穏やかな日常(2)
「ルルド王太子殿下にご挨拶申し上げます。」
「ああ…。」
「殿下、今回は変装なしで来られたんですね。」
私とルル様はビックリしながらソイルお兄様を見つめた。
「知っていたんですね…。」
「ええ!剣術の稽古をつけた時に直ぐ分かりましたよ!王族ならではの剣の癖があるんですよ!俺にしか分からないみたいですが。」
ガハハと笑うソイルお兄様にルル様はフッと笑みを浮かべる。
「流石剣術に長けたダンパーネの血筋だな。」
「お褒め頂き光栄でございます。」
「ソイルお兄様お疲れではないですか?帰ってきたばかりでしょう?」
「いや大丈夫だ。それもよりも…殿下、スレイ、2人は婚約をしたと聞いたが…」
「ああ。つい先日陛下にも了承を得て婚約した。」
「そうか…。スレイが婚約か…。殿下、不躾ながらも言わせていただきます。スレイを守ってあげて下さい。こんな穏やかな場所で平和にくらいしていた妹だ。色んな波に揉まれる事が多くなり心がすり減らないか心配なのです。」
「分かった。スレイを守り笑顔が絶えない生活を約束する。」
「殿下…!!」
ソイルお兄様は目をウルウルさせながらルル様の手を握った。
(いや、ソイルお兄様…まだ婚約者候補なだけですけど)
私は苦笑いをする。
「すまない2人とも!私はこの後予定があるから失礼するよ!じゃあまた後でなスレイ!」
「ソイルお兄様、ちゃんと体を休めて下さいね!」
ソイルお兄様は走りながら家に戻って行った。
「ソイルは忙しそうだな。」
「そうですね…。体力はあると言ってましたが、一体何でそんなに忙しいのか…」
ルル様は私の顔を見つめてくる。
「スー?さっきの話なんだが…。」
「話、ですか?」
「俺の事ドキドキするって言ってた。それは俺の事意識してくれてるって事でいいのか?」
「私…なんか変なんです…。あの正装を着てルル様がいらっしゃった日からルル様といると落ち着かなくて…。私きっと…」
「スー…」
ルル様の手が私の頰に触れようとしていた。
「きっと、ルル様の正装姿が大好きなんですわ!!」
「………え。」
ルル様は私の言葉に固まってしまった。
「あの真っ白な正装が本当に格好良くて…。あんなにルル様が似合うなんて思わなかったですわ!!というか私は正装フェチだったのね!あのドキドキの正体が分かってスッキリしたわ!」
「ふ?ふぇち?」
「あ!なんでもないですわ。とにかく…ルル様が本当に素敵だったんですの!」
「あ、ありがとう?」
「ふふっ。またあの姿を見られる日が来る事を楽しみにしていますわ!さぁ、私たちも家に入りましょう?」
私は家に向かって歩き出した。
「はぁ…長期戦か…。まぁでも少しは前進したかな。」
「ルル様?どうかされました?」
「いや、なんでもない行こう。」
ルル様は私の手を握る。
「え!?ルル様!手…」
いたずらにニコッと笑うルル様の表情に鼓動が早くなったけど私が自分の気持ちに気付くのはまたもう少し先の話ーーーー。




