穏やかな日常(3)
ホリデーも残り1週間を切った。
ダンパーネ領に居られるのももう残りわずかになってしまい、少し寂しい気持ちでいた。
「スー!どうしたんだい?そんなに悲しそうな顔をして…。もしかして、ルルが居ないから寂しくなったとかじゃないよね?」
カイお兄様は少し不満げな表情をしている。
ルル様は数日前に政務や他に用事があると言って王城に帰って行った。
「いいえ…私はホリデーが終わってしまう事が寂しくてホームシックになりそうですわ。」
「ホームシックって…まだ家にいるじゃないか。」
「想像するだけで寂しくなるんですもの!」
カイお兄様はフッと笑いながら私の頭を撫でてくれた。
「まぁ、ホリデーが終わった後も俺も学園にいるし、ルルもサーシャもいるだろ?学園生活はそれなりに楽しんでくれると嬉しいな。」
「…まぁ…そうよね。またサーシャにも、会えますしね。」
「それに、ルルと『秋の収穫祭』に参加するだろ?」
「そうでした…。ところで…『秋の収穫祭』ってなんですか?」
カイお兄様はビックリした顔で私を見る。
「収穫祭を知らないのか!?本当にスーは興味ない事には無頓着なんだな…。」
(カイお兄様少し呆れてる…。そんなに有名なお祭りなのかしら。)
「秋の収穫祭は、実りの季節に感謝と豊作を願った祭りなんだが、友人や恋人同士で集まってダンスをしたり仮装などをして街が賑わう日なんだ。その日にスーはルルの婚約者として参加する。」
「なるほど…ハロウィンパーティーみたいなものなのね。」
「は、はろうぃ…?」
「前世でも同じようなお祭りがあった事を思い出したのです。」
「前世か…。そういえば、スーが言っていた前世で読んだ小説の中でも秋にルルが殺されてしまったんだよな?」
「ええ。そうですけど…タイミングは早かったですが、同じ事件はもう夏前に起きてフラグは折ったはずです。それにシリウス様も今はルル様とは良好な関係だと聞きました。」
「そうだけどね…。スーはもう何も起きないと思っているか?」
「いえ…突然学園にやってきた魔獣も物語は終わっていないと言ってましたし…。何だか不安な気持ちはまだ残っているんです。」
「俺もだよ。不安な気持ちは残っている。スー、お前も気をつけろよ。ルルの婚約者になっていてもまだ王妃様は何をするか分からない。」
「そうなんですか?!婚約者になれば安心だと思っていました。」
「今、陛下と王妃様が揉めているという話を聞いたんだ。なんでも王妃様には甘かった陛下が態度を急変させたように冷たくなったとか。俺もルルから聞いた話だから詳しくは知らないが王妃様がいつも以上に機嫌が悪く当たり散らしているらしい。」
「王妃様が…?そこまで感情を露わにするほどになるなんて…。」
「だからこそ、収穫祭でも気をつけるんだ。護衛は沢山つけておくよくにルルにも伝えておく。ダンパーネからも護衛を出そう。」
カイお兄様は真剣な表情で私を見つめる。
「分かりましたわ。十分に気をつけます。」
「ああ。そうしてくれ。」
カイお兄様は少し不安そうに笑顔を作った。