表情はとても優しく見えた。
私は深呼吸をする。
「出来るだけ頑張ります!」
「スーの好きなお菓子食べて緊張をほぐそうか。」
「はい!キュラが食べたいです!」
私とルル様はまた歩き出した。
「素敵なお嬢様!焼きたてのパンは如何ですか〜?」
聞き慣れた声が横から聞こえてくる。
振り向くとサーシャが出店のパン屋さんで店番をしていた。
「サーシャさん!」
「スレイ様!お会いできて嬉しいです!!」
「何を言ってるの?昨日も学園でお会いしたじゃないですか。」
「そうですけど、私は毎日スレイ様と一緒にいたいくらい大好きなんです!」
(可愛い…やっぱり大好きだわ!)
私がサーシャに微笑みながら近づこうとするとルル様は私の腕を引っ張った。
「殿下、何かパンを買ってくれたなら私は今日邪魔せずに見守るだけにしますよ?」
ニヤッと笑うサーシャにルル様はため息をつく。
「商売上手だな…。ここはお前の店か?」
「いいえ!ここは知り合いの貴族の方が出資しているパン屋さんで父の代わりに手伝いにきたんです。王都では大人気なんですよ〜?」
(サーシャはどんな人にも分け隔てなくて明るい。聖魔法なかったら商人としてもやっていけそうなくらい。本来小説ではこういう人が王太子の婚約者として隣に立っていたのは納得がいくわ。)
「さぁ、スレイ様もどうぞ!このパンとても美味しいんですよ!これは私からのプレゼントなのでそのまま受け取ってください。」
「いいんですか?ありがとうございます。」
「これ食べて元気沢山チャージして下さいね。」
(私が緊張しているのが分かったのかしら…サーシャは本当に優しいわ。)
「おい、俺にはサービスじゃなくてお金取るのか…。」
「当たり前です!一国の王太子殿下なんですから!スレイ様の緊張が解けるようにちゃんと隣についててあげて下さいね!」
「前から思っていたが…お前…俺の事なんだと思ってるんだ。」
「勿論!『恋敵』ですよ。」
ニヤッと笑った後満面な笑みで笑うサーシャはなんだかカッコよく見えた。
「サーシャは変わってるな。ああいう人に初めて会った。最初は怖がってたが今じゃ俺の事怖がらずに対等に接してきて、ライバルとか言ってくる。」
ルル様は嬉しそうに口角を上げていた。
(あ、これ本当に嬉しい時の表情だわ。)
私は何だか胸の奥がズキッと痛んだ。